好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

●ありふれた物語 (表)

2016-07-15 | 詩編
ある日、王は兵士たちに命じた。
邪な儀式により生まれた魔物を倒せと。
集められた彼らは、誰を誰とも知らぬまま。
めいめい各々、きらめく鎧に兜に仮面。
三日三晩かかるだろう山の向こうへ。
翼の加護で一飛びで、彼らは洞穴に至る。
最奥に横たわる龍は、見るもおぞましき形と色。
輝ける兵士たちに恐れをなすか、気圧されたのか動かない。
彼らは高らかに、名乗りを上げて武器をふるう。
その勇ましき猛進を、卑怯にも敵は狙う。
兵士たちに炎を浴びせ、爪で斬り裂き、牙で捕らえる。
されど彼らは、そんな責めなど苦にしない。
彼らの火傷も裂傷も、己が聖なる力によって癒される。
さあ、反撃の狼煙を上げよ、与えられし痛みを返せ。
龍の牙を折れ、爪を落とせ、首を斬れ。
敵は心臓をも砕かれて、倒れる間もなく、灰と消える。

「はい、お疲れ様でしたと」
「まだ物足りないね」
「もっと戦いたかったな、がっかりだよ」

消えた魔物の跡を背に、兵士たちは互いに見合って笑い合う。
彼らは次の命を受けようと、意気揚々と去って行く。
いつでもどこにでもある、これは、ありふれた物語。

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