どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」24

2023-04-14 16:03:00 | 日記
ワタリがセキと話していたのと同じ頃、王妃の間では鬼のタイムキーパー、ベルナが出勤が遅い抄花と亜遊にイライラしていた。
明らかに寝起きの抄花の手を引っ張って亜遊が走り込んで来たのは6時50分だった。ベルナは「5分で着替えよ。」とだけ言った。亜遊は抄花を急き立てながら着替えをした。5分前、ベルナがベルを鳴らしたが、抄花は髪を編んでいなかった。亜遊は、ベルナの机からハサミを出した。


抄花の髪の毛を鷲掴みにして耳の下でバッサリ切り落とした。あまりにも思い切りが良かったので、切られた抄花は声も出なかった。周りの女官も驚いたが直ぐに前を向いた。
ベルナともう1人の女官がドアを開けた。エリが入ってきた。
「今日も世話になる。よろしく頼む。」とエリが言うと抄花以外の4人は「おはようございます。王妃様。」と言って頭を下げた。抄花がお辞儀もせずに涙をこぼしているので「何があった?」とエリは全員に尋ねた。
すかさず亜遊が答えた。
「身支度の出来ない女官ですので、直属の上司である私が見苦しい髪を切り落としたのでございます。」
エリは泣いている抄花を一瞥して「亜遊、其方がしなかったら、我がやってたわ。丸坊主にな。良かったの抄花。丸坊主にならなくて。」と言ってソファーに腰掛けた。

昨日と同じバスルームの作業が始まった。抄花は床に座り込んで泣いている。
「あの女子は宮仕に必要な覚悟が分かっていない。。。」と亜遊は思った。

エリが王とのブランチのために出ていってから掃除が始まった。抄花はまだ、ぐずぐず泣いていた。
亜遊は抄花を立たせると言い放った。
「抄花!なすべきことをせよ!お前ができるのはバスタブ掃除。心を込めてやるのだ。仕事中はないてはならぬ。泣くのは終わってからだ!」
亜遊の命令は有無を言わせぬ迫力があった。抄花は涙を拭いてバスタブ掃除を始めた。

掃除が終わった時、エリが戻ってくるまで時間があった。女官達はお喋りを始めた。1人の女官が「昨日、ワタリ様が亜遊さんと抄花さんを迎えに来たでしょう?あれからどうしたの?」
「官舎に連れていってくださったのですよ。」と亜遊が言うと「どこの?番号教えて。」と訊いてきた。
「ちょっとそれは。。。」と亜遊が言い淀んでいると横から抄花が「1−5」と答えてしまった。
3人の女官は「わーっ!すごーい!そこ管理職しか入れないの。ワタリ様なら素敵なお部屋を造ってくださったでしょう?」抄花が得意げに「私のお部屋はお姫様みたいなお部屋よ。すごいわね。赤界って。何もないところから何でも出来ちゃう。」と言うと1番若い女官が口を挟む。
「抄花さん。それは違うわよ。ワタリ様は、それが得意で他国から『王の補佐官』に引き抜かれたの。」
「王の補佐官って何ですか?」と抄花はきいた。
「他の国なら王の側近、重臣よ。今居ない女官長の旦那様もそうなの。女官長の旦那様と筆頭補佐官は高天原に行っているの。2人とも、見目よく、頭も良く、武芸にも長けているんですって。」

抄花は少し高天原に帰りたくなった。


25に続く。。。