第一次大戦直後のバイエルンであるユダヤの青年が
ラビのところにやって来て、こう尋ねた。
「ラビよ、怒りと激怒ってどう違うのでしょうか?」
ラビが答えた。
「それはまあ、程度の問題だな。やって見せよう。」
そういうとラビは、電話を適当にダイヤルした。
「もしもし、ヒトラーだが」
「もしもし、アブラハムいるかな?」
男が答えた。
「ここにはアブラハムなんていないよ。
かける前に番号を調べないのか?」
「分かるかい」ラビが青年に言った。
「あの男の人は今の電話が気に入らない。
たぶん何かしていてうんと忙しいのに、ぼくたちが邪魔したんだ。
さて、見ていてごらん----」
ラビはまた同じ番号にかけた。
「もしもし、アブラハムいるかな?」
「おい、よく聞けよ!」
腹立たしげな声が答えた。
「おまえがたった今この番号にかけてきたときに、
ここにはアブラハムなんていないと言ったろう!
よくもまたかけてこられたもんだ!」
受話器ががしゃんと置かれた。
ラビは青年に向かって言った。
「いいか、あれが怒りだ。こんどは激怒がどういうものか見せよう。」
そうして、また同じ番号にかけた。
荒々しい声が「もしもし」と、吠え立てるように答えた。
「もしもし」ラビは静かに言った。
「もしもし、アブラハムだけれど、ぼくに電話があったかな?」
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