錬鉄の英霊のいない聖杯戦争の考察
考察物のSSです。
語り手は遠坂凜で衛宮士郎と聖杯戦争について語ります。
錬鉄の英霊アーチャーと衛宮士郎は互いを喰らうウロボロスの蛇。
だが、始めから尾を食べる蛇が居ないようにどこかでアーチャーが召還されなかった世界がある。
では何故アーチャーが召還される世界が生まれたのか?
それは世界が英霊エミヤの誕生を後押ししたからである。
そして、考えれば考えるほど、聖杯戦争は衛宮士郎を鍛えるに相応しい場を設けていた――――。
「『最初に英雄に至った衛宮士郎』が経験した聖杯戦争が、死者は蘇らず、八人目のサーヴァントも居ない正常に近い聖杯戦争だったと仮定します。しかし、その聖杯戦争は『英雄エミヤ』がアーチャーとして召喚することによって歪められたのですよ。同じ人物の現在と未来が同時に存在するという矛盾が生まれ、元々『アーチャー』だった僕は八人目のサーヴァントとして押しやられ、それに付随して言峰綺礼も復活した。――――さて、どうして世界はこんな矛盾と異常を許したのでしょうか?」
その場にいる皆に問いているようで、その視線は凶悪な顔をしている凜へと向かっている。
君ならもう答えは出ているだろうと挑むように。
そんな視線を受けて遠坂凜が黙っておけるわけがない。
「そんなの決まっているわ。『英雄エミヤ』をより高確率で製造するためよ。―――士郎を『抑止の守護者』にするために」
そう言い放った凜に対して、はあ?とランサーが驚いた声出す。
なんだか子ギルと凜との間で話が完結し始め、蚊帳の外に置かれつつある。
はっきり言って、二人が一体なにを言っているのかがよくわからない。
「ちょっと待てよ。世界が坊主を守護者にするために、ギルガメッシュや言峰を弄ったっていうが、世界が坊主のためにそこまでするのはおかしいだろ。嬢ちゃんが『ギルガメッシュ』を呼んだ聖杯戦争でも守護者になっちまるならわざわざ手を加えることはない。たまたまギルガメッシュが第四次に受肉したせいで空いた『アーチャー』のクラスにアーチャーが入り込んだだけなんじゃないのか」
凜や子ギルの発言はまるで、『衛宮士郎』のために世界が聖杯戦争を無理やり弄って調整したかのようだ。
たった一個人のために世界が動くなど、普通はありえない。
ランサーの言葉にライダーやセイバーも同調する。
しかし、凜はそれに対して首を振って否定する
「数多の平行世界の中で、私が『ギルガメッシュ』を召喚した聖杯戦争こそが原始の聖杯戦争の形だった。それを私たちが体験した聖杯戦争の形に変えることで生まれるメリットについて考えてみたの。そうするとね。気持ちが悪いほどに、士郎を英雄にするために改造したとしか思えないのよ」
桜がぎゅっと眉を寄せて困惑を深める。
守護者となった士郎がいったいどうなったか知っているからこそ、それは受け入れがたい。
「先輩を英雄にするために・・・ですか?」
凜はそんな桜に対し、頷いた。