燃えろ!名札部!
第八話 【やさしい飾先輩】
「いやぁ、一時はどうなることかとビックリしましたね~。」
飾(かざり)先輩は、名札部の中では、もっともやさしい、面倒見のよい先輩だ。先輩の家は、カレー屋さんで、時々おじゃまして、名札のことについて教えてもらう。今日も、これから先輩の家に行くところだ。
「ああ、まさか、オズマくんまで名札部に入って来るとは思わなかったなぁ。(笑)」
そうこうするうちに、《オリエンタルな味と香りの店・ポレポレ》というカレー屋さんについた。
「ただいまぁ。」
「ああ、玉三郎かい?アンタいつまで名札なんかにうつつを抜かしているつもりだい!ちったぁ家の手伝いもしとくれ。」
「ああ、わかったよ。でも、今日は、後輩が一緒なんだ。また今度ね。」
二階の部屋に行くのに、階段を上がる。
「まったく、体ばっかりでかくて、なんの手伝いにもなりゃぁしないよ、まったく!さっさと名札なんかやめちまいな!」
「なんか、あんまり名札のことよく思われてないみたいですね。」
「うーん。まぁウチの母ちゃんは、ああいう言い方をするんだよ。・・・でも、時々思うんだぁ、『大人になって、名札で食っていけるのかなぁー。』って。」
「大丈夫ですよ。先輩なら、アメリカのメジャーでだって活躍できますって!」
「ははは、ならいいけど・・・。ああ、そういえば、新しい名札買ったんだ。ちょっと見せてやろうか。」
「はい、今度はどんな名札買ったんですか?」
「ビックリすんなよ。松井モデルだぞ、しかも、ヤンキースバージョンだからMATSUIって書いてあるんだ。」
「すっげーカッコイイですね~。松井モデルの名札かぁ、僕も欲しいなぁ。」
「ちょっと取って来るから待っててくれ。すぐもどる。」
先輩は階段を降りていった。
タンタンタンタンタンドカドカドカダダダダーン!
「せ!先輩!大丈夫ですか!」
「わぁ~!」
トントントントントン!
「おい!ユウスケ!早くおりて来い!店にとんでもないお客さんだ!」
「どうしたんですか先輩!ちょっと!」
急いで一階におりると、店でカレーを食べているお客さんがいた。スラリと高い身長、ツンツンに立てた髪型、かっこいいレザージャケットを羽織ったその人は、後ろ姿を見ただけすぐにわかる!アメリカのメジャーナフダーのイチ口ー選手だ!
ゆっくりとスプーンを使い、がっしりした若い男の人と一緒にカレーを食べている。
飾先輩が勇気を出して尋ねた。
「あ、あのう、イチ口ー選手ですよね。僕、いつも応援してます!」
「こら!お客さんになんてこと言うんだい!すみませんね~、せっかく食事されてるところに。」
「いえいえ、お母さん、いいんですよ。慣れっこですから―――。そうだよ、僕はイチ口―です。」
「ほら!やっぱり!僕たちイチ口―選手の大ファンなんです!」
「僕たちもいつかはかっこいいメジャーナフダーになりたいって思ってるんです!」
と、アピールしている飾先輩の胸には、松井モデルの名札が光っていた。それを見たイチ口―選手はクスっと笑った。
「あ、君、名前はユウスケくんって言うの?」
「は!はい!五代ユウスケと言います!」
「君も、メジャーをねらっているの?」
「はい!」
そこでイチロー選手は、フッて笑った。その目を細めたまま向き直ってユウスケに話しかけてきた。
「ユウスケくん、僕らナフダーにとって名札は魂なんだ。僕も試合が終わった直後は、名札の手入れをかかさないんだよ。・・・ところで、君、その名札二回くらい洗濯しているね。(笑)それではメジャーはねらえないぞ。」
「すみません!気をつけます。」
そういうわけで、僕と飾先輩は、自分の名札にはイチ口―選手のサインをもらった。・・・んで、僕の名札は、ゴダイ イチローと書いてある。先輩のは、飾イチ口―になった。
【夜泣き屋】
http://naomi4388.hp.infoseek.co.jp/
第八話 【やさしい飾先輩】
「いやぁ、一時はどうなることかとビックリしましたね~。」
飾(かざり)先輩は、名札部の中では、もっともやさしい、面倒見のよい先輩だ。先輩の家は、カレー屋さんで、時々おじゃまして、名札のことについて教えてもらう。今日も、これから先輩の家に行くところだ。
「ああ、まさか、オズマくんまで名札部に入って来るとは思わなかったなぁ。(笑)」
そうこうするうちに、《オリエンタルな味と香りの店・ポレポレ》というカレー屋さんについた。
「ただいまぁ。」
「ああ、玉三郎かい?アンタいつまで名札なんかにうつつを抜かしているつもりだい!ちったぁ家の手伝いもしとくれ。」
「ああ、わかったよ。でも、今日は、後輩が一緒なんだ。また今度ね。」
二階の部屋に行くのに、階段を上がる。
「まったく、体ばっかりでかくて、なんの手伝いにもなりゃぁしないよ、まったく!さっさと名札なんかやめちまいな!」
「なんか、あんまり名札のことよく思われてないみたいですね。」
「うーん。まぁウチの母ちゃんは、ああいう言い方をするんだよ。・・・でも、時々思うんだぁ、『大人になって、名札で食っていけるのかなぁー。』って。」
「大丈夫ですよ。先輩なら、アメリカのメジャーでだって活躍できますって!」
「ははは、ならいいけど・・・。ああ、そういえば、新しい名札買ったんだ。ちょっと見せてやろうか。」
「はい、今度はどんな名札買ったんですか?」
「ビックリすんなよ。松井モデルだぞ、しかも、ヤンキースバージョンだからMATSUIって書いてあるんだ。」
「すっげーカッコイイですね~。松井モデルの名札かぁ、僕も欲しいなぁ。」
「ちょっと取って来るから待っててくれ。すぐもどる。」
先輩は階段を降りていった。
タンタンタンタンタンドカドカドカダダダダーン!
「せ!先輩!大丈夫ですか!」
「わぁ~!」
トントントントントン!
「おい!ユウスケ!早くおりて来い!店にとんでもないお客さんだ!」
「どうしたんですか先輩!ちょっと!」
急いで一階におりると、店でカレーを食べているお客さんがいた。スラリと高い身長、ツンツンに立てた髪型、かっこいいレザージャケットを羽織ったその人は、後ろ姿を見ただけすぐにわかる!アメリカのメジャーナフダーのイチ口ー選手だ!
ゆっくりとスプーンを使い、がっしりした若い男の人と一緒にカレーを食べている。
飾先輩が勇気を出して尋ねた。
「あ、あのう、イチ口ー選手ですよね。僕、いつも応援してます!」
「こら!お客さんになんてこと言うんだい!すみませんね~、せっかく食事されてるところに。」
「いえいえ、お母さん、いいんですよ。慣れっこですから―――。そうだよ、僕はイチ口―です。」
「ほら!やっぱり!僕たちイチ口―選手の大ファンなんです!」
「僕たちもいつかはかっこいいメジャーナフダーになりたいって思ってるんです!」
と、アピールしている飾先輩の胸には、松井モデルの名札が光っていた。それを見たイチ口―選手はクスっと笑った。
「あ、君、名前はユウスケくんって言うの?」
「は!はい!五代ユウスケと言います!」
「君も、メジャーをねらっているの?」
「はい!」
そこでイチロー選手は、フッて笑った。その目を細めたまま向き直ってユウスケに話しかけてきた。
「ユウスケくん、僕らナフダーにとって名札は魂なんだ。僕も試合が終わった直後は、名札の手入れをかかさないんだよ。・・・ところで、君、その名札二回くらい洗濯しているね。(笑)それではメジャーはねらえないぞ。」
「すみません!気をつけます。」
そういうわけで、僕と飾先輩は、自分の名札にはイチ口―選手のサインをもらった。・・・んで、僕の名札は、ゴダイ イチローと書いてある。先輩のは、飾イチ口―になった。
【夜泣き屋】
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