博物館実習生のM子です。
実習も後半に突入しました。
作業が多かった前半に比べ、後半は見学中心の内容でした。
様々な分野の職人さんの元に訪問し、その技や道具を見て学んできました。
9月6日
1、この日は、午前中に「鉾田新額堂」さんへ、
額縁制作の様子の見学に訪れました。
小村さんご夫妻は私達をにこやかに迎えて下さり、
和やかな雰囲気の中で額縁制作の過程を見学しました。
小村さんは、国内にいる数少ないヨーロッパの額の研究者から技術と知識を
学んだそうで、小村さんがそれ以前に培ってきた額職人としての技術や知識、
職人気質と併せて素敵な額を制作されます。
まず作業道具について、様々な種類がある中で
特に印象的だったのが「カンナ」です。
大小様々な種類が揃えられた手作業用のものがこちら。
機械に付けて使用するカンナは、作る額の形に木材を彫刻できるよう、
小村さん自ら刃の形を加工するそうです。
○制作工程
まずは木材の製材から。電動のカンナで木材を額縁の形に加工します。
次に、額として組み合わせられるよう、1本の木材を4本に切り分けます。
切り口の角度が丁度45°になるように工夫されたカッターを用いて切っていました。
切ったものを組み合わせて額にしていきます。
ここで気を付けなければならないのは、後で接合面が離れないように固定することだそうです。
これにはちょっとしたコツがあるようで、それは職人の秘密のテクニックなのだとか。
本来であれば、他の職人さんには教えてくれないそんなコツも、ちゃんとお話ししてくれました。
最後に、額に装飾を施します。額につける飾りは、型の中に石膏を流して作ります。
これは一度に作るのではなく、パーツごとに作ったものを組み合わせながら形にしていきます。
金箔を押すなど、装飾は額によって様々で、個性的です。
額の色々…
「額は絵に対する着物」という小村さんの言葉が印象的でした。
オーダーメイドで「その絵に一番似合う額を作る」ことを大切にしている小村さんの、
職人としての誇りが伝わってきました。
2、午後は、刀剣研ぎ師の谷津隆夫先生の工房を訪問させて頂き、
刀剣の研ぎ方やお手入れの方法、刀の歴史などについて教えて頂きました。
この日は先生の普段の作業場でなく、居合の稽古場に研ぎの船が設置されていたのですが、
お邪魔してまず目に入ったのが、居合道教士八段である谷津先生の賞状の数々でした。
研ぎ師として仕事をするだけでなく、武道の面でも刀を極めているという先生の姿を
垣間見ることが出来ました。
また、谷津先生は、刀剣鑑定においても著名な刀剣鑑定家である本間薫山氏の内弟子だった
とのことや日本美術刀剣保存協会の茨城県支部長を務めてらっしゃることなどを
後で資料館の方から伺いました。
まず初めに見せて頂いたのが「船」です。この上で刀を研ぐそうです。
船の傍には、道具箱も置かれていました。
まず刀を布で拭って表面の油を落し、
砥石を置き、踏まえ木という道具を足で踏んでしっかりと砥石を固定し、研ぎ始めます。
この姿勢が難しく、研ぎの世界では「構え3年」と表現されているそうです。
私達も実際に刀剣の研ぎを体験させて頂きましたが、姿勢を作るのが非常に難しく、
上手く構えられませんでした。
砥石にも様々な種類があり、工程によって使い分けていきます。
長い時間をかけ、少しずつ研いでいきます。
非常に強い忍耐力が必要な作業であることが分かりました。
当初は錆が多く付いていた刀が、徐々に輝きを取り戻していく様子が印象的でした。
研ぐ作業の合間に、平安中末期から鎌倉、南北朝、室町と刀の歴史の概要に
ついて先生がお話して下さいました。
特に日本刀の刃紋について、直刃、丁子刃、互の目、のたれ、小乱れなどの種類があり、
これらが変化したり組み合わさったりと、とても多くの種類があることを知りました。
これまで刀を見る機会があっても、意識したことの無かった部分であり、
非常に興味深く感じました。
また、刀剣鑑賞のポイントの一つである「沸え(にえ)」と「匂い(におい)」について、
とても丁寧に教えてくださいました。
最後に、刀剣のお手入れ方法を教えて頂きました。
刀を拭い古い油を落とし、打ち粉を打って拭い、最後に新しい油を塗って仕上がりです。
手順を簡略化して書きました。
詳細は7日に行われた「刀剣のお手入れ」の記事に書きます。
谷津先生の工房訪問を通し、これまで見る機会はあっても、実際に触れる機会のなかった刀剣について、
非常に多くのことを学ぶ機会を与えて頂いたこと、非常に嬉しく思います。
刀を持ったことの無い私達に対して分かりやすく説明をして下さり、初心者にとっても理解しやすかったです。
とても貴重な体験となりました。
小村さんご夫妻、谷津先生、
見学をさせて頂き、本当にありがとうございました。