『祖父、現る!?』
前回の『ソニア・フィールド編』からの総括にして、『立木さゆり編』の意趣返し。
『立木さゆり編』の構造を改めて記すと以下のようになる。
今まで伏せられていた香の素性が明かされ、それで肉親を名乗る人物が登場した事から、相対する獠は香を表の世界に返すべきと理解しつつも、香を手放したくないというエゴイスティックな感情を自覚する。
一方、香ははじめから自分の居場所は獠の隣と結論を出しており、それを知った肉親は身を引く。
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上記の段落の「獠」と「香」を入れ替えれば、そのまま今回の『神宮寺遙編』を説明できる。
二つのエピソードの相違点としては、香の場合は血縁関係が明白だったのに対し、獠の場合は決定的な証拠が一切ないという点だろう。
ただ、頭部の火傷痕が云々という以前に、「27年前に3歳」という年齢には、やや無理があるように私は感じる。
今エピソードは、こうした獠と香の関係に重点が置かれているため、“美女”たる遙の印象はやや薄い。
名前の漢字も間違えやすい。
「司」でなく「寺」、「遥」でなく「遙」である。
しかしながら、遙は獠たちとの関わりをきっかけに、家のしがらみから抜けだし、長髪&和装から短髪&洋装へ「劇的に変身」する。
銀行員として繁華街へ駆けていく姿は、この上なく好ましい。
そして最後、獠は香を身内としてついに認める。が、彼らの関係はそこでストップ。
【冴羽獠は無戸籍である】という設定が開示された事で、『シティーハンター』という作品は、(結婚という)現実に即したゴールテープを捨てた。
獠と香の物語は永遠に続けられる可能性が示された。
ただ、そうやって永遠に続く物語には前提がある。登場人物が加齢しない事だ。
その前提を持たない『シティーハンター』は、むしろ終焉へ近づいていく事となる。
それでは。また次回。
フェーズ5「マニア」終了。フェーズ6へ。
(※マニア。偏執的恋愛。恋の病)