老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

ウクライナ侵攻後の世界の激変にどう対処するか(3)ウクライナ侵攻の結果、世界はどうなるか

2022-04-03 12:59:36 | 安全・外交
(3)ウクライナ侵攻の結果、世界はどうなるか。※日本はどうなる

🔶ロシアのウクライナ侵攻に対する欧米の対処;経済封鎖・・・れいわ新選組山本太郎の見解を中心に書いている。・・・・・・・・・

◎経済封鎖⇒経済的手段により、標的国政府の政策変更を促す目的。(標的国政府へ)
      政府の政策変更ない場合⇒政府自体の平和的交代(民主国)
                  政府自体の暴力的交代(非民主国) を目的
◎今回のロシアの経済制裁⇒各国家の単独の決定に基づく経済制裁 ※国連のお墨付きなし

☆経済制裁の成功とは何か ⇒経済制裁の目的を達成できた時
 ①国際紛争や対立が起きた際に「敵国」の経済力を削ぐ
 ②核兵器の開発・拡散を阻止する
 ③人道や民主化を促進する
 ④テロ組織を罰し、再発を防ぐ
 ⑤他国の領土侵攻など国際法違反を罰する
 などが達成できた時。

☆経済制裁の問題点
 誤解をしてはならないのは、“経済制裁”=“戦争”と同義だという認識が必要。時には、“戦争”より悲惨な結果を民衆に与える。(例)米軍撤退後のアフガニスタンの惨状。経済封鎖に参加する国は、この点をきちんと認識する必要がある。

▼ロシア政府が日露平和交渉を打ち切ったのは、経済封鎖参加国=戦争参加国という認識に基づいている。それに対する日本政府の抗議などは、ピント外れと言わざるを得ない。ロシア政府の認識は、日本は戦争参加国というものだろう。

☆経済封鎖の効果(過去の経済封鎖はどうだったか)
 経済封鎖の結果、政権の行動が変容した⇒ほとんどない
 経済封鎖の結果、国民によって政権が変わった⇒ほとんどない
(例)北朝鮮、アフガニスタン、イエメン、シリア、ベネズエラなど
・・・・・・・・・・・・・・・・

🔸今回の経済制裁の内実

衆目の一致しているのは、今回の経済制裁の主導権は米国が握っている点である。では、米国の「経済制裁のシナリオ」は、どういうものなのか。日本のメディアで展開されているシナリオは以下のようだ。

☆米国のシナリオ
①ロシア軍は苦戦。(ウクライナ軍の善戦)⇒ロシア軍の被害甚大⇒ウクライナ占領に失敗⇒ロシア軍撤退
②ロシア国内でプーチンの人気が落ちる⇒クーデターか他の手段によるか分からないが、政権交代が起きる⇒ロシア大混乱⇒冷戦終了直後(ゴルバチョフ政権など)のように経済的大混乱に陥る⇒ロシアの凋落(弱いロシア)
③プーチン退陣後のロシア⇒外貨獲得のために西側に大幅譲歩⇒米英の傀儡国家(エリチン時代)に戻る⇒ロシアは安値で石油・天然ガス・鉱物資源・穀物(小麦など)を米欧に輸出(外貨獲得)
④上記の事態が予想される⇒だから、欧州経済が自滅的に苦境に陥っても、厳しい対ロ制裁をやるべき。

※問題はこの米国のシナリオ(アフガニスタン侵攻後のロシア経済の低迷=ネオコンのシナリオ)通りに事が運ぶのか。柳の下の二匹目の泥鰌がいるのか。日本が一番読まなければならないのは、この点である。

☆経済制裁の実態
①経済制裁参加国数
 制裁参加国は196カ国中48カ国。中国・インド・ブラジルなどが参加していない。
 人口では経済制裁の効果は測れないが、制裁に参加している国家の人口は、約12億。世界の人口は約80億。残りの68億人は制裁に参加していない。

②経済制裁の具体的内容
◎SWIFT(国際銀行間通信協会)=世界中の国や地域の1万1000以上の金融機関などが利用する国境をまたいだ送金情報を電子的にやりとりするインフラで、海外送金の事実上の国際標準となっている。
 ここから排除されると国際銀行間の送金業務が滞り、貿易業務に著しい支障をきたす。実質上、ロシアは貿易ができなくなる効果がある。
 具体的には、ロシア約300の銀行のうち、大手7行を国際決済から締め出した。
※(例外)⇒ロシア最大手ズベルバンクとガスプロム(エネルギー関係会社)を例外扱い
 (理由)⇒ドイツ、オーストリア、イタリア、ハンガリーなどエネルギーのロシア依存が高い国が困る
◎ロシアのオリガルヒの資産凍結
◎米国、スイス、EU⇒ロシア中央銀行、財務省の取引禁止
◎追加制裁
  ・3・11→G7がロシアの貿易最恵国待遇を撤廃⇒貿易に30%の関税を課すことも可能。(北朝鮮なみ)

◎ロシアの資源供給に対する制裁⇒アメリカ、イギリス、カナダが原油、天然ガスの輸入禁止
・EUも、2027年までにロシア産化石燃料(天然ガスや原油など)依存脱却をめざすため、5月までに具体案を提示。

③ロシアの経済的目的 ※プーチンの準備
☆プーチン評価の功罪
●欧米各国のプーチン評価は、最悪。「悪魔」とか「狂人」とか激しい評価が乱れ飛んでいる。バイデン大統領にいたっては、「戦争犯罪人」「人殺し」「虐殺者」「権力を持たせてはならない男」など、バイデン大統領自身の人間性まで疑わせる言葉を乱発している。
 つまり、欧州各国のロシアやロシア人に対する評価はきわめて低い。一言でいえば、完全に見下している。一種の人種的偏見や差別があると言ってもよいくらいである。だから、今回のプーチン大統領に対しても「悪魔化」という評価が飛び交うのも頷ける。

●プーチンの認識
では、プーチン大統領は、自分自身やロシアに対する欧米の評価を知らないのだろうか。そんな事はない。よく知ったうえで、今回のウクライナ侵攻を決意した、と考えるのが常識。

理由は明白。自分自身やロシアに対する欧米の評価も知らずに、これだけ長年月ロシアの最高権力者に留まり続けることはできない。ロシアや中国などの権力争いは、一つ間違えば、自らの生命も保証されない苛烈なもの。日本でいえば、戦国時代と言えば多少語弊があるが、似たようなものと考えてもよい。こういう中で生き延びることができる人間が、自分自身への評価すら分からないほどの能天気な人物であるはずがない。

日本人はこの事をよく知っているはずで、安倍元首相がどれだけプーチン大統領に手玉に取られたか。欧米諸国のプーチン悪魔化の尻馬に乗ってはならない。

こう考えると、プーチン大統領にとって欧米諸国の苛烈な【経済制裁】は織り込み済みだと考えるのが妥当だと思う。苛烈な経済制裁を科せられても、当分の間持ちこたえられ、その間に当初の侵攻の目的を達成できる、と読んだから、侵攻を決意している。

元KGB工作員のプーチン大統領がきわめて冷静に計算して今回のウクライナ侵攻を決意し、実行していると読んで対処の仕方を考えなければ、ウクライナ侵攻後の新たな世界に置いていかれる結果になる。

🔸欧米の経済制裁に対するプーチンの狙い
☆プーチン大統領の準備
 そもそも、欧米の経済制裁は、2014年クリミア併合以来切れ目なく続いている。そのため、この8年、ロシアは経済制裁に対する準備を行ってきた。(経済制裁慣れ)

「米ドル依存からの脱却のための政策」
外貨準備
2017年 ドル建て外貨準備 46・5% 金16・3% ユーロ24・1% 
2021年 ドル建て外貨準備 16・4% 金21・7% ユーロ32・3% 人民元13・1%

「中国との関係強化」
〇ロシアの輸入する半導体⇒1/3 〇コンピューター、スマートフォン⇒1/2以上 中国製
その為、米国が行う輸出規制は、効果が薄い。
〇中国とロシアの貿易総額⇒前年より38・5%増加
〇2月4日 中国はロシアの天然ガスを年間100億立方㍍追加購入すると発表。
      ロシア産小麦の輸入全面解禁

※中ロ間の決済システム
今後ロシアと中国間では、ロシアの銀行と中国の国際銀行間決済システム(CIPS)を使った人民元決済をさらに広げる可能性もある。CIPSを使えば、ロシアの銀行や企業がCIPS口座を持つ銀行を経由して貿易代金や金融取引を人民元で決済することが可能になる。
⇒SWIFTから排除されたロシアだが、CIPSを使えば、そのダメージは相当軽減される。

「インドとの関係」・・・インドは国連のロシア非難決議は棄権
◎2021年末 印ロ首脳会談 「平和・進歩・繁栄に向けたパートナーシップ」(共同声明)
(内容)
・2025年までに両国間の貿易額を3倍以上の300億ドルまで拡大
・貨物通関の合理化⇒認定事業者制度(AEO)制度の協議
・二国間投資協定の早期合意を目指す

「中東の産油国」との関係
・中東の産油国も今回の対ロ制裁やエネルギー政策をめぐって、米欧とは協調しない姿勢を示している。

このように、今にもロシアが破綻し、プーチン大統領に対するクーデターが起こり、悪魔プーチンが退陣しそうな日本メディアの論調とは、かなり様相が違うと言う事を認識しておく必要がある。

☆プーチン大統領の真の目的

このように見てくると、おぼろげながら、プーチン大統領の狙いが見えてくる。彼が考えているのは、戦後世界を支配してきた欧米(特に米国)の支配体制(覇権国家たらしめる制度・仕組み)に対する挑戦であろう。

◎「ブレトンウッズ体制」=アメリカ支配の仕組み
第二次大戦後、ブレトンウッズ協定により確立した体制。
金本位制⇒ドル本位制
第二次大戦までの国際通貨は、金だけ。それをドルを基軸通貨とし、ドルも金も基軸通貨にした。わたしが中学生時代ごろまでは、1$=360円だった。
 これは、米ドルと各国通貨の交換比率=(為替相場)を一定に保ち、自由貿易を進展させる仕組み。
1$=360円という交換比率が、戦後日本経済躍進の原動力になった。

1971年 ニクソン・ショック
ブレトンウッズ体制の根幹は、ドルと金を交換できる信用が基本の体制。
ところが、米国保有の金が足りなくなった。(欧州への援助、ベトナム戦費など)
1971年8月15日→米ドル紙幣と金との兌換一時停止宣言。

◎ペトロダラーシステムは、ニクソン・ショック後、ドル基軸通貨システムを維持するため、アメリカが作ったシステム。
※世界中の原油はほぼすべてドルで決済されるというシステム。
 このシステムは、国際金融連合や軍産複合体がサウジアラビアを脅し上げて作ったシステム。(サウジ王家の延命を保証する)

◎ブレトンウッズ体制下の危機管理システム
・・世界中の各国政府や中央銀行がドルやユーロや円などの主要通貨の資産を外貨準備として持ち、自国通貨の価値が下がった時に外貨準備を売って為替相場を立て直して危機を逃れるシステム。
ロシアや中国の政府や中銀群は、ドルの口座を米連銀に持つ形でドル建て資産を米国に預託し、自国通貨の有事に備えてきた。外国の政府中銀が預託している資産を凍結しない不文律が、この制度を維持するために機能していた。・・田中宇の国際ニュース・・

このようにして作り上げられた世界の決済システムが、現在のSWIFT。これがあるから、米国が自分に敵対する国家に対して【経済封鎖】をすることができる。つまり、米国や西側世界に対する反対国家を抑え込むための最重要なツールであり、米国が覇権国家であり続けるための最重要なツールが、ドル基軸体制と言う事になる。今回もロシアの預託している資産を凍結した。これが、米国の覇権力の源泉。

しかし、よく見ればすぐ分かるが、ドルには金(価値あるもの)と交換できるという保証は一切ない。あるのは、米国と言う国家に対する世界の人々の信用だけであろう。米国は世界の人々に悪いことはしない。世界の人々に悪いことをする奴や国家は、米国が罰を与えてくれる。(世界の警察官)そういう信用があるからこそ、ただの紙切れに過ぎないドルが、世界の基軸通貨として通用したのである。

◎ロシアが仕掛ける通貨戦争

その信用が揺るぎ始めたのが、最近の米国のありよう。基軸通貨としての米ドルの権限を悪用し、米国支配に反対する国々を「経済封鎖」し、その国の民衆を塗炭の苦しみに追いやり、政権交代に追い込む手口が目に余り始めた。

米国の力が相対的に弱まり、中国などの台頭が顕著になり、世界が多極化し始めた昨今は、ドルの基軸通貨としての地位が揺るぎ始めた。もし、ドルが“基軸通貨”の地位を失うと、ドルは、円や人民元やユーロなどと同じ。ただの地域通貨になり、米国の覇権は一気に揺らぐことは必至。プーチン大統領の本当の狙いは、ここにあると考えるのが至当だろう。

田中宇などは、ウクライナ東部のドンバス地方だけの侵攻だけなら、ここまで徹底した【経済制裁】はなかったはず。それを承知のうえで、キエフなど全面侵攻した。いきおい、欧米側が徹底的な経済制裁をせざるを得なくなった、と書いている。彼が言いたいのは、これはプーチン大統領の意図的な作戦だ、と言う事である。

結果、世界は二分される結果になった。
【A】=金融で世界を支配してきた上位の米国側(西側)・・西側先進国(G7など)
【B】=新興諸国、現業諸国、現物コモディティ(石油・天然ガスなどの原材料)産出国・・・・非米諸国

ロシアのウクライナ侵攻に対して国連の非難決議には賛成したが、経済封鎖に賛成した国は、48ケ国にとどまっている。明らかに【A】の国以外の非米諸国は、経済封鎖に参加している国は少数。【A】支配の世界秩序に対する叛乱である。つまり、戦後世界の秩序だった米国主導のドル支配(ブレトンウッヅ体制)に対する叛乱である。プーチン大統領の真の狙いはここにある。

☆ロシアの石油・ガスに対する支払いをルーブルにする大統領令署名

これまで、欧米各国の経済制裁に対し目立つ対抗策を取ってこなかったロシアだが、ついに欧米諸国の経済制裁に対するロシア(プーチン大統領)の反撃の第一弾が発表された。

石油・ガスに対する支払いをルーブルにする大統領令にプーチン大統領が署名した。経済制裁に参加している西側諸国に対し、4月1日以降、ロシア(国営ガスプロム)から天然ガスを輸入する際には、ロシアの通貨ルーブル以外では売ってもらえなくなる。
      
◎経済制裁に対するロシアの視点
2014年 ウクライナの政権転覆→ロシア敵視の米国傀儡政権がウクライナを支配。→これは、ロシアに対する戦争行為。→ウクライナ侵攻=ウクライナを中立国に戻す=ロシアにとっては正当防衛。

欧米(西側)の経済制裁=不当行為

ロシアがドルやユーロを使えなくなるのは不当→石油やガスをルーブルで払わせる=正当防衛

※影響
米国→輸入量が少なく影響小。ドイツ・フランス・イタリアなどEU→影響大。

ドイツなどは、ルーブル支払いを拒否しているが、これがいつまで続けられるのか。一年も止められたら、EU経済がどうなるか。きわめて深刻な事態になることは間違いない。ここ数週間何が起きるか。注視しておく必要がある。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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