二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

Ⅰ-Ⅳ

2011-04-05 00:22:23 | 習作SS

視点:バルクホルン 1944年


ああくそ
昼間にあんな事を思い出したから懐かしい夢を見た。

厳しくも楽しかった戦地での思い出。
多くの仲間たちと一緒に人類の敵に立ち向かっていた希望に溢れた日々の欠片を。
ミーナがまだ初でからかうと赤くなったり、エーリカが相変わらず茶化しては怒られたり。
初めて部隊を任されて不安ながらも実は興奮して、皆に祝福されたこと。

そして気付かなかった。
ずっと殺し合いをネウロイとしていたのに
死なんてものは意外と速く来るものということを。

「首がいてぇ・・・。」

戦闘待機所のソファーで寝てしまったようだ。
おかげで首が痛いし背中やらが痛い。
後、喉が渇いたから紅茶かコーヒーはないだろうか。

「はい、よく寝ていたわねどうぞ。」
「んん、どうも」

ミーナか、気がきくな。
熱すぎずほどほどの温度を保つ紅茶。
いいね、喉が渇いた時は温めに限るよ。

「さっきまで同じく寝ていた自分が
 人の事を言えないけど、珍しいわね。貴女、昼過ぎからずっと寝ていたのいよ。」

「そうか?」

マグカップに入った紅茶をグビグビ飲みながら答える。
うむ、だとすると宮藤の訓練を見た後待機所に入ってからずっと寝ていたことになる。
まずった、ネウロイの襲撃に備えて即応体制がモットーなのに寝てしまうとは。

「ミーナすまん、どうやら最近私はたるんでいるようだ。」
「はいはい、次からは気を付けてくださいね大尉。」

ニコニコと応答するミーナ。
相変わらずのお母さん気質である。
姉御肌、ではないな。しつけられる子供の気分と言い。

「でもね、」
「ふが」

ぎゅっ、と頭ごと抱きしめられた。
同性でも脳内物質を刺激する香りがダイレクトに伝わり顔いっぱいに広がる。
今こそ同性だからよかったが、これがもし男性のままなら下半身がエラいことになっただろう。

・・・すこーし、ぱんt、ズボンが湿ってる気がするのは気のせいだろう。

「貴女は優しすぎるし、
 頑張りすぎるからこうして休んでしまうのは無理もないことよ。」

「いやいや、私はちゃんと睡眠を取っているのに寝てしまったのは不注意によるものだ。」

そうだ
三食全てが温食で屋根つきの部屋で寝れるここブリタニア。
1940年代の最前線と比較すれば天国のようなものである。

「違うわ、そういう意味じゃない。」

何が言いたいのか?
肉体的疲労以外のことだろうか?

「忘れることも生き残るための技能。
 『アレ』は貴女のせいじゃない、戦力の移動を判断した上層部よ。」

・・・鋭すぎるぞこの娘。
自分があの事を再度気にしていているのに感づくとは。

「宮藤さん、似ていたわよね。」
「あ、ああ」

ミーナの指摘に頷くほかなかった。
私は妹、今は亡きクリスティアーネ・バルクホルンを宮藤に重ねて見ていた。

一度「忘れる」ことで今日まで生きながらえてきたが
ここでクリスに良く似た宮藤が来たことでクリスを連想させて
部隊壊滅と身内を死なせたのを思い出した私にミーナは危機感を覚えているらしい。

「絶対に、自暴自棄になっては、駄目。」
「そんなの、わかっている」

理性は理解できている、しかたがないと。
けど感情は許さない、お前の責任だと攻め立てる。

あの当時私は感情にゆだね、懲罰的処置を黙って受け入れた。
空から下ろされ、慣れない地上戦では進んで幾度も命を投げ捨てるような真似をしてきた。

「そう、覚えておいて
 もう二度と私の目の前で戦友や知り合いが消えるのはいやだから。」

僅か10センチそこらの距離からミーナは見下ろす。
慈愛に満ちた眼と表情、体が密着して心臓の鼓動が聞こえる。

満たされる感覚、人に飢えていたのかもしれない。
ああ、くそ。この後どういえばいいのかわからない。
苦手だ、こういうのは。

「保証はできないが努力する。」

最低な返事だ。
この馬鹿野郎、いや女郎。
ここは大ボラを噴いてでも安心させるべきなのに。

「まったく、本当に最低な返事ね。」

言葉こそ予想通りだが、
ミーナは何故か先ほどまでの暗い雰囲気がなくなる。

「貴女って人は・・・っと、そろそろ夕食の時間ね。」

壁に掛けられた時計に視線が向く。
釣られて見るとたしかにその時間帯で、外もだいぶ暗くなった。

「暗い話はここで終わり!
 さあ、気分を変えていきましょ。」

スッ、と立ち上がり手を差し出す。
ああ、そうかそういうことね。
食事で間を置き、一度気分を変えろと。

はは、そうだな暗い話や思考はここで区切ろう。
私が抱える物は解決したわけではないけど皆に見せるわけにはいかないし。

「ああ、そうしよう。」
「ええ、そうしましょう。」

彼女の手を握り立ち上がる。

「ミーナ」
「何?」

まだ言ってなかった。

「ありがとう」
「どういたしまして」

ちょっとだけ楽になった、ありがとう。





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