着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

「道具が無くては着られない!?」

2008-11-09 23:23:36 | 着付け教室
9月から新しく来られている一人の生徒さんは、私の教室に来られる前に近くの某大手着付け教室の無料体験をされたそうです。

その教室では、
「ここで学ぶ際にはこれを購入して頂きます」
と色々な道具を出して来られ、その種類の多さにびっくりされたとのことです。また、その中にはそこでしか購入できない教室オリジナルの道具まであったとのこと。彼女は、
「これほどまでに器具がなければ着られないということはないのではないか」
という釈然としないお気持ちと、
「それら全て購入するとかなりの額になる」
ということから入会を躊躇されたとのことです。そんな経緯から、
「道具が無くては着られないというのではなく、いつ、どんな状況でも着られるようになりたい。着付けはいわゆる昔ながらの1本紐の腰紐を使って」
と強く希望されていました。

巷には色々な着付け教室があります。
先生を沢山雇い、大々的に広告宣伝をしているような規模の大きい教室ではそれなりに利益を出して経営を成り立たせなければならないので、色々な道具を使用したり、高額なお免状を出したり、呉服屋と提携したりすることはある意味必要なことと思われます。しかし、それらのことが往々にして純粋に
「着付けができるようになりたい」
と思う方々の負担になることも多く、今まで、
「湯水のごとくお金をかけたのに身に付かなかった」
とおっしゃる方にも数多く出会ってきました。

かく言う私も某着付け教室では講師の資格まで取り、そこそこお金も費やしたのにもかかわらず、教室を退きしばらく着付けから遠のいていたら、自分で着ることすら自信が持てず、苛立ち、もう一度勉強をし直した経歴があります。
その時に門を叩いた私の師匠さんも同じような経験をされ、また大手教室の講師もされる中で、実際に
「着られるようになった」
「着せられるようになった」
と喜んで頂ける教室を開きたいと思われて現在の個人教室を開いておられます。私も、その教室で何回も同じことを繰り返し教えて頂いたお陰で確かな技術が身に付きました。そしてその先生のお考えに賛同し、また先生に応援していただくことによって、自宅で個人の着付け教室を開くに至っています。

一方、私の教室は便利な道具を一切使わないという教室ではありません。
私自身、自分で着物を着るときには「コーリンベルト」や「ウエストベルト」といった道具を使っていますし、帯結びのときに、手結びがしにくいほど短い帯でお太鼓をするときには「改良枕」という道具を使うこともあります。
これらの道具はたぶん殆どの着付け教室で使われており、たいがいの和装小物店で手に入れることが出来ますので、私自身一般的な道具として当たり前のように使ってきました。しかし勿論この生徒さんのお考えの様にこれらを使わなければ着られないということはありません。

今回の生徒さんとのやり取りの中で、私も初心に帰りました。
より生徒さんの立場に立って技術を学べる場とするために、今後生徒さんには道具の使い方と金額もお伝えした上で
「やはり便利だから購入したい」
とお感じの方にだけ購入して頂くようにしたいと思いました。


川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko/
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着付けデビュー

2008-07-13 22:04:12 | 着付け教室
6月の末から来られている、二人の生徒さん。お茶をされているそうで、
「7月6日にお茶の先生のご自宅で、相伝式(そうでんしき:お免状式のこと)があるんです。無理なら仕方ないとは思っているのですが、それまでに着られるでしょうか?」
と相談されました。

私の教室では一応カリキュラムもご用意はしているのですが、生徒さんのニーズやペースに応じて臨機応変にその内容をアレンジしています。今までも何人もの生徒さんに、着物を着る機会があるなら、その日に併せて着たい着物が着られるように最大限応援してきたつもりです。
それにしてもお二人とも全くの初心者だとおっしゃるし、日にちはないし、大丈夫かしら・・・?私も不安がよぎります。
でも、その時に着ようと思われている着物や帯、小物一式も持参され、やる気に満ち溢れている彼女らを見たら、心から応援したくなりました。

「かなり日が差し迫ってはいるけれど、折角だから何とか練習して着てみましょうよ」
7月6日は私の体も空いているし、万一の場合はお手伝いすることも出来るかも知れない・・・
それから特訓が始まりました。お弁当を持参して頂き午前からみっちりお稽古をしたこともありました。私も一生懸命お教えしましたが、お二人とも忙しいなか、懸命に練習され、前日の7月5日のお稽古日にはある程度綺麗に着ることが出来るまでに上達されていて、私自身正直驚きました。

自分で初めて着物を着て、しかるべき場に出ることを私は
「着付けデビュー」
と呼んでいますが、そのデビューは誰しも緊張するものです。
前日(つまり、お稽古が済んで自宅に戻られてから)に準備しておくことを確認し、当日は平常心で臨むようにアドバイスさせていただきましたが、お二人とも緊張の面持ちで帰られました。

そして当日7月6日の夕方、その生徒さんから、
「二人とも何とか着ることが出来て、お茶の先生や他の方々にも褒めて頂き、嬉しいです!」
とメールが届きました。
「良かった!良かった!」
私も本当に嬉しいです。今まで全然着物を着ることが出来なかった方が着られるようになり、喜んで頂けた、そういうことが実は私のこの仕事の大きなやりがいに繋がっています。
一つハードルを乗り越えられ、きっと自信がついたことでしょうね。これからも是非事ある毎に着物を着て下さいね。


川口着付個人教室
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されど、着付け教室

2008-02-02 13:14:39 | 着付け教室
図書館で「着物中毒」(中島梓著)を借りて読みました。

ご本人、とても着物がお好きな方で、ほとんど毎日を着物で過ごしていらっしゃるとのこと。
中島氏のお母様がそもそも着物好き、子供の頃から着物を着せられ、目にし、
「気がついたらひとりで着ていた」
とおっしゃる。そんな方がいらっしゃるのですね。

私は、というと、実家に着物は殆どなく、私が着付け教室に通うことになり、練習用の着物、帯を持ってくるように言われても、そういったもの自体がない。母がお嫁入りの時に仕立ててもらったという色無地と袋帯は、練習用にはもったいない代物。
「何もないのに何で習うことにしたのよ」
と母。
当時、古着屋さんで安く購入するような知識もなく、呉服屋さんで一番安いポリの着物と帯、小物一式を買って、それでも一生懸命練習したっけ。

「洋服の着付けは習う人なんて誰もいないのに自分ちの民族衣裳を着るのに、こんなに着付け教室に通わなくてはいけないっていうことが、そもそもやっぱりどう考えてもおかしい、昔の日常着としての着物をおいだしちゃった私たちは、着物を着付け教室で習う特殊技術にしてしまった」
と中島氏。

確かに、昔の人は着物で家事もすれば雑巾がけもしてきたのでしょう。そして中島氏も日常にもっと着物を着ようとおっしゃる。けれど、こういうお仕事をしている私でも、掃除の時はジャージにトレーナーといった格好、自転車に乗って買い物に行くのはジーパン姿・・・。洋服と着物を明確に着分けています。
引っ越す前まで通っていた茶道の先生も、お茶のお稽古の時は着物を着るけど日常は洋服。着物はやっぱり動きにくいとおっしゃっていたなあ。
残念ではあるけれど、今後、着物が好きな私たちがどんなに頑張っても、洋服が着物に再びとって替わられるなんてことはないと思うんです。

でも日本の民族衣裳である着物を見て素晴らしいと思う人は沢山いるし、せめて冠婚葬祭の時位は着物を着たいと思う方は多い。
私の教室に来られる生徒さんも日常的に着物を着たいとおっしゃる方よりも冠婚葬祭や、お茶会など、特別な場に自分で着られたらいいと思う方が殆ど。

そうなると、ただ普段着としての着方だけでなく、より綺麗に、そして着崩れのないような着方を学ぶということになるのだと思います。洋服だってドレスやスーツなど礼装用には下着やファンデーションにこだわる方が多いのと同じで、着物だって、礼装用には体型の補正は大事だし、着物と帯、小物との合わせ方、またTPO・・・。身近に教えて下さる方が居られなければ分からないと思います。
だから、あんまり着付け教室をバッシングしないで下さい。私は着付け教室に通うことで着物が着られるようになったし、これからも着物の素晴らしさを伝えていきたいと思っています。


川口着付個人教室 
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko/
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