How many rivers must I cross? I don't know...

幸せになりたくて川を渡る・・・

2015/06/06 高原川~今期最初の高原川釣行

2015-06-11 00:27:02 | 渓流釣り 釣行記(高原川水系)
長良川でのサツキマス狙いの釣りに一区切りを付けて、そろそろ高原と益田の本流の魚を狙おうかなと考えていた。
例年なら先ずは6月は益田川中心の釣行で、一度くらいは高原川にも行くかなという程度。
しかし、昨シーズンは高原川でかなり良い釣りをすることが出来たため、もう少し早い時期の高原川も見たくなった。

その週の初めから仕事の段取りを付けたり、仕掛けを周到に準備したりと、万全の態勢で自宅を出た。
自宅や勤務先だけでなく、高原川流域も金曜の午後から弱い雨が降り続いていた。
ネットの情報で随時水位を確認していたが、何も変化はなく平水が続いていた。
これならば大丈夫だろうと判断し、200kmの道程を走り夜明け前に高原川に到着した。

身支度を整えて後は夜が明けるのを待つばかりというとき、雨の中遠くから発電所の放送と放水のサイレン音が聞こえてきた。
どうやら夜半に上流部で強く降ったようだ。
ほどなくして濁った水が高原川を襲った。
2015年のシーズン最初の高原川での釣行はこんな始まりだった。


お目当てにしていたポイントは到底釣りにならない。
上流部へとクルマを走らせたが濁りは一向に薄くならない。
試しにひとつの支流の川沿いをクルマで走らせてみた。
本流よりは濁りの程度は低かった。
これならば釣りが出来ると判断し、河原の斜面を下りて行った。

竿を振る前に、手を川面の水の中へ突っ込んでみた。
恐ろしく冷たい。
水温を計ると10℃を切っていた。
僕が先週まで竿を出していた長良川や、もうひとつのホームである益田川に比べると確かに高原川の方が水温は低い。
しかし、6月にもなって10℃を切るものなのか?
もしかして雪代なのか?
だとしたらこの濁りで急激な水温低下とあってはもう釣りどころではないだろう。

殆ど諦めの境地で試しに竿を出したが全く食わない。
アタリなのか川底の石に当たったのか判断付かないようなコツンという感触が一度あっただけだった。

取り敢えず寝よう。
眠い。
眠っている間に濁りが取れるかもしれない。
日中は陽が射すという予報だし、もしかしたら状況は好転するかも知れない。
淡い期待を抱きながら、僕はクルマに戻り、座席のシートを倒して眠った。


目覚めてからもう一度本流に戻った。
明け方よりは濁りは薄くなっているし、水位も平水にかなり近くなっている。
せっかくここまで来たのだから一応竿を出してみるかと思っていた時、地元の釣り師Iさんに会った。

Iさんによると、やはりこの濁りと低水温は雪代らしい。
昨年の冬の降雪が多く、強い降雨があると未だに雪代が入るそうだ。
そして、いいサイズのヤマメは全然釣れていないとのことだった。

天候のよい日に雪が解けて午後から水温が下がるというのはもっとシーズン初期のことなのだろう。
僕は雪代の影響を受ける水系での釣りの経験がないため詳しいことは分からないが、多分間違ってはいないと思う。
ある程度季節も進んだし、溶けるべき雪は大方が溶けたのだろう。
通常の好天の際には雪代の影響も受けず、「高原川で良い釣りが出来た」と言っている人も居る。

しかし、強い雨はまた別なのかな。
実際に雪代は入っているし。

今日はここで一日粘っても難しいなと思い僕は高原川を後にした。
もう少し梅雨らしい雨が降った後で、もう一度状況確認のために高原川を訪れようと考えながら、残念な気持ちを消せないままに僕は高原川から去って行った。



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2014/09/06,07 高原川釣行~今期最終の高原川にて

2014-09-10 00:42:08 | 渓流釣り 釣行記(高原川水系)

橋の上でクルマを停めてハザードランプを灯した。
運転席のドアを開け、クルマの後部に回り歩道に立った。
僕は真夜中の益田川を見ていた。
国道沿いの街灯や僅かな街の灯に照らされ、暗闇の中に微かに浮かぶ益田川の川面を見ていた。
ターボタイマーによるアフターアイドリングが終わると、僕の耳に届くのは益田川の流れの音だけになった。

「無理をすれば入れないこともないな・・・」
前日にまとまった降雨があり、今度こそ順調に減水していた益田の水がまた高くなった。
平水より高い状態は、本来渓魚を狙うには好都合の筈だ。
しかし僕が入りたいポイントは平水に近い方が良い。
その他のポイントで大型のアマゴを狙えばいいじゃないかと自問してみたが、確かにいずれかのポイントに朝一番で入るのは全く問題ない。
しかしその後の移動を考えると非常に悩ましい。
この時期はまだ多くの鮎師が入川する。
ポイント移動に自由が利かなくなる可能性が高い。

そんなとき去年までは支流の小坂川に入った。
小坂でパーマークのはっきり残った美しい尺アマゴを狙えば良いことだった。
しかし今シーズンの小坂は正直なところあまり芳しくない。
望み通りのポイントに入れずに、不自由な釣りになるか芳しくない釣り場で辛抱の釣りをすることになるならば・・・
「益田は今日も見送りだなあ・・・。あちらは禁漁前の最後の週末だからな。」

 
 

2014年9月6日、僕は益田川を後にして、後ろ髪を引かれる思いを抱きながらも高原川へ向けて国道41号線を再び北進し始めた。
僕のシーズン最終の高原川釣行が始まった。

 
昨日の降雨の影響が気懸かりだった。
インターネットの幾つかのサイトの情報ではかなりの水が出たようだ。
その情報によると現在の水位は平水より5cmほど高いだけで減水傾向が続いている。
しかし場所によっては川幅や流れの違いによりそれよりももっと高いだろう。
それだけではない。濁りがどの程度入っているかというのも重要な要素だった。
先刻益田川でしたように橋の上から川面を見てみるが、ここは益田ほど街の灯もない。
どんな水況なのか判断することは出来ない。

以前このブログ記事にも記したが、一般的に渓魚を狙うのに最高の水況と言われるような「増水後の減水傾向の途中で笹濁り」というのは、ここ高原川ではあまり歓迎されないと思っている。
寧ろ濁りは無い方がよいくらいに考えている。
水位に関しては元来川幅の広い高原川ではポイントに届かなくなるため平水の方がありがたい。

ただ、そのような高原川において、僕が知っている限りでは一箇所だけその傾向が当てはまらないポイントがある。
濁りが入っていてもアタリは出る。
今朝一番に入るならそのポイントしかないと思い、再びクルマに乗り込んだ。

とは言えそのポイントも難しいことに違いはなかった。
殆どの場合、魚の活性が上がるタイミングが読めないのだ。
今期の最終釣行ならは賭けの要素を含んだ釣りよりは確実性を採りたかったが、川の様子が判断出来ないならばやむを得まい。

 
釣り場に到着したのは午前3時半。
一時間程度は仮眠が可能だが万が一寝過ごしたらと思うとおちおち眠ってはいられない。
僕はそのまま身仕度を整え河原に降りていった。
頭に着けた投光器をスポットに切り替え暗闇の中の川面を照らした。
茶色の激しい濁りは無い。
投光器の光量ではその程度しか判らない。
まさか清澄ということはなかろうが、釣りが成立しないような濁りではないと分かり、ホッとした気持ちで僕は岩場にもたれてうとうとしながら夜明けを待った。


空が白み始めると対岸にはいつものあの人の姿を仄かに認めることが出来た。
ほぼ毎週末この釣り場で出会うあの人だ。
週末毎の釣行を重ねていらっしゃるということは、平日には釣行不可能な御身分なのだろう。
恐らくこの二日間が今シーズンの最後の高原川釣行のチャンスとなるのは僕と同じだ。
お互い最後を締めくくるのに相応しい魚が獲れると良いですね・・・
心の中で呟きながら対岸の人影が竿を振り始めるのを見ていた。

 
僕はいつも対岸のあの人より遅れて竿を出す。
目印が見えないため根掛かりの懸念があるからだ。
でも今日は逸る気持ちを抑え切れない。
漸く目印が見えるかなという頃合いで岸近くの着き場を流し始めた。
時折ウグイが餌に触ったがヤマメのアタリはない。
ウグイがもっと大挙して餌に群がるようだと今日はヤマメを狙うには厳しいということになるのだが、この程度なら大丈夫だろう。

 
次第に明るさが増していき目印が確認できるようになると、それに伴い僕が探る範囲も広がってきた。
幾つもの筋を順に流していき、一通り探るとタナを変えてまた順に探っていった。
しかしヤマメのアタリは一向にない。
竿を出し始めておよそ1時間が経過した頃、思い切ってベタ底を流し始めるとコンコンという弱いアタリを感じた。
ウグイではないと瞬時に判断しすかさずアワセを入れると、尺はあるだろうというヤマメの手応え。
やけに水面に出て暴れるなと思ったが、さほど苦労せずに取り込んだ。

玉網に収まった魚体を見てなんとか尺は釣ったという安堵の気持ちを抱き、鈎を外そうとしたときに異変に気付いた。
今しがた釣ったヤマメは、ぐったりして全く生気がないのだ。
「どうしたんだよっ!?」と思ったが、鈎を外そうとして分かった。
掛かりどころが悪く、鰓に傷が付いたようだった。
暫く網に入れたまま見守っていたが、恐らくこのまま助からないだろうと判断し思い切って鈎を外したが、悪い予感は的中しそのままお亡くなりになった。

尺以上の個体は体長を測定し撮影することにしているのだが、僕は亡骸を丁寧に扱い体長を測定し写真に収めた。
画像は目が完全に死んでおり、ここに掲載するべきではないものになってしまった。
ヤマメには非常に申し訳ない気落ちを抱いた。

食べないのに釣るなんて、虐待だろうという人もいる。
そのような人に言わせれば今の僕の釣りは正真正銘の虐待だろう。
なんだか釣り始めから気持ちが沈んでしまい、昨晩一睡もしなかったことによる睡魔もあり、僕は暫し河原で仮眠をとった。
 
恐らくポイントを休めたことにもなるだろうと考え、引き続きそのポイントで粘ったが次に出てきたのは25cm前後の小型のヤマメだった。
ジャンプを繰り返し、鰓荒いやテイルウォークまで見せてくれた最高に楽しいニジマスも遊んでくれたが、期待していた大型のヤマメは出なかった。

僕は一旦その場を離れることにした。
今シーズンの最後の週末なのだから、悔いの無いよう幾つかのポイントを回っておこうと思った。
しかしながらどのポイントでもヤマメのアタリは全く無い。
ウグイのアタリさえ遠いように感じる。
水の色は今朝より濁りは落ち着いているのだが、高原の釣れない日の傾向がまるっきり当てはまるような水況とアタリの遠さだった。

 
夕刻になって僕は今朝のポイントに戻った。
はっきり言うと、そのポイントで夕方に大物が出ると踏んでいたからだ。
いや、「踏んでいた」というより確信に近い気持ちを抱いていた。
「絶対に大物が出る」と。
魚の活性が上がるタイミングがなかなか読めないポイントではあったが、ことこの日の夕方に関してはかなりの自信があった。

期待に胸を膨らませ餌を流し続けていると、確信や自信は次第に萎えていき「こりゃあダメだな」という諦めに変わっていった。
流す筋やタナも、立ち位置、色々と試してはみたものの何も変わらなかった。
「今日はこれで終了だなあ・・・明日はどうしようかなあ・・・」と既に明日の釣りのことを考え始めていた。

日没間近になって対岸にIさんが入ってきた。
この釣り場で出会い仲良くなれた地元の方だ。
「こちらの岸でやってよいか?」とジェスチャーで尋ねてくる。
僕も掌を上に向けて右腕を差し出し「どうぞ」とジェスチャーでお返しした。
Iさんが入ってきたということは、やっぱり今日の夕方は釣れるはずなのになあ・・・
でも釣りを続ける意欲は甦らない。
もう竿を畳もうかというときに、対岸のIさんのルアーロッドが大きく曲がっている。
水面でもがくその魚体は、薄暗い中で遠目に見た時にはヤマメのように見えた。
40cm近い魚体だった。
片付けている間にIさんが釣りを終えてこちらの岸にやってくるだろうと思い、僕はそのまま堤防の斜面を登って行った。


「今日はどうやったあ!?」とIさんがクルマの窓を開けて大声で尋ねてきた。
「ダメですねえ。今朝はここでヤマメ2本出ましたけど、31cmと25cmくらい。あとはニジマス1匹。他のポイントは全くアタリがありません。」

話をしていると、やはり夕方に大物が出るとIさんも確信していたそうだ。
「それでも僕の竿に大物が掛からなかったのは腕が悪いんでしょうね・・・。」
「いや、そうじゃない。夕方と言っても時間帯に幅があるやん。ちょっと遅かったかもしれん。俺が釣ったのも口は使わんかったよ。アタックしてきただけだ。スレだよ。だから餌釣りでは厳しかったんやない?」

先ほど釣った魚は何だったのか尋ねると「ほれっ!」と言って目の前に差し出してくれた。
37~38cmはある立派なヤマメだった。
Iさんは家族団欒の夕食の一品として釣ったヤマメを持ち帰る。
乱獲はしない。
釣りの楽しみ方は人それぞれだ。
僕は基本リリース派だがそれでも時には自分で食すために持ち帰る。
持ち帰る釣り師を全て否定するつもりは毛頭ない。
僕が言いたいのは「渓魚を雑に扱うな。楽しませてもらっているという気持ちを忘れずに慈しむように、労わるように扱って欲しい」ということなのだ。

「明日はどうすんの?」
「考え中です。この渋さでは良い釣りが出来そうもないし。かと言って他のポイントや別の川も期待できるようなところは思いつかないし・・・」

するとIさんが僕に発破をかけるように言った。
「こんなんが釣れるんだからさ、まだまだここにはこれくらいのヤツがいっぱいおるよ!中途半端な川やポイントに入るんだったら、ここで一発勝負を掛けた方が俺はいいと思うなあ。」
「そうですねえ、明日が今シーズンの高原の最後の釣りになるし。アドバイスありがとうございます。」

明朝はIさんは来ないだろう。
「じゃあまた!」とお互い手を振り別れた。
来シーズンの高原での再会を特に口に出しはしなかったが、必ず会えると思う。
 
 
Iさんと別れた後、僕は割石温泉に浸かりそのまま釣り場へ戻ってきた。
夕刻釣りを終える頃に降り始めた雨はかなり強い雨脚になっていた。
前夜一睡もしなかったこともあり、僕は座席のシートを倒してそのまま眠った。

 
 
 
翌9月7日、目覚めたのは午前4時前だった。
真夜中にクルマのルーフを叩く雨の音で一度目が覚めたが、その時よりは雨脚は弱くなっているもののまだ止みそうにはなかった。
僕は覚醒していない頭で必死に考え、もう少し眠って様子を見ることにした。

次に目覚めたのは午前4時半。
なんと雨が止んでいる。
空を見るとこれから晴天に向かいそうな気配がする。
僕は急いでクルマを降りて川の様子を見に行った。
茶色の濁りはない。
これならいける。
再び慌ててクルマに戻り、急いで身支度を整えて河原に降りていった。

既に目印が確認出来るほどまで空は白んでいる。
いつものように岸近くから流し始め、順に探る範囲を広げていった。
流す筋を変え、タナを変え、一通り流すともう一度最初から流し始めたが、時折ウグイが餌に触るだけでヤマメのアタリはなかった。
ベタ底を探ってもそれは変わらないので、僕は特大サイズのオモリを付けて一気に底に沈める探り方をしてみた。

それはあまりにも大きなオモリのため、打ち込むと流れには乗らず、自重によって僕の方へ近づいてくる。
その近付く筋と流れの筋や速度が極力一致するように立ち位置と投餌点を調整しながら筋を探っていった。

 
夜明けから1時間近く経過した時だった。
打ち込んだ仕掛けが流れの筋と一致して僕の方に近付き、ある地点でその動きが止まった。
水底にオモリが到達したようだ。
少しだけ竿を持ち上げ、そのまま餌がベタ底を流れる(というよりは移動すると言った方が適切か)ようにしたとき、コンコンと弱いアタリが手許に伝わってきた。
一呼吸の間をおいて、もう一度コンコンという弱いアタリがあったが、先ほどのそれとは異なり、確実に仕掛けを持って行くような動きを見せた。
ビシッをアワセをくれると、かなりの重量感が竿の胴に乗った。

「よっしゃ!大物だ!」と最初の疾走を凌ごうと僕はそのまま竿を絞った。
掛かった魚はその場で暫し激しい首振りをした後、一気に沖へ向かって疾走を始めた。
竿の胴に乗った重みでかなり大きいと思い、竿を絞る力を緩めずそのまま耐えた。
すると魚は表層に出て首を振りもがき始めた。
水面を割って魚体も窺うことは出来たが、魚種までは確認出来なかった。
僕は竿を寝かせ、水面上で暴れないようにすると、次は深場へと潜り始めた。
竿を絞る手は緩めない。
するとまた表層に出てもがき始めた。
先程と同様、竿を寝かせると魚は深場へ潜る。

しかし、二度目の潜り先は一度目とは異なった。
僕の足許、岸際の岩盤目掛けて潜り始めた。
その岩盤には無数のスリットがある。
その中のひとつに潜りこもうとしているようだった。
そうなったらまずい。
もう獲れない。
岩にハリスが擦れて切れるという最低の失態を演じることになる。
更に岸辺に近付くということは竿の弾力を活かしにくくなる。
僕は足早に後ずさりして、少し高い岩の上に陣取り、竿を絞る力を決して緩めずなんとかしてスリットへ潜り込むのを阻止しようとした。

しかし、魚の動きが止まった。
ピタッと止まった。
底に張り付いたまま全く動かないのだ。
やってしまった。かなりの力で竿を絞ったつもりだったが、スリットに潜りこまれたようだ。
どうしたらいいものかと、竿を絞る力を緩めずに暫し考えていた。
魚が動き出す気配は全く無い。
僕はそのまま立ち尽くすしかなかった。
いっそのこと竿を絞らずに緩めた方がよかったかなと思ってみてももうどうすることもできない。

ところがよく見ると止まったと思っていたはずの魚の動きが、どうやら止まってはいないということに気付いた。
注意深く見ていないと分からないくらいだが、仕掛けの位置は極めて遅いながらも確実に沖に向かって動いていることに気付いたのだ。
僕は竿を絞ったまま、引き上げる方向を岸寄りではなく魚が動いて行こうとしている沖に向かって絞り始めた。

少しずつ、少しずつ動く速度が上がっていく。
そして確実に動いているということが分かったとき、思い切って魚を底から引き剥がそうと試みた。
水中に居る時点で既に横たわった状態のヤマメが浮かんできた。
水底にへばり付くという抵抗は、相当な体力を消耗したのだろう。
もう抵抗する力は全く残っていないようだった。
僕は表層まで持ち上げて岸辺の浅瀬に誘導し、玉網で掬った。

Dsc_0442

Dsc_0455

今期の高原川最終釣行で、やっとの思いで獲れたのは38cmのヤマメ。
雌なので鼻曲がりもないし、体躯も細い。
そのため迫力には欠けるが正真正銘38cmのヤマメだった。
今シーズンを締めくくるのに相応しい一本となった。

 
その後別の筋で同じ釣り方でもう一本尺上のヤマメを獲った。
合わせた瞬間にズッシリと竿の胴に重みが乗り、これ以上はないという鈎掛かりをしていると感じられる最高のアワセだった。

合わせた直後、ほんの一瞬だけ魚が自身の身に何が起こっているのか把握できていないような、僅かに動きが止まる瞬間がある。
その瞬間を過ぎると激しい首振りが始まり、直後の疾走へと移る。
僕はあの「動きが止まる一瞬」が大好きだ。
あの一瞬でこちらも戦闘態勢に入る。
全身に緊張感が漲る。
ぞくぞくする。
鈎の掛かり方が良いときは竿の胴に乗る重みも独特のものがある。
その最高の一瞬を演出してくれたのは35cmのヤマメだった。

Dsc_0456


この2本を獲って、ノルマはクリアなしたという達成感を得た。
今シーズンの高原川では、盆休みに40cmのヤマメかアマゴか判別のつかない個体を獲った。
あわよくばもう一本40cmと思ってはいたが、さすがにそんなにうまくはいかない。
それでも38cmと35cmならば、今期の高原のナンバー2とナンバー3の大きさだった。
最後を締めくくるのに相応しい魚と対面することができた。

 

例年なら益田川の水温が高くなり、入川する鮎師の数も増える梅雨明け以降に通い出す高原川。
今シーズンは梅雨前半の少雨渇水のため、通うということはないものの6月下旬から高原川に足を運び始めた。
大物が獲れる高原川とは言え、尺以上のサイズがこれほど獲れるとは考えていなかった。
何故良い釣果につながったのかということは、シーズン終了後にじっくり考えるとして、楽しい釣りをさせてくれた高原川に先ずはお礼を言わねばならない。
「ありがとう、高原川。とても楽しいシーズンだった。満足しているよ。」

そしてこの方々にも。
「『中途半端なところに入るなら、ここで一発勝負を掛けた方がいいんやない?』というアドバイスをくれたIさん、ありがとう。」

「独自の釣法を公開して頂き、僕の釣りの幅を広げてくれたYさん、ありがとう。」

お二方とも、また来シーズンの高原川でお会いしましょう。
そして、今シーズン20cm台だった麗しきヤマメたちも、来シーズンまた会おう。
40cmにまで成長していることを期待しているよ。

 
 
当日のタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスター100MV

水中糸:ナイロン0.8号,フロロ0.8号

ハリス:フロロ0.6号

鈎:オーナー スーパーヤマメ 8.5号
  グラン サクラマスサツキマス 3号

餌:ミミズ,ブドウ虫


2014/08/30,31 高原川釣行~一矢報いる。一矢のみ。二矢はなし。

2014-09-02 00:51:53 | 渓流釣り 釣行記(高原川水系)

そろそろ、アマゴの顔を見たい。
益田川に行きたい。
盆休み前からそんな気持ちを抱いていた。
しかし、盆休みの大雨による増水が退き切らない。
釣りをすることは可能なのだが、竿を出す場所は限られてしまう。
朝一番で入ったポイントから移動しようにも、恐らく既に鮎師が川に入っているだろう。
限られた釣り場が更に少なくなる。
それに、一番入りたいポイントは現在の水位では入ることは難しいだろう。

 
2014年8月30日。
益田で釣りをしたいが果たして可能か、僕は途中でクルマを降りて暗闇の中で所々薄らと見える益田の川面を確かめた。
やはり厳しいな・・・
僕は再びクルマに乗りこみ、高原川へと向かった。

結局一睡もしないまま川に入った。
まだ夜は明けきらなかったので腰を降ろして川面や対岸を眺めていた。
いつも対岸に入るあの人も居る。
以前お話をした際に、岐阜県の中濃地域にお住まいとお聞きした。
お互い結構な距離を毎週通っているもんだな、こういうのを釣りバカと言うんだろうなと思った。

夜が白んできた。
目印はまだ見えにくいが竿を出し始めた。
根掛かりしないよう、早朝の時間帯の着き場と考える一帯を流していたがアタリはない。
少しずつ明るくなってきて、流す範囲を広げたり筋を変えたり、オモリを調整したりタナを変えたりと試行錯誤しながら探るがウグイのアタリしかない。
今日も渋いのかなとげんなりしそうなときに岸近くでストンと急に深くなる辺りで食った。
しかし、引き方からするとどうやらヤマメではないようだ。
案の定玉網に収まったのはニジマス。
その後さほど間を置かずに25cmくらいのヤマメを釣ったが、それきり何の反応もなくなってしまった。
先週のことが脳裏を過る。
「何も変わらないな。場所を変えても結局アタリは全く無くて釣れないのかな・・・」

少し迷ったが思い切ってその釣り場を離れた。
一睡もしていなかったの途中で仮眠をとりながら幾つかのポイントを探ったが、予想通りアタリは皆無。
水況はかなり平水に近いもののまだ少し高め。
盆休みの出水で川の様子が変わり、それまでは渡渉や立ち込みが可能だった箇所でそれらが出来なくなっている。
恐らく川の中の様子もかなり変わったことだろう。
岸辺の高い位置から川の中を具に観察し、波目を読んで色んな流し方を試したが、アタリは全く無い。
これではどうしようもないなと思い、夕方の早い時間帯に朝一のポイントに戻った。
対岸のあの人が恐らく午前中さんざん流したと思われるポイントだったが、釣り手が変わるし暫くポイントを休ませているし、それに何より今日アタリが出ているのはそのポイントだけなのだからと考え、そこで暗くなるまで居座ることに決めて入った。

竿を振り始めて30分くらい経過した頃、順に筋を変えながら流していたとき、食うならあそこだなと思っていたポイントで1匹の尺に満たないニジマスを釣った。
今朝とは立ち位置が逆の岸だったが、魚が食った場所は今朝と同じである。
これまでの経験からもその一帯でよく食う。
そんなことを考えながら流していると、続いてまた25cmくらいのヤマメを釣った。
しかし、それっきりだった。
暗くなるまで、いや日没後も暫くは目印が見えなくなるまで流したがアタリはなかった。


日没直前、釣り場でよく会う地元のお兄さんに会った。
初めてお会いしてからもう1年以上になる。
それなのにこれまでお名前をお聞きしていなかった。
遅れ馳せながらもお名前を伺うとIさんということだった。

「存分に楽しんでいいよ。俺はほんのちょっとでいいから」という言葉に甘えて目印が見えなくなるまで竿を出していたのだが、僕が竿を畳んでいるほんの数分の間にIさんが泣き尺サイズのヤマメを釣った。
このタイミングで、この場所で、その筋で・・・食うということが分かっていて僕に釣り座を譲っていたそうだ。

その後は衝撃の連続だった。
これまで色々と高原川の有益な情報を提供して頂いたのだが、その日の話には本当に驚いた。
他人様のお話なのでここには詳細には書けませんが、大まかに言うと、僕が朧げに感じていた高原川の特徴というものを「高原川とはこうなのだ」と経験に基づいて言い切る形で教えてくれた。
それを聞いて僕が抱いていた感覚は誤りではなかったと分かったが、実釣経験に裏打ちされたお話は物凄く説得力があった。


納竿後に温泉に浸かりながら考えていた。
明日は益田か、午前中だけ高原か・・・
ウェブ上で益田の水位を確認していると、調子よく下がれば川に入れなくもなさそうだった。
しかし、減水が続く保証はない。
減水傾向にあって期待していたら上流域の降雨でまた増水ということが何度もあった。
もう一日高原で竿を出すことに決めて、その夜は車中泊した。


 
2014年8月31日。
昨日のIさんの話を思い出しながら、流す筋を変え、タナを変え、オモリの量を変えて波目を見ながら、時には軽いオモリで餌を吹きあげたり、バカでかいオモリで一気に底に沈めたりしながら、この日も夜明け前から竿を出した。

食い気のあるやつは、ベタ底に居ないかもしれない。
少し底を切った辺りで上を見ているかもしれない。
そんなことを思い、軽めのオモリで女波に乗せて一旦底付近に餌を届けた後、軽く竿を煽り、大袈裟に餌が吹き上がるように誘ったときコンコンコンと弱いアタリがあった。

ビシッとアワセを入れると、たった1週間味わえなかっただけなのに凄く懐かしい感じがする大型のヤマメの引き。
尺はあるぞと踏み、何としても2週連続の尺ボウズは逃れようと慎重に遣り取りした。
パワーもスピードも特筆すべきものはなかったが持久力のあるヤマメだった。
空気を吸わせて寄せるのだが、再び底に潜っていく。
再度空気を吸わせて寄せてもまたもや水底に。
何度か繰り返すうちに水底ではなく沖に向かって走るだけになったが、それでもまだまだ網に入れられるような状態ではない。
あまり遣り取りを続けると、鈎掛かりした孔が広がってバラシに繋がりかねない。
ちょっとだけ強引に寄せてみようかと思い、あと一息というところで右腕の力を強めるとうまいこと浅瀬に入って横たわった。

Dsc_0437_2

Dsc_0439

2週連続の尺ボウズを逃れさせてくれた感謝すべき32cmのヤマメ。
少し痩せていたが、険しい表情の凛々しい雄ヤマメ。
高原川では騒ぎ立てるほどの大物ではないが、とにかく尺上を獲ることが出来てホッとした。

この後近くの筋で27cmくらいのヤマメを1本釣ったが、その後はまた沈黙が始まった。
1時間ほど自身の休息がてらポイントも休めて再度流し始めたが全くアタリが止まってしまった。

今日の食い気のあるやつは2匹だけだったんだと思うことにして高原川を後にした。
 
 
 
当日のタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスター100MV

水中糸:ナイロン0.8号、フロロ0.8号

ハリス:フロロ0.6号

鈎:オーナー 本流キング9号
  オーナー スーパーヤマメ8.5号
  グラン サクラマスサツキマス3号

餌:ミミズ、ドバミミズ、ブドウ虫、
  


2014/08/23,24 高原川釣行~高原川の不思議な現象

2014-08-31 23:34:23 | 渓流釣り 釣行記(高原川水系)

2014年8月23、24日の高原川釣行。
久し振りに「やられたわあ」という感じの釣りだった。
尺はおろか魚の顔を見るのもやっという無様な釣りだった。

 
前夜、夜更けすぎからこの辺り一帯の山間に激しい降雨があった。
これだけ降ると支流の泥水が本流に入り込んで今日は釣りにならんやろうと思った。
しかし、今から益田川へ引き返そうにも、益田だって盆休み中の出水がまだ退き切らない。
このまま高原へ向かってなんとか釣りのできる支流でも探そうかと思いそのままクルマを走らせた。

ところが、上宝の集落に差し掛かる頃には雨は小ぶりになり間もなく上がった。
夜が明けて川を見ると若干濁りが入っている。
でもここまで来たのだからと、仕方なくそのまま竿を出すことにした。

 
何年か高原川に通って感じていることがある。
それは、他の河川では最高の水況と言われるような増水後の退き水で笹濁りというようなときに非常にアタリが遠い。
濁りに関しては多少の濁りであっても無い方がよいくらいだと感じている。
そんな思いがあって、茶色の泥水が混じってるんだろうなというような色合いの高原川での釣りを諦め半分で仕方なく始めた感じだった。

 
夜明けと共に入ったポイントでは、朝方にアタリは何度かあった。
釣果としては尺に満たないヤマメが2匹と、尺越えのニジマスが2匹。
他河川と少し傾向が異なるように感じる高原川の中でも、このポイントは更に特別な感じがする。
言葉では言い表しにくい。
とにかく、魚の活性が上がるタイミングが他のポイントと異なるのだ。
今朝だって、高原では歓迎されない濁りだなと思うような流れの中でしっかりとアタリが出た。
正直なところ、活性が上がるタイミングが分からない。読み切れない。
いつも当てずっぽうで入川する。


でも今日はこのポイントに関して言えば「当たりの日」だったのだろう。
遅れて入川してきたYさんも結構アタリを出した。
釣りをしているときに土手の上から大声を上げて手を振る影が見えた。
もしかしたらYさんかなと思ったが、逆光でよく見えない。
すると携帯電話が鳴った。
「おはよう、隣に入っていいかな?」
よく知った仲だったし、有益な情報やアドバイスも沢山頂いているし、断る理由はない。
そのようにしてYさんが入川し、そのポイントで何本かのヤマメとニジマスを上げた。

 
一足先に僕が別のポイントへ移動した。
しかし、アタリは全く無い。
遅れてきたYさんと合流し、幾つものポイントをはしごした。
お互いに適切な距離を保ちながら、思い思いの釣り方で尺以上のヤマメを狙った。
しかしアタリはない。
全く無い。
二人とも知恵を絞って幾つものアプローチを試みたが、朝一のポイント以外では見事に全くアタリがなかった。

「Yさん、今日はどうやらダメな日のようですね。」
「なんでだろうなあ・・・朝方はちょっと濁りが強かったけど、今は笹濁りで水も高めで最高なんだけどなあ・・・」
「今までのことを思うと、高原はそんな日にはあまり釣れないような気がします。」 

 
夕まずめも、そして翌朝も竿を出したがアタリはなかった。
時折ウグイの挨拶があるだけだった。


2014/08/14 高原川釣行~アマゴ?ヤマメ? とにかく40cm

2014-08-16 17:15:24 | 渓流釣り 釣行記(高原川水系)

2014年8月14日。
世間は盆休み。
この僕も例外ではなく、昨日から盆休みに入った。
昨日は平日でないと済ませられない用事を片付け、その後はゆっくりと抜かりないように釣りの準備をした。

 
朝一番で入るのは、いつものポイント。
最近は非常に渋く、ここ以外のポイントの方が反応が良いので朝一では入らなかったのだが、この激渋のポイントでYさんの釣法を試したく入川した。

 

まだ辺りは薄暗い。
少しずつ明るくなるのを待っていると、対岸にも釣り師が一人夜明けを待っているのを見つけた。
シルエットしか見えないが、動きや帽子などからここでよく合うあの人ではないなと思った。
もしかしたら、去年もこの盆休みに早朝から対岸に入っていた人かなとも思ったが、対岸なので確かめようもない。

目印が判別できる明るさになると僕は竿を振り始めた。
スレッスレだった先週の釣行後に台風が通過して、水位は上昇している。
ただ、思ったほど水は出なかったようで、魚たちの活性にどのように作用するのか不安を抱いていた。

同じポイントでも低水位の時と高水位の時では竿を出す順序を変えている。
今日は下流の流れ出しから上流に向かって順番に探っていった。
しかし、アタリは全くない。
時折ウグイと思われるアタリはあるがヤマメのアタリは一切ない。
竿を振り始めて1時間経過してもアタリはない。
休憩がてら少しポイントを休めてから再開したがやはりアタリはない。
台風は高原川には何ももたらしてくれなかったなあと残念な気持ちになっていた。

 

早々にここは諦めて場所を変えるべきだなと思ったが、移動前にYさん釣法を試してみることにした。
餌を付けて振り込み、仕掛けが馴染むか馴染まないかのときに、ガツーンと餌を持っていくアタリがあった。
一呼吸間を置くともう一度ゴンゴンッという感触があり、ビシッと一発アワセをくれた。

鈎に乗った瞬間に大物と分かった。
水底に向かって引き込む、潜る、そして走り、首を振る。
その一連の動作の力強さとスピードは尺クラスの個体のそれを数段凌駕する。
首振りの様子からニジマスではなく、恐らく大型のヤマメが掛かっていると予測した。
30cm台後半か、あるいは40cmに達するか・・・
引きの強さと特徴は2012年に獲った39cmのヤマメと酷似している。
掛けた筋こそ異なるが、僕の立ち位置はあの時と同じ、魚が必死に鈎から逃れようともがく一帯も同じだ。
僕は不必要に首を振らせないよう竿の絞り具合を調整しながらテンションを掛けた。
少し泳ぎ速度が遅くなったかと思うと、再び水底に向かい疾走する。
ここの水深は推定5~6m、或はそれ以上ある。
魚が最深部に達するときに10mの長尺ロッド、エアマスターの穂先が僕の目の前まで降りてくるぞくぞくする快感。
早々味わえるものではない。

何度深みに潜ろうとしただろうか。
次第に泳ぎが遅くなり抵抗に力がなくなってきた。
少しずつ魚も浮いてきている。
オモリが水面から現れた時、かすかに魚体を見た。
ヤマメだ。
デカい。
仕掛けの手尻を今日はかなり長くとった。
1m近くある。
もう少し下がらないと魚を浮かせた状態を保ちにくかったが、そうすると岸辺に寄せた時に玉網が届かない。
周囲を見渡して、取り込み位置を探した。
辺りを伺った際に対岸の釣り師と目が合った。
僕の遣り取りは見られている。
バラシやハリス切れなどという失態は演じられない。

少し立ち位置を右手に移動した。
岸近くに魚を横たえらせることができるちょっとした浅瀬がある。
完全に弱らせてここに横たえよう。
5月に美並でサツキマスを獲った時のように、横たえた時に腹側から掬おうと考えた。

右手に移動した僕に合わせて魚も寄ってきた。
もうかなり弱っている。
僕の足元は水面より10cm程度高いだけ。
水面近くの相手に空気を吸わせるには竿を高く持ち上げねばならない。
遠方の筋に届かせたく思い切って長くした手尻が今は悔やまれる。
僕は竿尻を持った両腕とも頭上に持ち上げながら、何度か空気を吸わせた。
少しずつ寄ってくる。
そして、抵抗して沖へ逃げるときも力弱くなってくる。
もしかしたらうまく寄せればこのまま網入れできるのではと思い試してみたが、やはり手尻が長い。
うまく入らずに逃げ惑われる。
こうなると最悪の場合取り込みに失敗する。
やはりここは浅瀬に横たえよう。

寄せる、沖へ逃げる、これを何度も繰り返した。
天に突き上げた両腕も怠くなってきた。
そろそろフィニッシュせねばと、思い切って寄せると、そのまま浅瀬に入って横たわった。
僕は左手に持っていた玉網で、想定通り腹側から掬った。

Dsc_0329_2

婚姻色の浮かぶ40cmの雄。
釣り上げた直後は、体側のオレンジ色はその婚姻色によるものと思ったが、よく見ると朱点がある。
高原川で時折みられるアマゴの特徴を持った個体だ。
純粋なアマゴなのかヤマメとの交雑個体なのか僕には分からない。
アマゴ水系の純血のアマゴに比べると明らかに朱点は淡い。

そんなことを思っていたら、ある方がこんなことをおっしゃった。
「微妙な朱点も高原川ネイティヴぽくていいじゃないですか!」と。
確かにそうかもしれない。
では、これも高原川ネイティヴだとするばらばヤマメということになる。
でも、正直なところ魚種は特に問題ではない。
40cmという大台に乗ったサイズのこの魚と渡り合えたこと、出会えたこと、こうして撮影できたことが重要なのだし、感謝したい。

Dsc_0344

このポイントで釣れる魚の多くは体高が豊かではないです。
何故なのでしょうね。
とにかく、そのために迫力に欠けますし実際の体長よりも小さく見えますが、正真正銘の40cmです。
 
 

 
 

 

 

Dsc_0362

Dsc_0393

上の二枚の画像をご覧いただければ、婚姻色や朱点がよくわかると思います。



この後32cmの同じような朱点を持つアマゴなのかヤマメなのか判別しがたい雄の個体を獲った。
その個体の撮影をしたり、自身が休憩したりしながら、僕は40cmの雄の体力の回復を待った。

そしていつものことなのだが、この40cmの魚にも流れに返す時に声をかけた。
自分は釣り上げたくせに、つまり魚を傷つけていることになるのに全く勝手なものなのだが、とにかくアマゴやヤマメがかわいくて仕方ない。
剥製にするなんて、その魚を殺めることになるし、やっぱり僕にはできない。
写真の方がいい。
あとは、思い出。
思い出作りのためにも声をかけたくなるのだろうか。

「おつかれさんやったなあ。もっと食って太くならんとあかんぞ。」
充分に体力を回復してくれたことがわかると、僕は彼からストリンガーを外して流れに返した。

 

 

 

当日のタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスター100MV

水中糸:ナイロン0.8号

ハリス:フロロ0.6号

鈎:オーナー スーパーヤマメ8.5号

餌:ドバミミズ