「北岳に来ただけ」今季この9文字を叫ぶことはできなかった。2024年度冬合宿・北岳アタックはメンバーの発病により撤退を余儀なくされました。北岳山域の池山小屋にて一泊後引き返し、稜線に出ることもなく帰路につきました。
はじめに懸命な撤退判断を下された諸先輩方に敬意を表すとともに、報告会での「結果的には良かったが早期に計画を破棄した現役は淡白である」とのご指摘を深く受け止め、2025年はさらに心身ともに鍛え、岳人として山を本気で楽しんでいきます。
合宿参加者/3年:山崎、山本/2年:岩井、津田、斎藤/1年:木下、森、長谷川、梅野
さて、時は遡りDAY0 2024.12.26
博多から名古屋、中津川を経由し、甲府へ向かう。参加者は計9人の大所帯。博多駅に集合すると、1年ふたりが差し入れとともにお見送りに来てくれていた。
この時期、新幹線のぞみは全席指定席。青春きっぷの暴走により、新幹線を使うことを余儀なくされた我々は節約のため自由席券を購入。ひとりふたりで各車両のデッキで時を過ごした。車窓に見える田畑や住宅街、コンビナートや五重塔が過ぎ去り、あっという間に名古屋のビル群が迫っていた。
ローカル線に乗り換え、揺られる。遠目に雪被る頂が見える。気がつくと一面雪化粧の山あいを進んでいた。暖房の効いた車内には、部員の談笑が響き、それぞれの心根で北岳への期待が高まってゆく。
甲府に着いた頃には日は暮れ、駅前にはサラリーマンがせわしなく行き交う。計画上は駅前のカラオケ泊の予定だ。夜ご飯のため一旦解散となった。吉野家の定食にご飯おかわりを求める者、郷土料理ほうとうに温まる者、行方知れず気づくとビジネスホテルで快を満たす者。
そう、数名の先輩方がホテル泊に急遽切り替えたので、カラオケ泊は解消、残りはあてもなく彷徨うことになった。もとのカラオケ店は深夜料金に年末料金にで、ホテル泊より高かったのだ。もちろんのこと甲府城泊も検討したが、結局、安いカラオケ店にビバーク、1日目が終わった。
DAY1 2024.12.27
早朝発、甲府駅前に集合しジャンボタクシーに乗り込む。車内は真っ暗、木下は揺れるなかコンタクトレンズと格闘していた。1時間ほど夜道に揺られ、夜叉神峠に到着。準備を整え通行止めのゲートを越える。
ここから10時間の歩きが待っている。まずは鷲ノ住山登山口を目指し、登山口を越えたその先、あるき沢橋までは前座だ。昨年は暖冬により積雪も少なかったらしいが、今年はアスファルトが白むほど。ヘッドライトの明かりに、風花がきらめく。はじめての雪山、岩壁に生えるつららを横目に、しんしんと積もる雪への楽しみに満たされる。途中小休憩をはさみ、鷲ノ住山に足を踏み入れる。地面はアスファルトから土に移り、軽い足取りで山頂を跨ぎ、400mの急な下りへ突入する。薄暗い木立のなかを日頃の歩荷ではそう見ない斜度に慎重になりながら、冬靴が薄茶ける。赤旗をリュックの脇に抱える森は、その竹の棒を木に突き刺し引き抜き堪えていた。
走ると1分もかからない距離を1時間かけて下った。すっかり明るくなった谷間に野呂川が流れ、ワイヤーと鉄格子から成る灰色の吊り橋がかかる。野呂川は北岳を源流にもち、春には豊富な雪解け水が流れ下る。川の上、鉄格子の隙間から浅葱色の河面を覗く。夏にもなると豊かな水に育まれ、ヤマメが群泳するそうだが、風に揺られる波面が映るだけだった。
橋を渡り終え、土から再びアスファルトに戻る。ほどなくして、あるき沢橋が見える頃には腹音も聞こえ始めていた。
(後半へ続く)
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