どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」25

2023-04-15 14:03:00 | 日記
エリが午後からボランティアの日だったので王妃の間の仕事は午後1時に終わった。
官舎へ向かっての帰り道、抄花は亜遊に「永遠に恨みますからね。」と言われた。

中央ガーデンでアズサとワタリが話していた。それを見た抄花は駆け出してワタリに飛びついた。そして泣きながら「亜遊さんが酷いの!私の髪を問答無用で切ったの!」と大声で叫んだ。

「髪?。。。いつもと同じだよ。」とワタリが訳がわからないという風に言うと抄花はワタリから離れて肩に自分の手をやった。元に戻っていた。アズサが面白がって「何?詳しく話してよ。」と言った。抄花が「朝のバッサリ」の話をしたら、アズサもワタリも大声で笑い出した。
「亜遊も亜遊だが、エリ様も役者!」とアズサは笑いながら言った。「そんなの神力で元に戻せるじゃない。抄花さんは、未だ100年経っていないから本気になっちゃったんだね。“召し上げ者“は100年を過ぎた頃から神力が出始める。君がもっと年寄りだったら分かったのに。ずっと泣いてたでしょ。顔がパンパンだよ!」アズサは笑うのが我慢できなくて吹き出しながら教えた。

ワタリが「亜遊様!」と遠くにいる亜遊に声をかけた。手も降ったのに亜遊はスタスタと官舎の方に行ってしまった。

亜遊は抄花の「若さ」が羨ましかった。見た目は若くとも自分は若くないのを知っている。人前で、抱きつくなんてできない。経験を重ねるのは良いことばかりではない。
亜遊は部屋に戻ると寝入ってしまった。

こちらも見ない結婚相手に重たい衣装。挨拶にくる賓客は途切れることがない。
未だ、7歳なのに何故お嫁に行かなくてはならないの。大人ばかりの中で同じくらいの男の子が手を振っている。遠くから。女官に名前を教えてもらった。
「弥川之皇の尊」。。。あの子は鬼に食べられた。誰も守ってくれなかったから。
かわいそうで、かわいそうで。。。悲しくて。。。

目が覚めたら、本物の涙が出ていた。
お風呂に入ろうと用意を始めた。今日のオイルはムスクだ。女王の香りだ。
元気にならなくちゃ。アマテラス様は赤界の何処かにいる。溢れる涙を拭もせず毅然とした態度を崩すことのなかった女王様。無理に無理を重ねた果てに、重い気の病が回復することがなくなった。自我もなくなり眠り続けている。。。この国の何処かで。

桃花姫は、お母上の身代わりでアマテラスの役目を演じている。やっと大人になれて自由になったのに「女王様」をやる選択しかなかった。親友だった桃ちゃんは、やりたいことがいっぱいあった。

思い通りにならず苦しい想いを抱えているのは、みんな同じかもしれない。
座っていることしかできなかった7歳の自分。高天原に行ってからも、お嬢様育ちで何もできなかった。先輩女官に教えてもらい叱られながら、ここまで来た。たくさんの困難が亜遊と桃花にはあった。それらに鍛えられ今の自分がいる。

今の自分が好きかと問われれば、「座っているよりはいい。」と答えられる。

そんなことを考えながら、亜遊はベランダで夕涼みをしていた。
すると、隣からワタリがひょいと顔を出して「見せたいものがあるんです。私の部屋に来ませんか?じゃなくて来てください。」と言った。
「はい。」と亜遊は返事をした。


26に続く。。。

✳️26は漫画の原稿になります。約1週間前後「亜遊の手紙」は工事中になります。
明日からは普通のブログです。