昨年末は「和風」で笑い納めいただきましたので、今年の年初めは「洋風」の笑いでいこうと思います。
過去2回、星新一氏の「進化した猿たち」(新潮文庫版 全3巻)をガイド役にアメリカの1コマ漫画をご紹介してきました(文末にリンクを貼っています)。久しぶりの第3弾で、アメリカ流の初笑いをお楽しみください。
まずは、「水晶玉占い」です(第1巻「水晶玉の周辺)。
" look into a crystal ball "( 水晶玉をのぞき込むー>将来(未来)を予測する)という表現があります。水晶玉に相談したり、頼りにしたりする人が多いんでしょうね。水晶玉を挟んでの人間くさいドラマが格好の漫画ネタになっています。
ジプシー風の占い師が、美人客に「あなたはまもなく未亡人になるでしょう」と告げている。その上で、「しかし、心配はいりません。判決は無罪になると出ています」なかなかのブラックです。
水晶玉ではありませんが、こんな巧妙な手口も。
「20ドルで2つの事柄にお答えします」との看板を出している占い師がいる。「20ドルも出して、2つだけなの?」と訊く客に「あとひとつ質問をどうぞ」
男の占い師が、美人客を相手に困っている。「気が散って、水晶玉に精神が集中できません」
もちろん、逆のシチュエーションもあります(こちらの方が多そう)。
美人の占い師が男の客に「水晶玉を見つめてください。私の胸でなく」とか「あたしのお尻に当てた手を放さないと、ひっぱたかれているあなたが見えます」
さて、私のお気に入りはこちら(各漫画のすぐ後ろに、キャプション(セリフ)を載せました。クイズ感覚で、予想してみてください)。
「こんなに面白いのははじめてよ。はやく見にいらっしゃいよ」
さて、オフィスを舞台にした漫画の中で、「提案箱」(Suggestions Box)が取り上げられています(第2巻「箱の効用」)。広く社員の声を聞くための仕組みです。今時は流行らない気もしますが、投書する側、受け取る経営陣の思惑が身につまされる部分もあって、テーマを成り立たせています。
オフィスに入った泥棒。「ドアの鍵は忘れずかけるよう提案します」との投書を入れている。まま、ありがちなパターンかも。
箱の中から、「社長は働きすぎです。たまには休養なさるべきです」との投書が出てくる。それを読んだ社長はうなずき、フロリダの海岸でのんびり。でも、自作自演だった、というのがオチです。社長思いの投書なんかありえな~い、とのメッセージでしょうか。
受け取る側の戦々恐々ぶりで笑いを取るのもお約束です。
提案箱を開けるとウィスキーが入れてある。しらふじゃ読めない、とばかり、それを飲み干しながら、投書に目をやる社長。見るだけでも良心的?
中身も見ずにゴミ箱行きというのはありがち。ゴミ処理会社の提案箱は、底がシュレッダー、というのがシャレて(?)ます。読むのが怖い経営陣を揶揄しています。投書箱の中から拳銃が出てきて、ギョッとする社長。ホントはこんな制度やめたいんだけど・・・そんな会社側の思いがひしひしと伝わってきます。で、お気に入りはこれ。上司らしき男のセリフは?
「どれもきみについてのものばかりだ」
最後は、ちょっとブッソーな拳銃がテーマです(第3巻「拳銃でひとこと」)。章の冒頭で、星がこんな「事件」を紹介しています。アメリカの地方都市の銃砲店で、客が銃を買う。そして、その銃を突きつけて、カネを奪って逃走した、というものです。重大犯罪でも何でもありません。でも、漫画では定番となっている手口を地でいったところにニュース性があった、との星の説明に納得しました。
「この店で買った拳銃だが、その時、一生もつと保証された。なのに、もう故障した」と客にねじこまれた店主。やにわに、その客を撃ち殺した。「客の一生」に辻褄をあわせた、いかにも漫画的な「解決」です。
「この拳銃は新品同様。前の持ち主は若く美しい、財産のある未亡人でした」と購入を奨める中古銃砲店の店主。どんないわれの拳銃かお分かりですか?
亭主を殺し、財産を相続するのに使った拳銃というわけで、1発売っただけの新品同様というのも道理です。
お気に入りはこちら。女性のキャプションを予想してください。
「美人に見えたの、お金持ちに見えたの?」
過去分へのリンクは、<第268回>と<第324回>です。合わせてご覧ください。
初笑いいただけたでしょうか?それでは次回をお楽しみに。