黒と黒
衛宮切嗣、言峰綺礼、間桐臓硯。
どう見ても問答無用の殺し愛が起こりかねない面子が仲良くタッグを組む、そんな異色のSSを紹介します。
第四次聖杯戦争が終結した直後、
衛宮切嗣は言峰綺礼に等価交換を申し出る。
曰く、冬木に出没する吸血鬼を初めとする外道の退治に協力する。
その代わり、魔力の元となる血をよこせーーー。
さらに肉体を必要とする間桐臓硯には外道を狩ること提案。
ついでとばかりにウェイバーを巻き込んで奇妙な4人組が結成された。
言峰神父は仕事と彼自身の都合半々で、間桐と衛宮は純然たる彼らの都合のみで、
冬木に潜む犯罪者や、悪意を持って来訪する死徒や魔術師を秘密裏に始末しているのだという。
「……犯罪者は大都市だからまだ分かるけど、死徒や魔術師がそんな頻繁に?」
「ここは日本でも有数の霊地で、更に大規模な混乱があったからね」
当然の疑問には、言い争いが落ち着いたらしい衛宮が応じた。
「しかも管理者はまだ幼いツインテロリ幼女だし、ちょくちょく馬鹿が、根を張れないかと来るんだよ」
「髪型は関係ないだろう。……彼らを説得するのに、時間を取られがちで少々困っている」
説得(物理)ってやつだけどね――と混ぜ返す衛宮と、
またも睨み合いを始めた神父に対して、ウェイバーはおずおずと切り出した。
「協会に報告すれば、ある程度の抑止力になるんじゃない……ですか」
「確かに君の言う通りだが、借りを作ってしまう。更に当主の管理能力がどうこう難癖付けられかねん」
後見人としては、望ましくない事態だと重々しく告げる言峰を、衛宮は鼻で笑った。
「という建前の奥のホンネは?」
問いに、真面目そうな表情ががらりと変わった。
さっきこの人、神父だと確かに言っていたよなぁ――と、
ウェイバーが不安になる笑みを浮かべ、言峰は正直に思いを口にする。
「妙案を思いついたとノコノコやってきた愚か者どもが、絶望に打ちひしがれる様が結構愉しい」
「歪みねぇ歪みっぷりだね。まあ僕も間桐の御老人も、魔術師の身体には用があるんで、協会には黙っていたい」
身体に用。
衛宮の不吉な言葉に、肝心な部分を聞かされてないと、ウェイバーは気付いてしまった。
仕方なく、嫌々ながら、訊ねる。
魔術師たちの処遇――というか末路について。
「私がある程度いたぶり」
「僕がぎりぎりまで血を吸いあげ」
「ワシが身体を美味しく頂いておる」
なんて嫌な三段攻撃だと、ウェイバーは顔を歪めた。
意気揚々と霊地を乗っ取りにきた迂闊な魔術師たちは、搾りかすすら残らないほどに搾取されているようだ。