リツゲイ稽古場日誌

劇団立命芸術劇場の稽古場日誌です。日々演劇と向き合う団員たちの思いが垣間見える、かも...?

神は疲れている

2009-06-25 01:11:01 | 夏公演「Evil Narratage」
 作・演出の山田です。森村誠一の随筆を読んでいて、「作家は神である」という言葉が目に留まりました。曰く、生身の人間が現実世界で神となることは極めて困難である。如何に強力な独裁権力を保持しても、必ずそれに背く者が現れ、意のままにならない。しかし作品世界においては、作家はそこに存在する人・物全ての殺生与奪の権を握っている、と。
 しかし、実際に演出をしてみるとそうはいきません。"Evil Narratage"が脚本であるうちは、私は唯一絶対神でいられますが、それを役者に演じてもらって芝居にするとなると話は別です。作品の意義を、その創り主が的確に子細漏らすことなく役者に伝えられるかといえば、答えは否となります。そこが作品世界では神であっても、現実世界では蛋白質の塊に過ぎない作者の宿命なのかも知れません。しかし、何とかしてもっと細部の演出を詰めていかないといけないんです。とにかく、何とかして。
 野田知佑は四季折々に変化する日本の自然を、「日本を造った時、神は最も気分が乗っていた」、荒涼とした北極圏のマッケンジーを「マッケンジーを造った時、神は疲れていた」と評していました。もう上演まで10日あまりですが、公演を見た観客から、「演出は疲れていた」と思われるような結果にしてはいけないんです。
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