『殺したい男!!』
『佐藤由美子編』『美樹初登場編』で垣間見られた、獠と海坊主の決闘が描かれる。
同時に、『ブラッディ・マリィー編』における獠の、『氷室真希編』における海坊主の、それぞれ過去への言及から、彼らの因縁が明かされる。
更に言えば、『浦上まゆ子編』『北原絵梨子編』『都会のシンデレラ編』の3編を内包した集大成。
しかも作中の時は3月下旬、つまり獠&香の誕生日まで含まれる。
これほどの話題を持つエピソードが盛り上がらないはずはなく。
「いつもと違う『シティーハンター』」に、連載当時のファン達は大いに気を揉んだという。(JCカバー見返しの作者コメント参照)
というのは、今エピソード、笑える要素が非常に少ないためだ。
良くも悪くもシリアスを貫いており、ときおり差し込まれるギャグが逆に浮いて見えるほど。
獠の「もっこり」さえ、直接描写されず流される。
どれだけ殴られてズタボロになっても、次のコマではケロリの獠が、そして鉄の筋肉を誇る海坊主が、今回は違う。
銃で撃たれれば、傷を負う。血を流す。治らない。死ぬ時は死ぬ。ただ一発の弾丸で。
そんな当たり前の現実が、連載初期を思い出させる「死」が、圧倒的な画力で突きつけられる。
まるで”動画を読んで”いるかのようなアクションは極限まで冴えわたる。
男二人が墓地内を駆け巡る銃撃戦は、必見である。
以後の原作では、海坊主は盲目、だが勘が研ぎ澄まされて戦力としては何ら遜色ないという、何ともヤヤコシイ設定が付与される。
そう、シリアスは再び鳴りを潜め、次回からひとまずの平和が、日常が戻ってくるのだ。
それでは。また次回。