サイボーグで介護現場を救えるか? 軽量版マッスルスーツを試験導入 福島・神奈川で
東京理科大発ベンチャー「イノフィス」(東京)は、腰の動きを補助して重いものでも軽々と持ち上げられる装着型装置「マッスルスーツ」の軽量版モデルを開発、リリースした。筋力を補う「パワードスーツ」「ロボットスーツ」と呼ばれる“サイボーグ”で、スタッフ不足の介護現場での活用に期待がかかる。6月、神奈川、福島両県の施設で試験導入事業が相次いで始まった。
マッスルスーツは小林宏・同大工学部教授らが開発。バックパックのように背中に装着し、ゴムチューブの人工筋肉を圧縮空気で伸縮させて背筋力を補う仕組みだ。
装着することで腰にかかる負担は3分の1程度になり、重いものでも簡単に持ち上げられ介護、工場、農業などの分野での活用が想定される。
従来の標準モデルは重量約5.5キロだったが、現場の要望を受けて今回、同4.2キロの軽量版のリリースにこぎ着けた。パワーは3割減になったが、女性職員でも扱いやすくなるという。
身体の筋力を補って重労働を軽減させる「パワードスーツ」「ロボットスーツ」などと呼ばれるこれらの装置は、とくに介護現場での活用に期待がかかる。
厚労省によると、介護職員の離職率が改善しない一方で、現状の増員ペースで推移すれば平成37年度には38万人の介護職員が不足するとの推計がある。
人材不足の一因には、高齢者らを抱きかかえるなどの作業によって腰痛に悩まされる介護職員が少なくないことがある。作業軽減のための“アシスト”としてサイボーグが期待されるわけだ。
有識者で構成する「日本創成会議」(座長=増田寛也元総務相)もこのほど発表した提言の中で、介護人材現場でのロボット活用を指摘した。
6月からは、福島県が「介護支援ロボット導入モデル事業」を開始した。特養など29施設に対し、マッスルスーツや、筑波大発ベンチャー「サイサイバーダイン」のロボットスーツ「HAL介護支援用」などを無料で貸し出し、4カ月にわたって導入効果を検証する。
神奈川県も県内30施設へ100台を無料貸与。年度末まで使ってもらいながら効果や課題などを検証していく構え。今後、同種の取り組みが全国に広まるか注目される。
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