ORGANIC STONE

私達は地球を構成する生命を持った石に過ぎないのですから。

ブリット・ポップ ガチンコ対決:リヴ・フォーエヴァー(2004)

2007-08-05 15:03:04 | 映画:ROCK系
Live Forever(2004)

1990年代英国のポップ・シーンをBlurとOasisの2大バンドの確執を中心に、音楽・ファッション・アートのカルチャーそして時代の流れと政治との絡みを、当事者のインタビューで検証するドキュメンタリー。

さて、この映画では、The Stone Roses以降のブリット・ポップ(ここの「ロックとポップ」の違いが明白じゃなんですが)の流れを追って行きます。音楽業界では1980年代英国ポップはブリティッシュ・インヴェイジョン(英国の侵略)と呼ばれ、世界をリードしていましたが、その後有望視されていたThe Stone Roses(ポップ・バンドだったんですか?)が消えちまい、突如として現れたのがご存知アメリカのNirvana。グランジですね。英国でもグランジ旋風に襲われます。しかしそれもカート・コバーンの自殺で幕を閉じる。そして頭角を現したのがPulpやSuede、BlurとOasis。奇しくも1995年、トニー・ブレア(労働党)が首相に就任、文字通り大きく変わっていこうとするムーブメントの年、映画ではその1995年のBlurとOasis同時新譜発売という音楽業界の思惑とそれに踊らされちまった人々の騒動がハイライト。


言いたい放題Oasisのリアム閣下。この兄弟左手で耳をほじって椅子の腕になすり付ける仕草が同じです(爆)。

同じくOasisのノエル。「俺は土木作業員だってしたぜ」といいつつもこの超豪華な部屋は何ですかね~ギャップが凄いです。

個人的には2つのバンドの新譜を同時発売して、どっちがたくさん売れるか、なんて意味ないことだと思います。売り上げイコール人気?そうかも知れませんがね・・インタビューでは相変わらす言いたい放題のリアム閣下とリアムよりは冷静なノエル、非常に冷静なデーモンのインタビューをじっくり見られます。結局売り上げ競争はOasisが勝ったのですが。デーモンの「俺は乗せられちまった・・・」と冷静に自己分析する姿は好感が持てます。時に長ぁぁぁい沈黙を交え、ウクレレをペロンペロンとへたくそに弾きながらぽつぽつ言葉を選んで語る彼は、至って普通。つまりギャラガー兄弟は相変わらず高慢だってこと・・・それが悪いとは思いませんが。ロック・スターとは「自意識過剰」で「高慢」で「ナルシスト」な生き物ですよね。そういう意味で彼らは十分に条件を満たしている。


Blurのデーモン・アルバーン。インタビューの最中に調子っぱずれのウクレレ弾くし。私は応援してますって。

残念ながら私は1990年代、日々生きるのに忙しく(笑)、この「新しい英国」「クール・ブリタニア」等名付けられたブリット・ポップムーブメントを横目で見つつ、当時の相方の聞くビーチボーイズ(あの手の音楽は苦手で。)に苦しめられる毎日。特に1990年代真ん中は空白の5年なんですねえ。だからこの同時発売対決、オンタイムでは覚えていません。しかし、このBlurとOasis、どちらも嫌いではありませんし、CDだってどちらもお気に入りです。Blur"Parklife"とOasis"Morning Glory"というヒジョーに典型的なパターンですが。どちらも音楽性は違いますよね。popでハッピーなBlurと、popでよりロック色の強いOasis。音楽的に比べて意味があるのか、って感じです。しかしマンチェスターの労働者階級層ギャラガー兄弟(Oasis)対、ロンドン中流階級のデーモン(Blur)の分かりやすいカテゴリ別けは、階級意識の根強い英国民の格好の話題となったのですね。。

ブレア首相の就任お祝いに官邸に招かれたギャラガー兄弟。ノエルは官邸に行きます。単純に労働者階級の彼が労働党のブレアを支持しても別におかしくはないのかなと思いますが、ことはそんなに単純ではない。関係者やファンにとって、高級な服に身を包み、首相とシャンペンを飲むノエルの姿、そこにロックの精神は無く、「ただの」ポップ・スターに成り下がった彼を見たのですね。その後急速にOasisは勢いを失って行きます。
インタビューではブレアに対する辛辣な意見も飛び出し、彼の「ロック好き」「庶民的」イメージは作られたものだったのか、と今更ながら考えてみました。去年、首相時代にUKのラジオに出演したブレアの対談を聞いたことがあります。印象的だったのは、最後に何か一曲好きな曲をリクエストしてとDJに聞かれた彼は、U2の曲をリクエストしました。「U2は好きなバンドなので」と。さすがに"Sunday Bloody Sunday"じゃ無かったですが。私はびっくりしてもう、固まりましたね・・・英国の首相がアイルランドのU2をリクエストって、いうなれば日本の首相が韓国の反日テーマの曲も歌っているバンドの曲をリクエストするのと同じです。現職の首相ですから、もちろん考えて考えて、決めた曲のはずです。そりゃ政治的思惑のあるチョイスなのは明確ですが、ちょっと尊敬したのは確かですよ。勇気がないとできないリクエストだったとおもうので。


大学でバンドやってたというブレア元首相。

この映画では音楽だけではなく、輝いていた1990年代のブリティッシュ・カルチャーも多く語られます。アート、ファッション、そして映画。ダニー・ボイル監督「トレインスポッティング」も紹介されますが、その背景には音楽を筆頭に「新しい英国」のムーブメントが無関係ではなかったとこの映画では分かりやすく説明されます。また、エンターテイメント王国(よくも悪くも)アメリカと英国の音楽を中心としたポップ・カルチャー構造も説明され、英国の文化的オリジナリティがどこから来るのかを知ることの出来る入門ドキュメンタリーとしても優秀です。

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2 コメント

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ヘンなとこからこんばんは!w (ラルフ)
2008-08-25 22:27:13
ダフト・パンクを探しててこっちに食いついてしまいました~笑
90年代は育児に追われ、
イギリスでこんな出来事やあんな出来事があったなんてのも知らず地味な生活をしていた私にはとっても興味深い1本でした。
80年代の音楽以外はここ2、3年で聴いたものばかりなんですよ(^^;)
お恥ずかしい@@@

アーティストは強気でなければいけないですよね。
スポーツ選手もだけど。
売れないかもなぁ~なんてインタヴューで言ってる人、
見たことないもんw

ダフト・パンクはどこだろー?
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意外なとこからラルラル! (ptd)
2008-08-26 22:07:10
こんばんは!
私こんな記事書いていたんですね(爆)。
随分個人的な事まで書いちゃってて、自分で笑いました!
私も90年代はいろいろ事情があって全然音楽を聴かない年が何年もありましたよ。映画は見たんですが。

この映画、英国音楽ファンにはおもしろかったでしょ。大変よく出来たドキュメンタリーだと思いました。ギャラガー兄弟が強気!というか何様よこいつら!くらいの勢いで。そこがまた彼ららしいのでしょうけど・・・

>アーティストは強気でなければいけないですよね。
>スポーツ選手もだけど。
自分が一番!と信じる事が必要ですよね。

ダフトパンク「エレクトロマ」なら、アートのカテゴリに入れてたので、ROCK系映画に入れておきました~!
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