顕微鏡写真が溜まってきたので、今日も「虫を調べる」シリーズで出すことにしました。ハネカクシの仲間は見た感じどれもよく似ているので、なかなか手出しができませんでした。さらに、「日本列島の甲虫全種目録(2019年)」(以後、目録と略します) を見ると、日本産ハネカクシ科には21亜科405属2,383種43亜種もいるそうで、この数字を見てさらにやる気を失ってしまいました。でも、今年は虫の空白区をなくそうと思って、ハネカクシにもちょっとだけ挑戦しています。といっても、まだ21亜科ある亜科の検索だけですけど・・・。
今日の対象はこのハネカクシです。3月11日にマンションの廊下で見たハネカクシで、大きさは5-6mmと小さいのですが、比較的よく見かけます。亜科の検索はこの間試したハナムグリハネカクシと同様に、次の論文に載っている検索表を用いました。
A. J. Brunke and J. Klimaszewski, "Staphylinidae of Eastern Canada and Adjacent United States. Key to Subfamilies; Staphylininae: Tribes and Subtribes, and Species of Staphylinina", Can. J. Arthropod Identification 12, 1 (2011).(ここからダウンロードできます)
この検索表を使って調べてみると、この個体はヒゲブトハネカクシ亜科 Aleocharinaeになったのですが、その検索過程を写真で確かめていきたいと思います。
これはその過程を表したものです。拙い語学力で訳しているので、違っているところが多いと思います。そのつもりで見ていただけると助かります。ヒゲブトハネカクシ亜科に至るには上の7項目を確かめればよいのですが、そのうち、①、③~⑤はこの間と同じで外形的な違いから直ちに除外できます。今回は亜科に和名を付したのでさらに分かりやすくなったのではと思います。これらを部位別に見ていきたいと思います。
まずは全体像です。これは背面から見たもので、体長を測ってみると5.7mmでした。この外形から先ほど①、③~⑤は確かめられると思います。先日出した「虫を調べるハナムグリハネカクシの仲間」で画質を落とした図を載せていますので、参考にしてください。
次はこの間もあった上翅の隆起線です。"ridge"はもともと山の細い尾根を指しますが、ここでは隆起線と訳しました。いずれにしても上翅には特にそのようなものは見られません。
次は複眼に対する触角挿入口の位置です。これは顔を前面から写したものですが、かなりごつい顔をしています。ただ、挿入口の位置はこのようにちょっと斜め下から写した写真でははっきり分かりません。
それで、この写真は真上から写したものです。ついでに各部の名称を入れておきました。複眼の前縁が破線で表したところになるので、黄矢印で示した触角挿入口は明らかに後方にあります。これで⑦はOKです。
次は腹板の節数なのですが、腹側から撮るのを忘れてしまいました。それで、横からになるのですが、数えてみると全部で6節あるので、まあ、いいだろうと思っています。節の番号はこの間と同じで、次の本を参考にしました。
C. E. Tottenham, "Coleoptera Staphylinidae Section (a) Piestinae to Euaesthetinae", Handbooks for the Identification of British Insects Vol. IV, Part 8(a) (1954).(ここからダウンロードできます)
これですべての項目をチェックしたのでたぶん、ヒゲブトハネカクシ亜科は確かだろうと思っています。ただ、最初に書いた目録によると、日本産のこの亜科には107属372種1亜種もいるそうです。ちょっと信じられないような数ですね。属を調べるだけでも大変です。今回はここでストップしておきます。
「ヒゲブト」というので触角を拡大して撮ってみました。全部で11節ありました。
最後は腹部を背側から撮った写真です。次回検索するときに何かの役に立つかもと思って撮りました。
これで、4月になってからハネカクシの亜科の検索を2種行ってみたのですが、両方とも検索表の最初で決まってしまう種だったので比較的に楽でした。少しずつ種を増やしていき、少なくとも亜科くらいは見たらすぐに分かるようになりたいなと思っています。
雑談)今日投稿しようと思ったら、新エディターがあることに気が付きました。確かに、写真がそのまま見えるので、以前のTEXTエディターのようにプレビューにしないと見えないのと違って見直すときには格段に楽になりました。ただ、まだリンクの張り方がよく分かりません。それに、私はあらかじめ出す図全部にリンクを張った後にブログに貼り付け、その後に文章を書きこんでいるので、メニューが下にあるといちいち下まで探しにいかないといけないので、意外に不便です。折角、TEXTエディターに慣れてきたのに、また、こちらになれないといけません。(追記2019/04/08:新エディターから「公開する」を押したのですが、なぜか公開されません。それで、また、TEXTエディターに戻ってリンクを入れて再投稿です)
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