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第273回 「特殊古書店」の話

2018-06-22 | エッセイ

 私の唯一ともいえる趣味は、「読書」です。

 あくまで「読む」ために買いますので、古本の場合は、安くて、探しやすいのが一番。なので、チェーン系の新古書店とか、オンライン古書店に、もっぱら頼っています。

 また、若い頃は、読んだ本がなかなか手放せませんでしたが、今は、割合、さっさと手放してしまいます。いざとなればネット、という時代になって、身軽な読書生活です。

 一方で、世の中には、古書マニア、古本マニアといわれる人たちがいます。

 モノとしての本への情熱が溢れて、溜まるばかりの本との格闘ぶり、収集への飽くなき情熱が生み出す苦労話の数々・・・・「読むのが好き」というのが唯一の接点ですが、マニアの方々が書かれた本を、怖いもの見たさ、高見の見物、興味半分で「読む」のも、実は、私のひそかな楽しみ。 

 ひいきの古本ライターさんが何人かいますが、専業と言ってもいい岡崎武志さんの著書を、大阪出身ということでの親近感もあって、こまめにチェックしています。そんな彼が書いています。

  古本のこと、わかってねえなあと一発でわかるリトマス試験紙

  みたいなせりふがある。それは「買った本、全部読むんですか?」

  というものだ。いったい、これまで何十回、この言葉を浴びせら

  れてきたか。(「古本でお散歩」(ちくま文庫)から)

 1年間に古本だけで1000冊は購入するといいますから、そりゃ無理でしょうね。それでも買ってしまう業(ごう)の深さ・・・・う~ん、私とはやっぱり無縁の世界。

 さて、先日、新刊で、「無限の本棚」(とみさわ昭仁 ちくま文庫)を目にし、購入しました。

 約半分ほどのページが、自身のコレクター人生を振り返るのに割かれています。漫画、映画のチラシ、中古レコード、ジッポーライター、野球カードなど、モノは様々ですが、その徹底ぶりが興味をそそります。でも、一貫して集めてきたモノが「本」。で、その先にあったのが、古本屋の開業です。

 コレクターとしての活動の中で集まって来た本を中心に、仕入れて来た本なども加えて、2012年、「特殊古書店」(とみさわ氏自身の命名による)というジャンルの古書店が誕生しました。場所は、神保町交差点から徒歩1分。こりゃ行くしかないと、さっそく出かけてきました。

 細長いビルの4階がお店で、1階にはこんな看板が。


 こわごわドアを開けて、中へ。広さは8畳くらいでしょうか。正面と右手の壁一面がメインの本棚です(写ってはいませんが、左手の机に、ご本人が、パソコンに向かっていらっしゃいます)。


 アート、映画、アイドル、オカルト、エロなど「まともな」ジャンルも充実してますけど、著書を読んでの予想通り、そのユニークなジャンル分けにあらためて驚きました。
 
 まずは、「毛」のジャンル。「カツラー探偵が行く」「毛のない生活」「あなたの茶髪がアブナい!!」など。ご本人は、毛がふさふさなんですけど・・・

 「方言」というジャンルが目につきました。北海道から沖縄まで、各地をカバーしてるんですけど、メジャーな「大阪」が、残念ながらない!!(あれば、買ったのに)

 「お金持ち」「社長」なんてジャンルもあって、ご本人の志向、憧れなのかも。「奇人変人」コーナーには、ゴーストライターによる代作がバレた佐村河内守の本があって、思わずニンマリ。

 「人喰い」コーナーには、「裸族」「ニューギニア高地人」「アマゾンの女たち」など、おどろおどろしいタイトルが並んでいます。

 「尾籠(びろう)本」コーナーにあった「トイレは笑う」(プランニングOM編著 TOTO出版)を購入しました。古今東西のトイレにまつわるエピソードを集めた予想通りの「尾籠」な本でした。

 「いや~、予想はしてましたけど、ユニークなジャンル分けですねぇ。本の仕入れは、今も続けてらっしゃるんですか?」と訊くと、「最近は執筆の方が忙しくて、あるものを売るだけですね」
 「じゃ、書店としては、あまり儲かってないけど、作家業のほうで、なんとかやっていけてると?」
 「はっは、まあそんな感じですね」

 なんだか気になる本屋さんで、時々顔を出してみようと思っています。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。

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