この時期になっても五輪開催について先が見えず、やきもきしているとは思わなかった。
オリパラ開催国側の責任者たちは今日に至るまで「安心・安全」と公の場で毎回念仏のように唱えているが、具体的な対策は直接示されないままだ。「安心・安全」どころか、事前合宿を受け入れる段階でバブルが簡単に壊れると早くも証明されてしまったではないか。
日本で生活していると、通勤がどうしても必要な人にも定期的な検査がなく、公共交通機関や職場で誰が陽性なのか皆目見当がつかないがゆえに無用な心配をしながら暮らすことは、もはや当たり前になってしまっている。しかし、世界の人たちはそれを認めるだろうか。
上下水道の完備など公衆衛生上のインフラが十分に整備されており、罰金などのペナルティが課されなくてもマスクは可能な人はほぼ全員が着用し、(主に視力矯正目的での)眼鏡の着用者も多いというように、感染症を防ぐための好条件が日本にはそろっている。
しかし、徹底検査で陽性者を早期発見しなかったことが原因で職場や学校、家庭内へと感染の連鎖を断ち切れずに蔓延させてしまった。
また、日本では身の回りに陽性者が見つかったにせよ、検査を受けられるのは一定の条件を満たした人に限られる。国外に住む筆者の知人たちは一様にこの点を不安視している。首都圏であれば個人で検査にアクセスすることが可能ではあるが、受検の際に30ドル前後費用がかかるというと、もはや全員が言葉を失ってしまう。
国内でも「ザル」と評される空港検疫をはじめ、一年間で公的な制度面が整えられていない事実が、新興感染症などなかったことにしたいという逃げ腰の姿勢を反映しているようにしか見えない。
こうした現状でも、個人の行動変容で可能な限り感染連鎖を防ごうと辛抱強く努力しているが、感染しない/させないための公的なバックアップがない事実は、国外の人には到底受け入れられず、むしろ日本の人たちが気の毒だと心配されるのではないか。
国外からの懸念と不安や恐怖が、オリパラへの出場辞退、あるいは選手の派遣見送りという行動で明確に表明されれば、今からでも考えを改める可能性がある。国内でもJOCの名誉顧問を務める人物が大会開催への懸念を示している。決して無視することはできないだろう。
しかし、何よりも無視してはいけない声がある。私たちは今現実に起きている悲劇をすでに予測して、暴走を止めるように訴えてきた。このコラムで以前に紹介された、宇都宮健児さんが呼びかけている署名はさらに賛同を集め、現在では44万筆に達している。報道機関による世論調査でも、開催する系の選択肢をいくら増やしても過半数の回答者が「中止」を選んでいる。
五輪中止を求める署名は35万筆に達した時点で開催都市である自治体に提出をしているものの、何かしらの応答は今のところないようだ。
文字通りの先が見えない状況が続いてしまっているが、この現状を打破するのは鶴の一声や外圧でなく、それこそ日々を命がけに生き抜いている市民の声であってほしい。
「護憲+コラム」より
見習い期間
オリパラ開催国側の責任者たちは今日に至るまで「安心・安全」と公の場で毎回念仏のように唱えているが、具体的な対策は直接示されないままだ。「安心・安全」どころか、事前合宿を受け入れる段階でバブルが簡単に壊れると早くも証明されてしまったではないか。
日本で生活していると、通勤がどうしても必要な人にも定期的な検査がなく、公共交通機関や職場で誰が陽性なのか皆目見当がつかないがゆえに無用な心配をしながら暮らすことは、もはや当たり前になってしまっている。しかし、世界の人たちはそれを認めるだろうか。
上下水道の完備など公衆衛生上のインフラが十分に整備されており、罰金などのペナルティが課されなくてもマスクは可能な人はほぼ全員が着用し、(主に視力矯正目的での)眼鏡の着用者も多いというように、感染症を防ぐための好条件が日本にはそろっている。
しかし、徹底検査で陽性者を早期発見しなかったことが原因で職場や学校、家庭内へと感染の連鎖を断ち切れずに蔓延させてしまった。
また、日本では身の回りに陽性者が見つかったにせよ、検査を受けられるのは一定の条件を満たした人に限られる。国外に住む筆者の知人たちは一様にこの点を不安視している。首都圏であれば個人で検査にアクセスすることが可能ではあるが、受検の際に30ドル前後費用がかかるというと、もはや全員が言葉を失ってしまう。
国内でも「ザル」と評される空港検疫をはじめ、一年間で公的な制度面が整えられていない事実が、新興感染症などなかったことにしたいという逃げ腰の姿勢を反映しているようにしか見えない。
こうした現状でも、個人の行動変容で可能な限り感染連鎖を防ごうと辛抱強く努力しているが、感染しない/させないための公的なバックアップがない事実は、国外の人には到底受け入れられず、むしろ日本の人たちが気の毒だと心配されるのではないか。
国外からの懸念と不安や恐怖が、オリパラへの出場辞退、あるいは選手の派遣見送りという行動で明確に表明されれば、今からでも考えを改める可能性がある。国内でもJOCの名誉顧問を務める人物が大会開催への懸念を示している。決して無視することはできないだろう。
しかし、何よりも無視してはいけない声がある。私たちは今現実に起きている悲劇をすでに予測して、暴走を止めるように訴えてきた。このコラムで以前に紹介された、宇都宮健児さんが呼びかけている署名はさらに賛同を集め、現在では44万筆に達している。報道機関による世論調査でも、開催する系の選択肢をいくら増やしても過半数の回答者が「中止」を選んでいる。
五輪中止を求める署名は35万筆に達した時点で開催都市である自治体に提出をしているものの、何かしらの応答は今のところないようだ。
文字通りの先が見えない状況が続いてしまっているが、この現状を打破するのは鶴の一声や外圧でなく、それこそ日々を命がけに生き抜いている市民の声であってほしい。
「護憲+コラム」より
見習い期間