真未(三重大学教育学部1年)にはじめてのバイト料を渡す。
この真未の父親、俺の中学高校のダチ、それも久居中時代は俺が副会長、こ奴が会長の間柄だ。
娘大好きなこ奴、毎週火曜日は娘のお迎え。
しかし俺にすれば、娘の授業が終わるのを待つこ奴とアホな話ができるのはありがたい。
「あ~あ、高校生の頃に戻りたいなあ」と、こ奴がつぶやく。
「そりゃ、あかん。今の津高はあの頃の津高じゃない」
「どういう意味や」
「宿題が出る。俺たちの頃も宿題出るには出たが、提出は各自の自由だった」
「今は違うんか」
「ああ、提出は強制。出ない場合はかなりこっぴどく怒られる」
「まるで中学生やな」
「そう、高校は義務教育じゃない。宿題を出す出さないは各自の裁量に任せられていいはず。しかし、今の津高、まあ津高だけじゃなく津西も東も、確認印を押される。中学生の夏休みのワークのノリだ。漢文なんか、よくできてたらシールをもらえる特典付きだ」
「小学生や・・・アホやな」
「珍しく同感だ」
今日は高1が遅くまで残っている。
明日は実力テスト、しかしそれよりも明日提出の宿題のほうで忙殺されている。
ことに漢文の宿題が大変なようだ。
今からさせる必要が感じられない定番のチャートの古典と漢文。
教師によっては、チャートをさせる必要はないとの意見もあるようだが、国語科の総意とあればどうしようもない。
藍子と美帆(ともに松阪高校3年)がやって来る。
今夜は香良洲サーキット。
エスティマに乗り込むと南アフリカとフランス。
香良洲までなら30分で戻れる。
戻る途中に南アフリカが先制弾。
そして塾の駐車場に止めたところでレッドカードでフランス選手退場。
教室に戻ると依然として津高の1年が踏ん張っている。
サッカー王国フランスの陥落をこの目で見てみたかったが、この様子じゃそうもいかない。
日付が変わり、今度は嬉野ツアー・・・亜里(津高3年)だ。
エスティマのなかに再びブブセラの音が響く。
突発性難聴を患う者にとり、南アフリカは世界で最も行きたくない場所になったと痛感する。
試合はいつしか2点差・・・フランス陥落。