How many rivers must I cross? I don't know...

幸せになりたくて川を渡る・・・

2017/07/02 南飛騨 益田川~ナイロンの勝利

2017-07-05 08:47:32 | 渓流釣り 釣行記(益田川水系)

僕がまだ20代の頃の梅雨は、前半はしとしと雨で後半は雷を伴う激しい雨という印象だった。
「やっぱり梅雨の後半は激しく降るね」という会話をしていた記憶がある。
30代に差し掛かり、嘗て嗜んだ釣りを再開してからは、それまで晴れか雨か程度でさほど意識しなかったその日の天気について、否が応でも気になるようになった。
以前とは梅雨が何か違うように感じるのだ。
世間でもそう感じている、言っている人は多かろうが、前半は空梅雨で後半は豪雨というパターンが多いと思う。

2017年の梅雨も前半の降雨は殆どなかった。
益田川は相当な渇水。
今シーズンの魚影の薄さと相まって非常に厳しい釣りを強いられていた。

そんな中で、一度だけ奥飛騨の高原川に釣行した。
例年盛夏の頃に通う高原川だが、川の状況確認のために6月に一度釣行することにしている。
2015年は芳しくなかった、2016年ははっきり「不漁」だと思った。
その2016年よりも良くないと、某所から情報が流れてきた。
オフィシャルではないにしろ、まず間違いなく漁協関係者と思われる方の言で「魚が少ない」というものもあった。

調査釣行をしてみたが実際その通りだと思った。
ヤマメだけでなくニジマスもウグイも少ないのではないかと感じた。
その調査釣行の際、これまで気にはなっていたのだが竿を出さないままだったポイントに入ったのだが、そこが案外好感触だった。
翌日の朝一番でもう一度入ろうかとも考えたが、なんとなくそこは朝一番よりも夕まずめの方が良いような気がして入らなかった。
次回、二日間続けての釣行の際、一日目の夕まずめに入ろうと考えていた。
そのような理由で、実は今回の釣行はずっと高原川に行くつもりでいたのだった。
天気予報をチェックしていると毎日目まぐるしく変わる。
週の初めの予報では、半ばに降雨があり、週末は持ち直すというものだったのが、週半ばは降雨はなく蒸し暑いだけで、金曜から週末にかけて激しく降るというものに変わっていた。

多分高原は無理だろう。
そう思っていたが果たしてその通りとなった。
あれだけ水が出ては釣りどころではない。
ここ何年かで一番の洪水だったと、高原川漁協のフェイスブック・ページ内で記述があったくらいだ。



2017年7月1日、僕は昼過ぎから益田川で竿を出した。
前日の降雨と、職場での飲み会の都合で、夜中から出かけるのはやめた。
所用を済ませ昼過ぎから益田川に向かったのだが、中山七里辺りの益田川の流れを見るとかなり茶色く濁っている。
下呂の街に近付くに連れ、少しずつ濁りは薄くなっていくものの、釣りにはならない濁り度合いだった。
そのままクルマを進めたがどうやら竹原川筋から強めの濁りが入ってくるようで、帯雲橋から上流の益田川本流は寧ろちょうど良い程度の濁りだった。
「今日は中山は諦めよう」。
そう考えた僕は下呂温泉街の上下流で竿を出したが、釣果はウグイのみだった。
今シーズンの益田川なら納得できるかなと思いながらも、この程良い濁りで何も出せない自身の腕や運を呪い、今シーズンの益田川を切なく感じた。
明日になれば状況は変わるかもしれないと淡い期待を抱きながら日帰り温泉に浸かり、僕はまた中山方面に向けて降っていた。
途中激しい雷雨に見舞われたが、下呂の街中を過ぎて中山を走る頃になると嘘のように降雨はなく、路面も乾いていたくらいだったため、「どうせ通り雨だろう」とあまり気にせずそのまま車中泊をした。




2017年7月2日、まだ空が暗いうちに目覚めた。
僅かに白んだ空と頼りない街灯の灯に浮かぶ益田川の流れを見ると、酷い濁りだった。
通り雨程度では済まなかったようだ。
これでは今日も諦めるしかないかなと意気消沈してきた。
もう一度クルマに戻って仰向けになり、何処に入ろうか思案し始めた。
ふと、長良川の白鳥辺りに行ってみようかという考えも浮かんだ。
今シーズンのサツキマスアングラーたちは相当辛酸を舐めた筈だから、この降雨による増水は絶好のタイミングだと考えるだろう。
それが普通だろう。
ならば、郡上のポイントを殆ど知らない僕は混み合うフィールドはやめた方がよさそうだな。
にわか仕込みにはよい釣りはできない日だろう。
そんなことを考えながら何処に入ろうか決めあぐねたまま、僕は再び眠ってしまった。

再度目覚めたのは既に空が完全に明るくなってからのことだった。
7時を回っていた。
もう一度未練がましく中山の益田川を流れを見ても、状況は夜明けの頃と変わらない。
到底釣りができるとは思えない。
上流に向かってみようか。
入る場所を決めかねたまま取り敢えずクルマを走らせた。

益田川沿いを上流に向かいクルマを走らせていると、昨日と同じように少しずつ濁りは薄くなっていく。
帯雲橋まで来てもそれは同じで、やはり益田川本流筋は程良い濁り、水位は殆ど上がっていない。
ところどころ鮎釣りで川に入っている人も居るくらいだった。
ゆっくり朝食を摂って着替えなどの準備ができるところが良いなと思い昨日と同じポイントに入った。
国道からは見えない少し奥に入った場所で、去年までの実績はあるが今シーズンは1匹もアマゴを出していない。
準備を終えて仕掛けを流してみても、ウグイの活性すら昨日より落ちているように感じた。
「こんないい濁りと水量で何もアマゴが出ないなんて重症だなあ・・・」と、一体次は何処に入ろうかと思案し始めた。

ふと、少し下流のポイントのことが脳裏を過った。
色々と理由があって、一昨年までは頻繁に入ったポイントだが去年は一度も入らなかった。
今シーズンも国道や橋の上から流れを見ていて入ろうかと思ったこともある。
もっと水が出た後なら期待できるのだが、この程度の水では望みは薄いだろうと諦めそうになったが、それでも何か気になり結局そのポイントに向かった。



 

2年振りに入るポイントは新鮮だった。
川底には人工構造物が入っており、底を取りながら流すのは至難の業だ。
底に入ったと思ってそのまま流せば、忽ちにしてコンクリートにハリスが擦れる、鈎先が擦れる、引っ掛かるということになる。
自ずと中層辺りに出ている高活性の魚を狙うことになる。
そしてその狙うべく筋は立ち位置から遠い。
水深や流れの関係でそれ以上は立ち込めない。
投餌点付近の表層の流れは早いものの、川底の人工構造物の影響もありすぐにその勢いが弱まる。
それでも尚、その緩くなった流れに乗って遠くまで流したい。
そのようなポイントで使う竿は勿論僕が所持する中で最長である10.5mの二代目エアマスター。
それに手尻を1m取った仕掛けを繋ぐ。
水中糸はナイロン。
緩い流れを少しでも遠くまで流すには、フロロよりも比重の軽いナイロンが好都合だと僕は考える。
更にその性質はフロロよりも伸びる。
遠くまで流すということは、思いっきり腕を伸ばして、竿を寝かせて、要するに下竿の状態になるまで流すということだ。
その状態で大物が掛かったとき、少しでも緩衝作用のある材質を用いた方が有利だとも考えている。
ただしハリスはフロロ。
コンクリートに擦れることを想定して、擦れに強い材質の糸を使いたい。


以前は事情があって小遣いが少なく、比重云々よりも単純に安価という理由だけでナイロンを用いていた。
しかしある程度自由が利く小遣いを持てるようになってからは水中糸にナイロンを用いることは限られた場面だけになった。
だから常に仕掛けの予備をストックしておくということはしていない。
ベストのポケットに入れておけば、立ち込み時や降雨で濡れることもあるかもしれないし、そうなると水分を吸って強度が落ちる。
2年振りに入るポイントで新鮮な気分になった僕は、早く仕掛けを流したいと逸る気持ちをぐっと堪え、丁寧に仕掛けを作ってから流し始めた。



初めは自身に近い筋から流し、少しずつ遠くの筋を探っていく。 
ある程度流すと、僕は益田川の流れに立ち込み更に遠くを探っていく。
もう限界というところまで来ると、上半身を屈めて腕を思いっきり伸ばし、これ以上は無理だというところまで遠くを流す。
しかし、アタリはウグイだけ。
時折尺近いウグイが掛かる。
その瞬間は激しく抵抗し首を振るため、一瞬アマゴと勘違いすることもある。
「あれ?今のはウグイのアタリだったはずだがえらく激しく引くなあ」と思っていると、急にへばってずるずるっと水中から引き上げられてくる。
「ああ、やっぱりウグイだ」。
これの繰り返しだった。


突如ガツーンと引っ手繰るようなアタリがあった。
あわせる間もなかった。
仕掛けを引き上げると、餌のミミズが齧られて残骸だけが鈎の軸に残っていた。
「ウグイじゃないな」。
そう判断した。
ただし、そんな派手なアタリは往々にして小物が多い。
或いは高活性でやんちゃなニジマスだろう。
とは言え、昨日も今日も脂鰭の付いた魚を獲っていない僕は正体を確かめたくてもう一度同じ筋を流した。
しかし、川からは何も返ってこなかった。
今日は川虫は採取していない。
手持ちの餌はミミズとブドウ虫。
しかし、ブドウ虫は持ってはいるものの殆ど使わない。
目先を変える程度にしか使わない。
むしろ僕はミミズのサイズや鈎への掛け方を変えながら流す方が有効だと考えた。
小さめのものを房掛けにする、2匹掛けで2匹目を鈎先から長めに垂らす、大きめのものをチョン掛けにしたり、ミミズ通しを使って掛けるなどしながらしつこく流してみた。
しかし、脂鰭を持つであろう魚からの反応はなかった。
あるのはウグイのアタリだけ。
見事にウグイだけ。
カワムツのアタリも無い。
少しずつ気持ちが萎えてきた。

 

僕は少し休んだ。
調子の良かった2014年のシーズンのことを思い出していた。
その頃は釣れない気がしなかった。
自分が見込んだポイントには必ず大物が着いていると思えた。
それが今はなかなかそうは思えない。
「どうせいい魚は出ないだろう」。
いつもそう思う。

あと少しやって今日は帰ろうかと考え、遠くの筋を流していた。
上半身を屈めて、腕を思いっきり伸ばした下竿の状態で、何の前触れもなく突如あたった。
ガツーンと引っ手繰るようなさっきのあのアタリだった。
今度はアワセを入れることができた。
正確に言うと「合わせた」「呼応した」という表現の方が適切だと思う。
竿は煽らなかった。
流れに合わせて仕掛けを送るのを止めて、両手で竿尻を握った。
ガツーンというアタリの後のその動作で、両腕にずしりと重みを感じた。
確実に乗った。
仕掛けが殆ど伸び切っていたため、鈎に掛かった直後に相手が水面に顔を出してもがいた。
僕は竿を更に寝かせ水中に相手を引き戻した。
ふと竿が軽くなるような感覚があった。
バラしたかと一瞬焦ったが、魚の方から水中に潜りこちらに近付いてきたのだと分かった。
僕は少し竿を立てて絞った。
そのまま自分の右斜め前方に弧を描くように導いた。
ある程度距離が縮まると、僕は竿尻の持ち手の上下を入れ替えた。
今度は自分の左斜め前方に向かって魚を導いた。
「導いた」と書いたが、そう簡単には寄せられない。
首振りは殆どなかったがズシリと重く底付近を這うように泳ぐ。
これはニジマスではない、アマゴのデカイやつだと確信した。
不用意に絞り過ぎて抵抗されても厄介だ。

こんなとき先代エアマスターなら、元から曲がるようなその調子で魚を騙すようにいなせた。
時間はかかるが、必要以上に魚を暴れさせず、魚自身も知らないうちにへばってきたなという感じで寄せられた。
しかし、二代目は違う。
竿自体は強くなった。
そのため先代の持っていた良い意味での「ぐにゃぐにゃ感」がなくなったため、調子に乗って絞ると魚が暴れる。
竿自体は綺麗な弧を描いて曲がっている。
しかし元竿と元上の長さが先代よりも増えているため、先代の調子に慣れていると、曲がる支点が穂先側に移動しているように感じるのだ。
「エアマスター」を名乗るのだから、先代も二代目も同じ調子だろうと決めてかかっていた。
でも実際は違うのだ。
二代目エアマスターでは先代と同じように絞ったり支えたりしていてはいけない。
このことは昨年までで充分承知した。
バラシたり糸が切れたりと、悔しい思いもした。
今シーズンの益田川、なかなかいい魚に出会えない益田川で、そんな失敗はしたくない。
竿を絞る力を慎重に調整しながら、僕は自分と魚の距離を少しずつ縮めていた。

岸近くの弛みに相手が入ってきた。
腰付近まで立ち込んでいた僕は、少しずつ水深の浅い岸辺に移動した。
そして岸際で水面から頭を出している岩の上に立った。
ここなら川面を見渡せる。相手の動きも見える。
思った通りだった。間違いなく相手はアマゴだった。
背が盛り上がっている。
逞しい体躯の雄だろう。
逃せない。
僕は岩の上から魚を寄せた。
手尻は1m。
相手の大きさ、重量・・・右腕を天に突き上げたとき、果たして左腕は魚に届くだろうか。
少し不安に感じながら至近まで寄せた時に玉網を差し出した。
その途端に相手が走った。
魚の目の前に急に網を差し出したのが良くなかったのだろう。
しかし、右腕の動きにある程度専念しないと、玉網を構えた左腕を差し出したままではこの手尻では寄せることはやはり難しい。

次で決めよう。
バラシは断じて許されない。
もう一度寄せてきた。
右斜め前方から魚を寄せてくる。
そのまま僕の前を横切らせようとする。
魚が自分の目前に来る少し前に玉網を水中で構えた。
右腕を自身の頭の真後ろまで引いたとき、左手の玉網で受けた。
入ったのは各鰭の先端がとがらない、パーマークが残る居付きの益田川本流アマゴだった。






 

釣り場でメジャーを宛がうと、体長は35cmだった。
その体長以上に、ずっしりと重い引きで楽しませてくれた。
昨日と今日で、君以外に会えたアマゴは居ないんだよ。
対峙してくれてありがとう。




先代のエアマスターを使っていたとき、「この竿でないと獲れなかった」と思えた魚はたくさんいた。
0.5号のハリスで45cmのアマゴを獲ったときにはそれを痛感した。
「これはエアマスターだから獲れた魚だな」と思った。

二代目のエアマスターを使い始めてからは、そう感じたことはこの日までなかった。
でも今日は感じた。
「この魚は、二代目のエアマスターだから獲れたのだ」。
あの遠くの筋まで届く竿が他にあるだろうか。
あの筋を狙うには、この竿でないと届かないのだ。
だから、元から曲がらない調子だから云々なんて言ってられない。
この竿で獲れるような仕掛けにしなければならないのだ。
だからナイロンなのだ。
水中をより遠くまで漂わせることができるだろうナイロン。
伸縮性のある素材であるナイロン。
下竿で腕を伸ばした状態で掛かったとき、それでも切れたりバレなかったのはナイロンの性質によるものだと思う。
今日の主役は竿、即ち二代目エアマスターだろうと思う。
それを支える名脇役がナイロンの水中糸だったのではないか。
フロロの方が優れているわけではない。
使い分けが重要だと思う。
思い返すと、ポイント選定、竿の選定、仕掛け選定、全てが首尾よく運んで獲ることができた魚だと思う。
偶然ではない。
「釣れた」ではない。
「釣った」「獲った」魚だと思う。
自身で凄く満足して達成感のある釣りができた日だった。





【釣ったときのタックル】

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスター 105M

水中糸:ナイロン(岩太郎) 0.8号

ハリス:フロロ(シーガーエース) 0.6号

鈎:オーナー スーパーヤマメ 7.5号

餌:ミミズ

 

 

 


2017/06/10 南飛騨 益田川  スロースターターの解禁

2017-06-21 23:52:09 | 渓流釣り 釣行記(益田川水系)

とにかく釣果を出したい頃があった。
自分もそれなりの腕前の釣り師だと納得したくて堪らなかったのだろう。
そのための実績作りに躍起になっていたのだろう。
簡単に言ってしまえば「粋がっていた」のだろう。
何と青かったことかと振り返らざるを得ない。

でもそれも悪いことばかりではなかった。
魚という相手のあることとは言え、必死になって釣果に繋げようとしていると釣り方のアイディアが色々と浮かんでくる。
試行錯誤しながら「この釣り方でも食うんだな」「この仕掛けでも食うんだな」と発見したり体得したことは今も役立っていることが多い。


昨年辺りから、釣果そのものにはあまり拘らなくなってきた。
単純に「大物が狙えるポイントが河川改修で潰れた」とか、「大物が狙えるフィールドが不漁だった」ということで諦めざるを得なかった部分もある。
更には予想外に仕事が立て込んでおり、早い時間の帰宅が叶わないことが多かった。
率直に言って疲労が溜まる。
金曜の夜から出かけて土曜は終日竿を振るというような釣りが、年齢も相まってできなくなってきた。

逆に拘るようになった部分もある。
「ここだ。ここに大物が着くはずだ。」
「ここに着かずに何処に着くというのだ」
「ここで大物を掛けたい。ここで掛けなければ意味が無い。」
というように、自分が見込んだポイントで大物を獲るということに拘り始めた。

以前は拘りが無かったわけではない。
そのシーズンの最初からという長期的なスパン、1週間から10日間という中期的なスパン、1~2日という短期的なスパン、これらのスパンで見た季節の変化、気候の変化、気温の変化、それらから予測する水温の変化。
そのようなトレンドと釣行当日の天候や水況を考察の要素として、朝一番に入るポイントから夕まずめに入るポイントまでの順序を思い描き、それぞれのポイントで「一番大きいやつ」を獲りたいと考えていた。
このフローを経ないで竿を出すことは認めたくなかった。
必ずこの考察を経て川に降り立ちたいという拘りを持っていた。
魚との出会いは一期一会だ、二度と同じコンディションの時に竿は出せないという認識で、川に降り立っている時間を大切にしたかった。


それが少し変わったのだ。
水況や天候が多少思わしくなくても構わない。
自分が見込んだポイントで大物を掛けたい。
だから、僕はここで竿を出す。
そんな思いで竿を出すことが多くなった。

勿論いつもそんなストイックな思いで釣りをしているわけではない。
「あっ、あそこがよさそうだな」と目に着いたポイントには入りたいと思う。



2017年6月10日。
この日は午前中は拘りのポイントで竿を出し、午後は気になるポイントを回り、夕まずめにまた拘りのポイントに戻ってきた。
拘りのポイントはある一定区間の流域内に何箇所かある。
優劣は特にない。
間違いなくこの一帯には大物が居る筈だと思い、いつも順繰りに竿を出している。
時には別の釣り師が竿を出していることもある。
当然のことながら塞がっていればその区間の別のポイントに入る。


少し上流域で竿を出していた僕は16時くらいに戻ってきた。
今日の流れでは当初入ろうと考えていた目当てのポイントは少し釣りにくかった。
僕はその一つ上流の深瀬とも淵ともつかないようなポイントで竿を振っていた。

梅雨入りしたとはいえ降雨は殆どない。
魚はかなりスレてきている。
シーズン当初から感じてはいるが、今年はアマゴの数が少ないように思う。
この日も夕刻までの釣果はアマゴがたったの2匹。
それに引き換えニジマスは5匹。
アマゴは稚魚を放流しているはずだ。
ニジマスは釣り堀から落ちてきた個体だけだと思う。
でも、釣行の度に毎回のようにアマゴよりもニジマスの方がたくさん釣れる。
何かの理由でアマゴが少ないシーズンなのだと思うしかない。
多分、一昨年までの自分なら耐えられなかった。
いや、去年でも最終的には逃げ出しただろう。
事実、毎年盛夏の頃に足しげく通う高原川は、あまりにもの釣れなさに辟易して行かなくなった。
禁漁前の最終の釣行可能な日も僕は益田川に来ていた。

今シーズンはまだ逃げ出そうとは思わない。
長く釣りをやっていればこんなシーズンもあるだろう。
これが毎年になると辛いが、釣れないシーズンにも竿を出して、釣れない原因を探ってみても悪くはないとさえ思えるようになった。
しかし釣れないよりはやはり釣れた方が良い。
率直に言って嬉しい。
だから僕は日没まで1時間半という頃、望みを託してまたポイントを移動した。


昼前後に竿を出していたポイントに、夕闇迫る益田川のとあるポイントに僕は再び降り立った。
流れの押しは相当強い。
そして水深は深いところで6mはある。
場所によってはそれより深いだろう。
底波に入れないとあっという間に水勢に仕掛けが押されていく。
底波に入れても上層中層を垂れている糸が押されて餌が底波から浮いてしまいそうだ。
僕はゴム貼りガン玉のB号、5B号に更にナツメ型のゴム貼りオモリの1.5号をつけて「ドボン」という音とともに益田川の流れに投餌していた。


流芯の脇は流れがあまりない。
ウグイやカワムツなど雑魚の巣窟の様相で、餌が脇に逸れると忽ちにして雑魚たちが喰らい付く。
僕は流芯とその脇の境目辺りを流す。
先ずは手前側の境目。
自分よりかなり上流に投餌しないと、底波に入るまでの距離が相当必要だった。
流芯ど真ん中の底波も流してみる。
底波に入ると明らかに流れが遅くなる。
そして竿を持つ手許に感じる抵抗もぐっと重くなる。
これで底波に入っていると判別できる。
いや、正確に言うと「判別できたと思っている」のだが。
そして流芯の向こう側の境目も流してみる。
しかし、脇に逸れた時にウグイが食ってくるだけだ。


ある程度流して僕は一旦竿を上げた。
少し下流に立ち位置を変えた。
水勢は若干弱まり、流れは開きにかかる。
先程と同じように僕は自分よりもかなり上流側に投餌し、ちょうど自分の正面辺りで底波に入るように流していた。
いつもなら、目一杯下流側に竿を向けるまで流しているが、今はそれは避けた。
仮に目一杯下竿になったときに大物が掛かっても、この水勢では伸されるだけだと考えたからだ。
下流側に竿を45度も向けないうちに竿の送りを止めた。
強い水勢に上層中層を垂れる水中糸が押されて、餌が少しずつ浮かび上がる。
水勢は強いが、装着したオモリも相当重い。
イメージとしてはフワーッと餌が浮かび上がる様を演出しているつもりだった。

この夕まずめ、水面付近には羽虫が飛び交っている。
それを狙うウグイやカワムツなのか、雑魚たちがライズしている。
もしかしたらその中にアマゴも居るかもしれない。
ライズはしないまでもアマゴたちの意識は水面に向いている可能性は高いと思う。
いや、でも大物は底に居る筈じゃないのか。
とは言えさすがに活性の上がる夕まずめには意識は水面を向くのではないか。
いやいや、大物は虫なんか食わないんじゃないか。
なんだかんだと言いながらも、水深のあるポイントでは底からふわっと浮かび上がらせる演出によって、全てのタナを探ることになるのではないか。

夕闇迫る益田川で僕は流芯の向こう側に、自分よりもかなり上流側に投餌した。
重いオモリのため自然と仕掛けは手前に寄ってくる。
流芯の向こう側の緩流帯から流芯との境目を斜めに横切るように仕掛けは流れてきた。
ちょうど自分の正面辺りで底波に入る。
そのまま仕掛けを流す。
竿の送りを止めて仕掛けが浮かび上がってきたとき、何の前触れもなく突如「ゴンゴン」という引っ張るような明確な強いアタリがあった。
アワセを入れると激しい首振りの後に下流に向けて疾駆した。

間違いない。
そのシャープな引きはアマゴだろう。
僕は足場の悪い岩盤を一歩ずつ降って行った。
それ以上は行けないというところで少し強めに竿を絞った。
こんなとき、先代のエアマスターなら元上から曲がってくれただろう。
しかし今握っている二代目のエアマスターは違う。
全体的にシャキッとして強くなったが、元上の更に上が支点なっているように感じる。
さほど大きくはない、恐らく尺前後の個体だろうが「あまり無理はできないぞ」と自身に言い聞かせるように確認しながら竿を絞る。
水勢が強いためか、竿を絞ると魚が浮き上がり水面付近に顔を出した。
「さあ、バラしましょうか」と言わんばかりのお粗末な遣り取りになりかねない。
僕は敢えて少し絞りを緩める。
同時に竿の角度を少し寝かす。
寝かせ過ぎて水面に着くとその流れの強さに竿を持って行かれる。
慎重に魚を騙すようにいなしながら流芯の下を潜らせようと試みた。
狙い通り相手は潜行を始めた。
ゆっくり、ゆっくり流芯を潜る。
よしっ、流芯を抜けたと感じ取ったとき、思い切って竿を煽り、岸辺のワンド状のところに放り込むように魚を引っ張った。
相手はワンド状の溶存酸素の少ない水の中でひとしきり尾を使い、首を振り暴れる。
どさくさに紛れてワンドから飛び出したが、直ちに僕が竿を絞ると、そのまま素直に岸に寄ってきた。
右腕を天に向けて、尚相手を寄せる。
左手で腰から玉網を抜く。
水面に差し出して相手を待ち構える。
右腕を引き上げて相手を玉網に導き入れた。









夕闇せまる中での撮影のため、うまく写真に収められなかったが、非常に銀の強い体色だった。
更に体高もとても豊かで、メジャーを宛がうと体長は30cmだったが、取込んだときは33~34cmほどはあると錯覚したほどだった。


撮影を済ませ僕は竿を畳んだ。
自力でしっかり泳げることを確認し、僕は彼を流れに返した。
この厳しい状況の中で相対してくれて感謝していた。
ありがとう。
いつもなら「もう釣られるなよ」と思うが、厳しそうな今シーズンは違う。
「秋に、もう一度会えたらいいな」。
そんな贅沢なことを望んでしまう。


自身が主に通う釣り場は、解禁当初から尺ものが出るようなところではない。
だから自ずと尺アマゴを最初に獲るのも6月以降となることが多い。
正直なところ、スロースターターだと思う。
でもそれは仕方ない。
居住地の条件なのだから。
今シーズンはスロースターターどころではないかもしれない。
数えるほどしか尺アマゴは釣れないかも知れない。
腐らずに楽しもう。
釣れないシーズンは、何故釣れないシーズンとなってしまったのか。
それを考えるのも悪くはないと思いこむようにしよう。

 

 

釣ったときのタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスター 105M

水中糸:フロロ 0.8号

ハリス:フロロ 0.6号

鈎:オーナー サクラマススペシャル8号

餌:ミミズ

 

 


2017/05/28, 06/03 南飛騨 益田川にて ~飛騨の川 美濃の川 思いを馳せる(後編)

2017-06-12 02:28:59 | 渓流釣り 釣行記(益田川水系)

 

鋭意執筆中。

暫しお時間をください。

乞うご期待。

 

 

と書いたものの、書こうとしている内容を一言で言うと、「今シーズンの飛騨の川は押し並べて不漁だと思う」ということです。
その根拠が、自身の実釣果、考察、経験からの推察等々ならばここで公開しても構わないのだが、人様に提供して頂いた情報を元にした考察もある。
SNSやブログ等で仕入れた情報(中には漁協関係者と思われる人物の述懐もある)やトラウトを20年やっているという地元釣り師からの情報等、かなり信頼できそうな情報もある。
しかし、特に後者の方はご本人の好意によって僕に提供して頂いた情報なのだ。
ポイントや着き場をピンポイントで公開するわけではないのだが、やはり釣り場で仕入れた情報をインターネット上で公開することはしたくない。

そのような理由で、途中まで書き進めたもののここはやはり公開を見合わせます。
分水嶺は隔ててはいるものの、恐らく益田も高原も今シーズンは良くないと思います。
高原と合流する宮川はわかりません。
普通に考えると同水系なので高原が悪いと宮川も悪いかもと考えがちですが、流域の位置関係で宮川は例年通りだけど高原と益田がよくないということも有り得ると思っています。





とは言え、ダメだと思いながら釣りに出かけるのも辛いものがあるので、嬉しい誤算に期待しながら通います。
以前のように、釣果を出すのに躍起になったり、血眼になったりということは最近はありません。
相変わらず週末の釣行の内に1本は尺を出したいなというのはありますが、それよりも今は「ここで掛けたい。ここで獲りたい。ここで獲らなければ意味がない。」というように、自身が見込んだポイント、見定めたポイントで大物を出すということに拘っています。

それには当然センスというか目利き度合いが重要ですが、たまたま運良く大物が掛かったということもあるかもしれません。
特に週末しか川に立てない僕のような接し方では運にも味方をしてもらわなければならないと思います。

でもその運の良さは、「何も考えずに竿を出していた時に、たまたま大物が通りがかって餌を口にしたとか、たまたま大物が入ってきた」という運の良さではなくて、「魚にとって居心地が良いから大物の着き場になるポイントだ」と目を付けた上で、「ちょうどそこに大物が入っていた」ときに僕が竿を出したという運の良さであって欲しい。

そういう場所が数箇所ある。
昨年はそのうちの幾つかで狙い通りの魚が獲れた。
大本命でまだ獲っていない。
出水などで流れが変わるとか、そういう不可抗力のアクシデントが起こらないうちに獲れたらいいな。

 

 

 

 

 

 


2017/05/27,28 南飛騨 益田川にて ~飛騨の川 美濃の川 思いを馳せる(前編)

2017-06-07 01:06:51 | 渓流釣り 釣行記(益田川水系)

益田川漁協管内で初めて竿を出したのは2007年の小坂川だった。
当時の僕は自宅から1時間余りで辿り着ける岐阜県の恵那市南部を流れる上村川に通っていた。
ホームリヴァーは?と問われたら「上村川だ」と答えていた。
南信州を流れる遠山川の支流にもその名を「上村川」と冠する川がある。
恵那の上村川からは国道418号線を辿って至近まで行くことができたため、僕はその道筋を「上村ライン」と勝手に呼び、二つの上村川で渓魚を狙うことを「上村ロマン」と喚いていた。
事実それくらい上村川に惚れこんでいたのだ。

これがその恵那の上村川の流れなのだが、本流でも7.5mのダイワの本流竿、初代の「琥珀本流ハイパードリフトサツキ75SC」で事が足りた。



2007年に本格的な本流釣りを経験しないままに長良川でサツキマスを狙い始めた。
すぐに「暴挙」「愚行」だと悟り、先ずは本流でまともに釣りができるようにしなければと思い直した。
さて、それでは僕は一体何処の川で経験を積んでいけばよいのかと思案した。


その何年か前に釣り以外の所用で訪れた飛騨川の本流を思い起こした。
「かなり濃い緑に着色していて透明度は低かったな。
上村川のように透明度の高い本流なんてないだろうな。
あっ、ちょっと待てよ、飛騨川って、益田川のことじゃないか。
小坂川は益田川の支流だったよな・・・どうしようかな・・・」


その当時の僕は、勿論全てではないが釣った魚を持ち帰って食べていた。
だから色づいた水の本流で釣った魚より、清廉な透明度の高い流れの支流や渓に入ることが多かった。
「小坂は支流だな。でも、本流竿で釣ったって、あのおじさんは言ってたなあ。」

妹の友人のお父上が釣りをする人だった。
2006年の7月、僕が上村川で尺アマゴを獲った同じ日、その父上が雨後の増水のおかげだといって、36cmのアマゴと40cmのイワナを小坂川で釣って上機嫌だったと、友人から聞いた妹が僕に伝えてくれた。
「小坂にはそんな大きなアマゴが居るんだな」。
その記憶と憧れは1年後も僕の中にそのままあった。

一度行ってみよう。
この目で小坂川を確かめてみよう。
是非ここで釣りをしたいと思ったら通ってみよう。

以来僕は毎年欠かさず益田川漁協の年券を購入している。



小坂川もよい川だった。






上村川が釣れなくなってからはホームリヴァーは「小坂川」だと思っていた(自宅から120km離れているが)。
それが2014年を最後に小坂もすっかり釣れなくなってしまった。
川虫が全然いない。
あれでは渓魚が育たないだろう。
本流竿の振れる支流。
渓流をそのままスケールアップしたようなダイナミックな流れ。
豊富な水量と豊かな餌。
アマゴが大きくなる要素は揃っていると思っていた。
パーマーク付きの40cmオーバーの個体が居る筈だと思って、当初は益田川本流ではなく小坂川に主に通っていた。


次第に釣った魚を持ち帰って食べるということが殆どなくなった僕は、大物と出会う確率を高めようとして、益田川本流でも少しずつ竿を出すようになった。
今では完全に益田川本流が僕のメインのフィールドとなった。
「ホームリヴァーは益田川です。中でも中山が好きです。ただし盛夏の頃だけは高原川に避暑に出かけます。」

 

 

前置きが長くなった。
そんな益田川で、僕がここ何年か足しげく通うポイントがある。
絶対に大物が着くはずだ。
着いて欲しいという希望も抱きながらそう思っている。
ここに着かなくて一体何処に着くのだというくらい惚れこんでいるポイントがある。
でも、自分の実績ではアマゴの大物は獲れていない。
ニジマスだけだ。
それでも腐らずに通っている。
でも、釣れない。
今シーズンは特に渋いと感じる。
最初は今シーズンは季節の進み方が遅いためだと思っていた。
水温が例年よりも低いなと感じていた。
しかし、いつまで経っても釣れる気配がない。
これは他に理由があるのではないか。
そう思い始めたものの、2017年の5月の最終の週末は益田川で竿を振っていた。


 

2017年5月27日、早朝から益田川の広大なポイントで竿を振っていると、漁協の監視員さんに声を掛けられた。
二言三言と言葉を交わした後、監視員さんが別のポイントで釣ったというアマゴの画像を見せて頂いた。
その画像に見覚えがあった。
益田川釣り情報のブログ主さんだった。

短い時間だったが、有益なお話をさせて頂いた。
地元民でない僕は「益田川釣り情報」は大変ありがたく釣行時の参考にさせて頂いている。
いつか川でばったりお会いするだろうとは思っていたが、やっとその機会が訪れた。

当日は漁協の用事がおありだということで、話を切り上げぼくはそのまま暫くそのポイントで竿を振っていた。
しかしやはりこのポイントも厳しいとのことで、もっと上流がよいとアドバイスを頂いた。
ある程度まで竿を振ったが、アマゴは1本も出なかったので、僕はアドバイスに従いポイントを移動した。

先程まで竿を振っていたポイントよりも少し上流の橋の下にあたる。
5月上旬にこの橋の上から川面を眺めたときにも、数匹の20~25cmほどの魚影を見た。
しかしアマゴではないだろうと思っていた。
場所からするとニジマスだろうと考え竿は出さなかった。
すぐ上流の釣り堀から逃げてきたのだろうと見向きもしなかった。

今日の同じポイントは、昨日の降雨の影響で薄めの泥濁りだった。
薄めと書いたが「いい感じに濁ってくれたな」というレベルは遥かに超えている。
食いが渋いのはこの濁りのせいかもしれない。

橋の脇から河原に降りて竿を振る仕度をした。
濁りのせいで川底は見えない。
水深は全く読めないどころか、何処に岩が入っているのかも分からない。
当然餌を流すタナも当てずっぽうだ。
そのような状況の中で、「浅めだろう」と思われるタナで、「ここに岩が入っているだろう」と思われる筋を流した。
ひと流しめで23cmくらいのアマゴを釣った。
アドバイスの通りだなと思った。
できればそのままそこで何匹かアマゴを出したかったが、その後はニジマスのみだった。

 

僕は更に上流に移動した。
瀬があって、川幅が狭まる辺りで段差となって一段落ちる。
流れの芯はそのまままっすぐ進み正面の岩盤にぶち当たる。
右岸側に別れた流れは渦を巻いてちょっとしたワンドのようなものを形成している。
左岸側の流れはそのまま岩盤伝いに下流へと向かう。
大物が着いているのは間違いなく岩盤前のブッツケだろう。
ブッツケの底近くに定位しているのだろう。
表層から中層にかけての段差からの強い水勢の流れの下で、流下する餌を待ち構えているに違いない。
そう思ったが、仮に掛けたとして左岸側の岩盤伝いに降られたら、そこに着いている魚を散らしてしまうことになる。
先ずは岩盤沿いに流してみよう。

しかし掛かったのはウグイと20cmに満たないニジマスだけだった。
かなり確率は高いだろうと思った。
ブッツケ前の底にデカイのが居ると踏んだ。

B+3B+5Bのオモリでブッツケ前の底に仕掛けを送りこもうと試みるが一向に入って行かない。
恐らく底に到達する流れの筋はあるのだろうが、うまくその流れに送りこめないのだ。
何度も繰り返すうちにそこに居るだろうデカイやつに警戒心を与えるのも避けたいと思い、まだるっこしいことも手伝って「おまえはバカ者か」というくらいのオモリをつけて投餌した。
B+5Bにナツメ型の1.5号のオモリを付けると、「ドボン」という音とともに段差直下の白泡に仕掛けは飲み込まれ、そのまま「脇目も振らずに」という表現がぴったりのように、一直線にブッツケ前の底に餌を送り届けてくれた。
案の定ククンと穂先まで伝わるようなアタリがあり、すかさずアワセを入れた。
掛けた魚は予想通り左岸側の岩盤伝いに降った。
力強い引きだったが残念ながら尺はないだろうと遣り取りしながら予測した。
ひとしきりローリングしながら岩盤伝いに降るとトロ場まで流れてきた。
トロ場で暫し遣り取りすると、素直に寄ってきた。

 



予想通り尺には届かない27cmのアマゴだった。
少し残念だが、このサイズが出て安心したのも事実だった。

 

【釣り上げた時のタックル】

シマノ:スーパーゲーム刀 NI MH90
水中糸:フロロ 0.6号
ハリス:フロロ 0.5号
鈎:オーナー スーパーヤマメ 7.5号
餌:ミミズ




その後上流に向けて移動しながら何箇所かで竿を出したが、アマゴを出せないポイントもあった。
出せたとしても1匹だった。

渋いなあ。
なんでこんなに渋いんだろうな。
もしかしたら着き場が変わったのかな。
だとしても、「去年はアマゴを出せた着き場ではあるが、今年は全く着かなくなった、だから鮭一には殆ど釣れない」ということがあるだろうか。

釈然としないまま日没を迎えその日の釣りを終えた。
日帰り温泉に浸かり、翌日の釣りに備え車中泊で朝を迎える支度をして眠りに着いた。

~後編に続く 2017年の飛騨の川はどうなるのか

 

 

 


 

 


2017/05/06 南飛騨益田川 季節は暦に追い付けず

2017-05-11 00:20:39 | 渓流釣り 釣行記(益田川水系)

例年ゴールデンウィークは1日だけ益田川で竿を出し、他は全て長良川に立とうと決めているのだが、今シーズンは違った。
長良川のサツキマスはあまりにも見込みがない。
遡上が遅いだけなのか、いや或いはそもそも遡上が少ないのか、とにかく芳しい釣果を聞かない。
「今年は益田で通そう」と決めて、益田川漁協、益田川上流漁協管内の益田川で竿を出していた。


しかし、益田も渋い。

事前情報で渋いだろうとは思っていたが、案の定予想通りだった。
まず例年に比べて水温が低いように感じる。
いや、勿論アマゴが活動する水温なのだが、例年の同時期より低いということは、アマゴたちの動きは実際の暦よりも幾分前の動きに近いのだろう。
一箇所で何匹も出てきてもよいポイントで1匹か2匹程度しか釣れないし、体長も小さい。

益田川には全域で大小数々のダムがあるのだが、益田川漁協管内にも幾つかある。
即ち取水と放水を繰り返すのということになるため、上流で取水した川の水を導水管で運んで下流で放つ。
要するに放水の影響下では本来のその辺りの流域よりも川の水温が低くなる。
そのような放水の影響下のポイントでは顕著にアタリが渋かった。

このような水況でも釣る人は釣るのだろうが僕にはそんな技術はない。
例年のゴールデン・ウィークのつもりでアマゴたちに遊んでもらおうと思ってやってきたが宛てが外れたということだな、今シーズンはまだ早いんだなと思って割と呑気に竿を振っていた。


連休中は5月3日、4日、6日、7日と益田川で竿を出したのだが、幸いなことに懸念だった右腕の痛みは小康状態を保っていた。
ずっと痛みはあったものの、タオルや雑巾を絞る動作は痛むことなくできたのでこれは本当にテニス肘(上腕骨外側上顆炎)なのかなと疑い始めていた。
テニス肘を発症してしまった際のストレッチというものも続けてはいたが、3月頃のある日気がついた。
そのストレッチとは逆の方向に、手首の関節が殆ど曲がらなかったのだ。
これはテニス肘を差し置いても問題だろうと思い、その日から手首を内側と外側の両方に向けるストレッチを始めた。
内側に向けて伸ばすのがテニス肘のストレッチで、それとは別に外側にも伸ばした。
最初の内は痛くて堪らなかったが、次第に手首が曲がるようになると痛みもあまり感じなくなってきた。
それを今も毎日続けているのだが、10mの竿を一日振っても、釣りの後にストレッチを行えば翌日に痛みが残ることはない。
僕の勝手な考えだが、もしかすると最初は本当にテニス肘(上腕骨外側上顆炎)だったのかもしれないが、それとは別に右肘の関節が、所謂四十肩、五十肩と呼ばれるのと同じような症状になっていたのかなと思い始めた。
現在も若干の痛みはあるのだが釣りができない、竿が振れないということはない。
取り敢えずこのまま騙し騙し使っていこうと思っている。

というわけで10mの本流竿を振ることはできたので、ここ何年か足しげく通うポイントにも入ってみた。
大きなアマゴが着くと踏んでいるポイントなのだが、ニジマスは獲ったことがあるがアマゴの大物はまだ獲ったことがない。
しかし、絶対に大物が着くはずなのだ。
僕はそう信じて何年か通っている。
「ここで40cmを超えるアマゴを掛けたい。ここでなきゃ意味が無い。ここで掛けたいんだ。」という妙な拘りを持って臨んでいるポイントで、釣行した4日間とも竿を出した。

段々瀬の落ち込みから押しのある早い流れの瀬を経て、深瀬から淵へと変化していくカケアガリの開きがある。
ここに着かなくて何処に着くのか?というほど好ポイントだと思う。
狙うべき筋は遠い。
かなり立ち込んで腕を思いっきり伸ばし、エアマスターのマルチを伸ばして10.5mの状態にしてもまだ少し足りない。
しかし何とかその状態で流していた。

目一杯遠くに振り込んで仕掛けを沈めながら流れに乗せる。
イメージとしては餌の軌跡は弧を描く。

話は逸れるが実は僕はこの流し方はずっと以前からやっていた。
同じように遠くの筋を狙わなければ届かない奥飛騨の高原川のポイントでもこの流し方で大型のニジマスやヤマメを何度も掛けている。
特にニジマスの場合は餌の軌跡が弧を描いた後にターンするようなタイミングで、ひったくるように餌を持って走っていくことが多い。
明らかにこの筋に魚が着いているとか、この筋を狙いたいという場合は直線的に流すのだが、どの筋に潜んでいるのかはっきりしないような大場所で全域を隈なく探るにはこの扇形の流し方がよいと考えていた。

しかしながら僕はずっとサツキマスを狙うときには弧を描く流し方をしていなかった。
なんとなく、それでは良くないと思っていた。
ところが近年とある名手のお話を伺った際、その名手は紛れもなく扇形に流してサツキマスを釣っているということが分かった。
以来僕も自信を持ってサツキマスを狙う際にも扇形に流している。
でもなかなか掛かってくれないが。

何度目かの流しの際、丁度扇形の弧の中点付近でククンと穂先を引くアタリがあった。
しかし迂闊にもアワセのタイミングを逸してしまった。
しくじった、と思いながらもう一度食ってくれないかと念じて流しを続けていたら、流し終わる直前に再度同じようなアタリがあった。
すかさず合わせると確実に鈎に乗った感触とともにビンビン首を振るシャープな引きが伝わってきた。
ビュウっと数メートル一気に走っては止まり、止まった地点でまた首振りとローリングを繰り返す。
押しの強い流れのために手応えは充分だが、尺はないだろう、27~28cmくらいだろうなと予想しながら、久しぶりのシャープなアマゴの引きを堪能した。
寄せてきてもまだローリングを繰り返していたので、あまり体力を消耗させてもよくないと思い、一気に寄せて玉網に入れた。

パーマークが消失した剥がれやすい鱗の銀色の魚体は、下流のダムからの使者、中山差し(僕が勝手に付けた呼称)だと思いたいが、鰭はそれほど尖っていない。
それどころか、上顎は尖るどころか丸い。
何処かにぶつけたようで皮が剥がれ肉が見えていたが、もしかしたら昨年度の釣り大会用のアマゴの生き残りで、冬の間に下呂から降ってきた個体なのかなも知れないと思った。
真相は分からない。
魚に聞くしかない。
とにかくこんな渋い状況で狙いのポイントでそこそこの大きさの個体と出会えてまあよしとしよう。

 

 

当日のタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスター105M
       ※右肘への負担軽減のため、今シーズンより少しでも持ち重り感の少ないと思われるチューブラ穂先を使っています
水中糸:フロロ 0.8号
ハリス:フロロ 0.6号
鈎:オーナー サクラマススペシャル 8号
餌:ミミズ