世界史を変えた新素材
佐藤健太郎
新潮選書
文明を動かした12の素材の物語
その素材とは
金
陶磁器
コラーゲン
鉄
紙
炭酸カルシウム
絹
ゴム
磁石
アルミニウム
プラスチック
シリコン
プラスチックの項には、興味深い話が載っている。
それはローマ帝国第二代皇帝ティベリウスの時代にプラスチックと思われる素材が存在したらしいというのだ。
皇帝ティベリウスの元にガラスの盃を献上したいという職人が現れる。
皇帝が手に取り鑑賞していると、職人はお返しください、と言った。
職人は戻ってきた盃を地面に叩きつける。
その場にいた全員が割れると思ったが、盃はへこんだだけだったという。
皇帝はこんなものが出回ってしまえば、黄金ですら価値が下がってしまうと思い、職人の首を刎ねた。
そして「ローマのプラスチック」の製法は永遠に失われる。
この逸話は複数の著述家が記録しているから大筋で実話だったと推測される。
2000年後ようやく人類はプラスチックを手にすることになる。
さて、プラスチックの項には当然ポリエチレンも含まれている。
筆者はポリエチレンをプラスチックの王者と称している。
理由はポリバケツやポリ袋など身近に使用されること。
そして生産量が全プラスチック中約4分の1を占めることだ。
ポリエチレンが変えた世界史とは第二次世界大戦。
当時各国でレーダーの開発にしのぎを削っていた。
そんな矢先にイギリスでポリエチレンが発明された。
ポリエチレンはレーダーの設計に革命を起こす。
そして第二次世界大戦の戦局を変えた。
ポリ袋を販売している身としては、兵器に利用されたのは残念だ。
プラスチック以外も読み応えがあるし最終章AIが左右する「材料科学」競争のゆくへ、も興味深い。