二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

おススメSS 凍える雪で閉ざされた世界に暮らす少女が欲するものは

2014-10-14 23:24:41 | おススメSS

凍える雪で閉ざされた世界に暮らす少女が欲するものは

ピクシブのFateSSです。
タイトルから察せられるようにイリヤに関するネタであります。
原作ではアインツベルンを裏切った衛宮切嗣はその命を終えるまで娘に合うことが許されず、
逆に迎えに来なかった、と認識したイリヤは切嗣を怨み、その息子に八つ当たりをするわけですが、

切嗣が駄目ならばその息子が欲しい。
と、イリヤがアインツベルンに頼み衛宮士郎を切嗣の元から拉致。


そこから物語が変わって行きます。
絶望する切嗣、だが拉致の騒動に駆けつけた遠坂凜が生きるのを諦めた切嗣を叱責。
僅かな希望を求めて切嗣は病魔と闘いつつ、原作の桜ポジションに収まった遠坂凜が切嗣の延命に成功。

切嗣生存状態で第五次聖杯戦争が始まる・・・。



あぁ、そっか」

ふと彼女の脳裏に妙案が浮かんだ。欲しいものは貰えばいいのだ。
切嗣の代わりに切嗣が引き取った子供を欲しがるのはどうだろう。
切嗣がイリヤスフィールを捨ててまで選んだ子供、その子を奪ってやったのなら。

老人が拒むことはないだろう。だって彼の糾弾する切嗣を欲しいというわけではないのだから。
それに切嗣を裏切り者だという翁だ。切嗣への復讐だといえば、きっとイリヤスフィールの望みは通る。

――明日になったらおじいさまに言おう。

ベッドに背中から倒れ込んで、幼く道理も知らぬ子供は思う。
 
――キリツグの引き取った子供が欲しいのだって。

そのままの体勢で天井を眺める。
目を閉じると最後に見た切嗣の顔が浮かんだ。
アインツベルンを去る前にイリヤスフィールと顔を合わせた父は、
今そうしてイリヤスフィールに向けたような顔をまだ見ぬイリヤスフィールの兄弟に向けているのだろうか。

ベッドに長い銀髪を散らし、少女は決意する。
それがどこまでも彼女の父に残酷なものだと気付きもせずに、自分の願いの叶ったその先を思い浮かべる。
顔も知らぬ義兄弟を父親から引き離して共に暮らしたならば、退屈なこの永の冬に閉ざされた世界でも楽しくなるだろうし、同時にそれは父への最大の復讐になるだろう。

そうしたら。
服の胸元をぎゅっと掴み、
イリヤスフィールは小さな声で、本当に小さな声で呟いた。

「キリツグもここに来なくちゃいけなくなるよね……?」

(その子に会うためだとしても、キリツグは迎えに来てくれるよね……?)






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弓塚さつきの奮闘記外伝 午後13:00(完結)

2014-10-13 12:26:16 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「あーそういえばさー。
 奮闘記もTS物SSだけど、皆は他に型月のTS系SSでどんな物を見ているの?」

思い出すようにアルクェイドが残りのヒロインに尋ねる。
TS物、すなわちトランスセクシャル、性転換の略語である。

「TS物ねー。
 そういえば士郎がTSする志保。
 アーチャーがTSするアチャ子の2パターンがあったわね」

凛が口を開き、妙にヒロイン力が高い己の従者の顔を思い浮かべる。

「「Fate/stay night ~剣の女王~」や、
 「正義の魔術使い、立派な魔法使い」のように聖剣の鞘の影響でシロウが私と同じ姿になるパターンもありました。
 剣の女王は完結しており今も閲覧できますが…ネギまクロス物である「正義の魔術使い、立派な魔法使い」はHPが閉鎖されました…」

セイバーは己のマスターがTS化するSSを語る。
「Fate/stay night ~剣の女王~」は本編でランサーに心臓を貫かれた士郎を蘇生させるべく、
発動した凛の治癒魔術に聖剣の鞘が反応してしまい、外見がセイバーそのものになってしまうTS物SSである。

凛ルートと桜ルートを元にそのまま聖杯戦争を戦いぬき、ロンドンに留学。
第二部のロンドン編では、クロス物では定番のゼル爺に弟子入りを果たし投影で宝石剣を再現。
魔法の再現に成功してしまい6人目に認定されその生涯を過ごす、というかなり変わったSSである。

対する「正義の魔術使い、立派な魔法使い」はネギまとのクロス物。
Fateルート後、正義の味方として戦い抜き死を迎えつつあった士郎だが、
平行世界の移動は遠坂宅急便、肉体の交換ならお任せ橙子先生!の遠坂凛、蒼崎橙子のコンビが登場。
早速肉体を入れ替えたが、鞘の影響でセイバーの姿になれるようになってしまった。

物語の展開はその後ネギまの世界で何らかの要因で飛ばされた、
宮崎のどか姿のランサーと共同戦線を張り、佐々木小次郎と戦うなど今後の展開が楽しみであったが、
非常に残念なことにHP「NIGHT KNIGHT KINGDOM」は現在閉鎖されている。

ただし、HPのURLをインターネットアーカイブに入力すれば閲覧は可能である。

「あーそういえば結構閉鎖されたSS多いかも。
 確か「出席番号32番 衛宮志保」も閉鎖された影響でアーカイブで発掘しないと見れないだっけ?」

「はい、あれも良いものでしたが、今では…」

「というか、Fateもそうですが大半のSSは完結せずエタって放置が多いですし」

アルクェイドが思い出すようにセイバーに尋ねた。
その問いにセイバーは悲しげに今は見れない事実を肯定し、シエルがエタッた作品の多さに嘆く。

「でも、先週(10月4日)からFateが放映されましたし、また新たなFateSSに出会えるはずですよ」
「む、それもそうね…そういえばFateが放映されたんだっけ?なんならさー、ここで皆で鑑賞会でもしない?」

桜のフォローにアルクェイドが頷く。
と、同時にFateが放映された事実に気づいた彼女がヒロイン勢による鑑賞会を提案した。

「あら、良いわね。でも貴女達は店員じゃないの?」
「どうせ客はしばらく来ないし、某3人組とかは展開的にもう少し先になってから来るから大丈夫大丈夫」
「ネタバレ乙」

凛がアルクェイド達が今はアーネンエルベの店員であり、
店員としての作業を放棄しても良いのか聞くがアーパー吸血鬼はまったく気にしていなかった。
そして、さり気無くネタバレをした事にさつきが突っ込んでいるが誰も聞いていなかった。
無視されたことに気落ちするさつきだが、ある事実に気づき再度口を開いた。

「あれ?というか先週の内容なんて今は放映されてないんじゃ…」

「愚問よ、弓塚さん。ここはアーネンエルベ、何でもありの空間。
 時間軸の無視なんて当然だし、大人数でも見やすい大きなテレビが都合よく現れるなんてよくあることよ」

つきの疑問に凛がここは都合主義万歳である事実を答える。
現に指差す先には今までなかったはずの20インチ以上のテレビが何故か鎮座していた。

「ふむ、何故かもう電源が着いている上に始まっているようです」
「…ご都合主義ばんざーい」

セイバーの呟きにさつきはご都合主義を賛美する他なかった。


(遠坂邸での朝のシーン)


「さっすが、uftable。
 背景画像に気合が入っているわね。
 BGMとかも合わせて雰囲気がブルーが活躍する「魔法使いの夜」みたいね」

「おお、言われてみればたしかに」

「あのーブルーって誰ですか?」

「魔法使いの1人、蒼崎青子のことよ桜」

予想以上の映像美に感嘆の声を挙げるヒロイン勢。
余談であるが遠坂邸のモデルは神戸の異人館の1つ。
「風見鶏の館」であり、神戸には他にも間桐邸、冬木大橋などの原作に登場したモデルがあることをここに記す。
なお会話に参加していない、さつきは鑑賞会のために飲み物や食べるものを準備している。


(弓道部道場で雑談を交わすシーン)


「いいなーこっちは志貴も妹も部活に参加してないわねー」
「志貴は体が弱いしな…っとできたぞ」
「感謝します、さつき」
「…そういえば姉さんは中学生の時、部活とか参加したことはあるのですか?」
「魔術の勉強優先だったから、代わりに生徒会の活動をしていたわ、桜」

学園者に定番である部活動について話題の花を咲かせる。
この話題に参加していないセイバーは、さつきが運んできたポテトフライを一心に頬張っている。


(ワカメ登場)


「モジャララ君ね!」

「む、頭にワカメを乗せたモブキャラですか?」

「あれ、誰だっけこのモジャモジャ?何とか慎二というらしいけど」

「ああ、モブキャラですね、直ぐに死ぬ枠ですね」

「ひ、ヒドイです!
 中の人は確かに某物語の人ですけど、
 昆布やワカメでも兄さんは小物かつ、物語の礎となる立派なやられキャラですから!」

「みんな色々ひどい、というか妹の突込みが一番ひどい!」

間桐慎二が凛に話掛けるシーンに、
ヒロイン達は次々と容赦ない言葉を出す。
まあ、それは仕方がないと言えば仕方がない。
なぜならエクストラに至るまで間桐慎二というキャラは小物枠で固定されているのだから。


(英霊召還シーン、そしてポカミス)


「えっとつまり遠坂さんは無課金で英霊を呼んだら、
 ご当地ヒーロー、それも同級生を招待してしまったでおっけ?」

「ご、ご当地ヒーロー……。
 アーチャーがご当地ヒーロー、ぷ、あ、あははは。
 あはははは!そ、その発想はなかったわ、今度アーチャーに言ってあーげよ」

「触媒を課金アイテム扱いですか…」

「公式でも英霊ガチャなんて代物が出ましたね…」

英霊を招く触媒を課金アイテム。
さらには呼ばれた英霊を地元のヒーローショーのヒーロー扱いなアルクェイドの言葉に、
凜は爆笑し、セイバーはその発想はなかった、と複雑な表情を浮かべる。
対するシエルは公式が病気なことをふと思い出した。


(整理された居間にドヤ顔のアーチャー)


「これ以上ないほどドヤ顔をしているけど、
 中身はあのヘッポコな士郎の未来だと思うとなんか複雑」

「執事レベル高いわね、翡翠みたい」

「黒執事ではなく、赤執事といった所か?」

「姉さんズルイです。
 こっちは認知症のおじい様の世話と我侭ワカメの管理を始めに、
 掃除洗濯家事炊事、家計簿管理、その全てが私だけでやらなきゃいけないのに!」

これ以上ないドヤ顔で紅茶を入れるコーチャーなアーチャーにヒロイン達はそれぞれの感想を言い合う。
特に凛は自分のサーヴァントであるが同時に舎弟…もとい弟子の未来の姿であることを思う所がある複雑な表情を浮かべる。
なお桜だけが妙に所帯じみたこことを口にし「そろそろ老人ホームも探そうかしら?」と呟いておりゾォルゲンの老人ホーム行きまったなしだ。


(冬木市探索シーン)


「『弓兵は、眼がよくなければ、つとまらん』。BYアーチャーっと」

「英霊川柳やめーい!」

「Fate/Zeroであったわねー」

「次の回は自分が登場しますから、
 待ち遠しいです…さつき、ポテトフライお代わりです」

英霊川柳を口にするアルクェイドに、突っ込むさつき。
感嘆深げに過去に思いを馳せる凛に、お代わりを要求するセイバーであった。


(アーチャーVSランサー戦、前半)


「うっわ、容赦ないー」

「ランサーは生粋の戦士ですから。
 それより、飲み物のお代わりです、桜」

「というか、姉さん屋上でランサーさんに襲われてよく無傷で済みましたね…」

「確かに、ランサーが本気で一撃で凛を殺すのではなく、
 遊んでいたのを除いても、英霊を相手にその場で怯まず逃走を選択できるとは、流石です」

「ふふん」

凛がランサーに襲われるが、
突き、あるいははらわれる槍の攻撃をかわして、逃走するシーンに、
妹である桜が呆れ、セイバーは英霊の攻撃から逃れた凛を賞賛する。


(アーチャーVSランサー戦、後半)


「……すごい」

「士郎はこの戦闘に入ろうとするのね、
 おまけに次はバーサーカー戦だしアイツ、本当に馬鹿というか無謀というか」

「しかし、本当に映像が綺麗です。
 それによく動くキャラ…一体何人のスタッフが魔力切れを起こしたことか…」

「『DEEN「これがサーヴァントの戦い…」』」

「アルクェイドさん、やめて。
 ほ、ほらDEENは2006年に放映。
 つまり8年もの月日が流れているから技術的に差異があるのは仕方がないって」

「月姫のリメイク版が出るとしたらぜひこうなって欲しいものです…今度こそカレーを」

迫力の戦闘シーンに圧倒されるヒロイン達。
だがその裏で一体何人の作画スタッフが睡眠時間を犠牲にしたのかセイバーは嘆く。
そしてアルクェイドがDEENとのシーンを見比べるような言い方に、さつきが冷や汗をかいた。
シエルはカレー風味のポテトを頂きつつ、黒歴史扱いのアニメとの差異に嘆く。


(ランサーに刺殺された衛宮士郎を遠坂凛が発見したシーン)


「『どんな顔であの子に会えばいい』姉さん、もしかして私のために先輩を……?」

「…………ま、まあそうよ。士郎は桜の面倒を見てくれたし」

「姉さん……ありがとう」

「…こ、今回だけは特別なんだから!」

衛宮士郎を蘇生させるために、父親が残した切り札を使う凛。
その理由は「どんな顔であの子に会えばいい?」と言ったように桜のためであった。

その事実に気づいた桜は凜に感謝の言葉を伝える。
感謝を受け取る側の凜は顔を赤らめ、そっぽを向いている。
麗しき姉妹愛、だかそれは即座にぶち壊された。

「あ、でもこのルートって凛ルートでしょ?
 つまり妹の想い人と知りながら恋人になった寝取りルートってこと?」

空気を読むことを知らないアルクェイドの指摘に空気が凍りついた。
たしかに、桜のために衛宮士郎を蘇生させた、だがこのルートでは最終的に恋人になるのは姉の凛であった。

「…………ふ、ふふふ」

「さ、桜、落ち着いて。ほら来年はHFルートの劇場版があるから!」

「ギャー!桜さん影!影を仕舞って飲み込まれるー!」


(衛宮邸でセイバーと対峙)


「あの時はこれからどうするとか考えずに、
 セイバーに見惚れていたわね、だってずっと憧れていたセイバーのサーヴァントだったから」

「でも、アーチャーさんの方がいいと思いますよ?
 セイバーさんなんて先輩のエンゲル係数を無限に上げて行く食っちゃ寝サーヴァントですよ?
 前回の聖杯戦争でドヤ顔で対等に渡り合えたと行ってましたけど実際はそもそも交戦回数すらアレでしたし」

「さ、桜!?」

「それでも、セイバーの方が可愛いじゃないの!
 あのガン黒皮肉屋バトラーサーヴァントよりもずっと可愛いじゃないの!」

「ひゃ!?凜?」

食っちゃ寝で衛宮家の家計簿に打撃を与え、
姉同様横から自分の想い人を略奪したセイバーを扱き下ろす桜。
だがそれでもセイバーの方がいいと言い、セイバーの可愛さを力説と同時に彼女に抱きつく凜であった。

「ねえ、さっちんこれってタワーが建つと言うのだっけ?」

「正確にはキマシタワーで」

「あ、終わりました。いやー次が楽しみです」

そして1時間はあっという間に過ぎて行った。





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おススメSS 切嗣「問おう。士郎が僕のマスターかい?」

2014-10-12 11:28:36 | おススメSS

切嗣「問おう。士郎が僕のマスターかい?」

昨日Fateが放映されたので再度FateSSを紹介します。
タイトルの通り主人公がセイバーではなく、養父を呼び出してしまう話です。

完結済みなので、安心して読めます。
どうぞ

 ――ただ、夢中で転がり込んだ。
 土蔵の中を見回すが、手近に武器になりそうなものはない。
 青い服を着た男が、血に濡れたような紅の槍を持って悠然と入ってくる。
 これじゃ袋のネズミだ。殺される――俺がそう思ったとき、背後で懐かしい声がした。

「大丈夫かい? 士郎」

 そいつは名乗りもしないのに俺の名前を知っていた。
 いや、そんなのは当たり前だ。だってこいつは。

「……なんだテメェ。英霊、か?」

 青い服の男が訝しげに問う。俺の背後のそいつは、

「死後たった五年で反英雄をかり出すなんて、聖杯も随分いい加減だな」

 と何の感情もない声で独りごちた。
 無視かい、と青い服の男は退屈そうに答え、槍を下段に構える。

「ま、何でもいいさ。とっとと片付けて帰らせてもらうぜ。抉れ、ゲイ――」

 男が言い終わらないうちに、そいつはいきなり発砲した。
 でもあの男は人間じゃない。ただの弾丸なんて効くわけがない。現に男は撃たれてもお構いなしにそいつに肉迫していた。
 けれど、紅の槍がそいつの心臓を刺し穿つことはなかった。
 そいつの胸の直前で、ほろほろと穂先は崩れていってしまったんだから。

「が――は」

 青い服の男が血を吐いて、膝を地面につけながら消えていく。
 あれは逃げているのではなく、消滅しようとしているのだ。存在自体が。

「英霊サマは魔力の塊だからな。これほど聖杯戦争向きの宝具はないってわけか。まったく」

 黒いコートに黒いスーツ、無精ひげにボサボサ頭のそいつは、たった今撃ったばかりの銃を肩に載せ、バツが悪そうに小さく笑った。

「ただいま、士郎。君が僕のマスターかい?」

 そいつは間違いなく、俺の親父――衛宮切嗣だった。






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おススメss 【Fate】アイリ鯖化

2014-10-08 23:38:05 | おススメSS

【Fate】アイリ鯖化

引き続きfATEのssを紹介します。
第五次聖杯戦争を題材としたものですが、
養父である衛宮切嗣が生存し、妻アイリスフィールをアヴェンジャーとして召還してしまう話です。


話しの構成も1話1万時オーバーで丁寧な描写とあいまって、
今後の展開が期待できますが、残念ながら現在は更新停止中です。
しかし、それでもfATEのアニメ放映に合わせて再開されるかも知れませんし、短編ネタとして読むならぜひ読んでみてください。



召喚は成功していた。
未完成の詠唱でも、切嗣は数合わせのマスターとして選ばれたのだ。

「――問いましょう」
声は背後。
重力に縛られることなく、その存在は浮いていた。

「貴方が、私を喚んだマスターなのかしら?」

弾む声は女のもの。
その声を、切嗣は知っていた。
過去。凄絶な人生の中にいた切嗣に、確かな幸福を与え、傍に寄り添っていた存在。
すでにこの世にはいない筈の、切嗣が最後に愛した女性。

「アイ、リ……?」
 
茫然とした呟きに、艶然とした微笑みが返される。
痩身に纏う黒衣のドレス。瞳と同じ鮮血色のラインが描かれたそれは、切嗣の見慣れぬ衣裳。
髪の色は透き通る銀色なのに、連想させる色は濁った泥の様な暗黒。
雪を纏う聖女は闇に蝕まれた悪意の塊となって、空間に浮かび上がっていた。

「なん……で」

理解が出来ない。
何故彼女がこうして現れるのか、と。
茫然としたまま、その幽玄の微笑に魅入られる。
彼女がサーヴァントとして呼びかけに応じたという意味が示す結論は、
その回答は一つしかないというのに、切嗣の理性は必死に理解を拒んでいる。

「あら、外が賑やかね」

切嗣の驚愕に興味など示さず、宙に浮遊するサーヴァントは一人楽しげに囁く。
視線を向けた方角。嫌な胸騒ぎと共に、切嗣は我に返る。
屋外から響く剣戟の音は、多重に響き渡る甲高い鋼。
サーヴァントのみが可能にする高速戦闘が奏でる死闘の音だ。

嫌な予感が膨れ上がる。
多少なりとも魔術の結界を施しているこの邸宅に、一般人を救出する為にサーヴァントが侵入してくるなどまず考えられない。
音の方角には土蔵があった。脳裏に描くのは、過去にアイリスフィールが敷いた陣。
もし、そこに魔術の素養を持ち、聖遺物を体内に持つ存在が近づき、
聖杯戦争のマスターを揃える為に新たな人間を欲していたとすれば。

「ま、さか……」

士郎もまた、選ばれてしまったのか。
身体の中に埋めた聖遺物から、何者が導かれるのかは既に悟っていた。
前戦争では切嗣のサーヴァントであった、セイバークラスにおいて最強の位置に存在する英霊、騎士王。
凡そ白兵戦において、彼女が負ける道理は無い。

問題なのは、士郎がマスターとして選ばれてしまったことにある。
戦い自体から逃れることは可能であるという名目はあるが、実質は難しい。
聖杯戦争のルールが、それを許さない。一度マスターに選ばれてしまえば、
令呪とサーヴァントを捨て去っても他のマスターの標的になり得る。

切嗣が嘗てそうしてきたのだから、それを疑う余地は無い。
第四次の戦争では半分以上が死んだ。士郎も無事に切り抜けられる保証は無い。
最も恐れていた展開が、ここに訪れていた。

「少しは自分の心配をしたら、マスター? 私の治癒魔術では、もう手遅れよ」

体温が失われていく切嗣へ伸ばされた繊手は、血溜りに沈む身体をなぞり白い掌が赤く穢れる。
サーヴァントが魔力を注ぐが、それ以上の速度で生命力が抜け出していた。
血圧が低下し、鮮血の流出が緩やかになる。
これ以上の生命維持に危険が生じる段階に足を踏み入れていた。

「ごめんなさいね。マスターに死なれては困るから、この方法を取らせてもらうわ」

謝罪のそれは、口吻けの感触。
唇に伝わった感覚は凍えた温度となり、どろりとした冷たい何かを、肉体に流し込む。
嘗て、身に受けた呪いを思い出す。

そして。
同時に思い出す。
この女は、あの中で見た存在だと。
接触部から伝わり、身体の内側で蠢く何かが、胸の中に巣食う。

止まりつつあった心臓がどくり。と、異質な音を奏でた。






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おススメSS 【世界を救う】臣師生存√凛ちゃんが四次鯖に【キミを救う】

2014-10-06 21:13:35 | おススメSS

【世界を救う】臣師生存√凛ちゃんが四次鯖に【キミを救う】

さて、先週の土曜日にFateが放映されましたので、型月のSSを紹介したいと思います。
大体の内容は上のタイトルから分かるように遠坂凛が第四次聖杯戦争に英霊として呼ばれるものですが、
臣師生存√。そう、もしも父親が生存していればお人よしな魔術師ではなく冷酷な魔女になると公式で明言されている√です。

魔女として実の両親、妹、師匠、そして衛宮士郎。
その全てを殺しつくした先に至った究極の魔女、遠坂凛。
一発短編ネタですが、ぜひ読んでみてください。


「この先の未来で、私はまたこの冬木の聖杯戦争に参加します。――彼女は、それに遠坂の当主として参戦していました」

しばらくの沈黙の後に、完璧でした、と彼女は呟いた。

「本当に完璧な魔女でした。その強さも、力も、心の在り方も」

魔術師でした、と彼女は言う。
それが微かな――侮蔑と、怒りと、断絶を込めていることに気付かぬ者はいなかった。

「私のマスターは偶発的に私を召喚してしまった、
 半人前にもならないような魔術使いで――様々なことがありましたが、彼と私は心を通わせました。大切な――大切な、ひとでした」

彼女は――と言う声が、震えもしないことが逆に、
セイバーの心に未だ残る傷跡の深さを感じさせた。銀の手甲の指部分が、ぎしりとコンクリートに立てられる。

「彼女は――彼を、殺しました。私の目の前で」
 
血を吐くように、彼女は言った。

「それだけなら――それだけならば、私は自らへの不甲斐なさだけを呪ったでしょう。
 己が主を、己が鞘を、己が愛しいひとを守れなかった、自らの弱さを狂わんばかりに責め悔やみ、それだけですんだでしょう」

けれど、と、落とされた声音は、憎しみが充ちていた。ちり、とランサーの産毛が逆立つ。
この娘は、竜の血を引いている。それをランサーは悟った。宝物を守る竜。怒り狂う、守護者の血を。

「けれど――あの女の着ていたコート。あれは」

息を止めて、そして吸って。
セイバーは、無残に尽きる一言を口にした。

「あれは、私のマスターです。あの女は――私の目の前で、
 私のマスターを生きながら魔術礼装にしたのです。そしてそれを、死した後もああして所有しているのです」






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