8月後半から雨がちな天候が続いていた。
川の水位は上がり、ようやく落ち着くかと思う頃に再び激しい降雨があり増水。
その繰り返しだった。
渇水が続いた後の出水は魚の活性も高まるしありがたいのだが、釣りが困難になるほどの増水はありがたくない。
実はもう2015年のシーズンは高原川への釣行はやめようと思っていた。
それくらい状況は良くなかった。
禁漁前の最終週末であろうとそんなことは一切気にせず、気持ちはずっと南飛騨の益田川に向いていた。
しかし、前述の増水は高原川よりも益田川の方が程度が酷かった。
全く竿を出せないわけではないだろうが、ポイントはごく限られるし、その限られたポイントでも釣りにくいだろう。
それに、雨の合間の晴れの日に竿が出せたとしても、すぐそのあとまた雨がちな天候が続く。
これまでの経験から推測すると、出水の前の益田は食いが頗る悪い。
ならば、どうせ悪いのなら最終週末なのだから高原川へ行ってみようか。
さすがにこのままシーズンを終わらせるのは悔し過ぎる。
2015年9月5日と6日、高原川が禁漁に入る前の最終週末の僕の一泊二日の釣行が始まった。
昨シーズンの高原川を振り返るとよく釣れたなとつくづく思う。
確かに盛夏の頃はアタリは遠くなったが、それでも終日竿を振っていれば尺以上のヤマメにはほぼ確実に出会えた。
食いが悪い時期なのだから仕方ない。
一日に一本の尺以上の魚を獲れればそれでいいと思っていたので充分満足していた。
今シーズンも勿論そのつもりでいたがなかなか尺ヤマメは出てこない。
釣れるヤマメは全体的に小振りで痩せた個体も多い。
そして魚の数も少ない。
やはり長引いた雪代のせいだったのかな・・・
思いを巡らせながら飛騨路を北進する。
片道200kmの道程は時折睡魔が襲ってくるが、5分程度の仮眠で何とか凌いだ。
高原川の目当てのポイントに到着したのは夜が明ける2時間以上前だった。
魚が少ないならば、少しでも魚影の濃くなるポイントに入ろう。
そう考えて某堰堤下のポイントに目星を付けた。
朝一番でこのポイントに入るのは初めてだった。
暗いうちから川に降り立ち、見えにくい目印を目を凝らしながら追っていると後方を一人のルアーマンが通り過ぎた。
「無挨拶か・・・」。
気になったが、声をかけないということはかなり下流に行くものだろうと思っていたが、僕の下流側に延竿2本分くらいの距離のところからルアーを放り始めた。
最終週末の朝一番、自分が一番川だと思ってやって来たら既に先行者がいたという図式だろう。
入りたい気持ちは分かるがその距離は近過ぎる。
申し訳ないがもっと下流側に移動してもらった。
かなり具に探ったのだが釣れたのはウグイのみだった。
ヤマメらしいアタリは2~3回、餌にアタックしてるような強い衝撃を伴うものがあったが、恐らく小型のヤマメだろう。
アワセもせずそのまま放置した。
見切りをつけて僕は支流の双六川に向かった。
これだけ高水が続いていれば、日頃は水深の浅い双六の方に繁殖のために本流から差してくる大型の個体が居るのではないかと考えたからだ。
しかし、先行者が居た。
正確に言うと釣り場至近の駐車場所にクルマが停めてあった。
しかし、釣り師の姿は見えない。
僕がクルマから降りて辺りを見回していると、駐車車両の中から釣り師が一人出てきた。
朝一番で入ったが水が高過ぎて釣り上がれず寝ていたそうだ。
話を伺うとこれからまた入川するつもりでいらっしゃったため僕はそのポイントを譲った。
やっぱりあのポイントだなあ。
僕が朝一番に通常入るポイント、昨シーズンは多くの尺上のヤマメが竿を絞ってくれたポイント。
何本の尺以上のヤマメを獲っただろう。
覚えていないし見当もつかない。
そのポイントで今シーズンはまだ1本しか獲っていない。
期待は出来ないが、昨シーズンの最終釣行でもアタリが非常に遠かったもののなんとか38cmと35cmのヤマメを出した。
そのことを思い出し、賭けに出るつもりで僕は愛着のある通い慣れたポイントへ向かった。
やはり既に対岸にはいつものあの方が竿を振っていらっしゃった。
「今年は釣れんぞ!」
今シーズン初めて言葉を交わした時に聞いた開口一番の科白がこれだった。
地元の釣り師Iさんも同様のことを言った。
「高原は今シーズンまだ二度目なんですよ。一度目は雨の後で雪代が入って全く反応がなかったです。今日も渋いですね。」
「う~ん、今年は来る価値ないかなあ。俺はまだこのポイントで尺を釣ってないよ。信じられる?今年はホントにダメだわあ。」
高原を知り尽くしたIさんが言うのだから間違いない。
でも、梅雨が明けたら水温も上がるし、下流域でもたもたしていたヤマメが一気にここまで来るんじゃないか?などと期待を込めて祈るような気持ちでいた。
残念なことに今日までその祈りは届いていない。
僕が今シーズン高原川で獲った尺以上の個体はたった4本。
信じられない悪い数字だった。
長く通えばそんなシーズンもあるとは思いながらも納得できずにいた。
「腐っても高原」。
せめてそう思わせて欲しい。
岸辺に立って竿を振りながらそんなことを考えていた。
いつものように手前から順に遠くの筋を探っていった。
食い気のあるやつが居れば底ではなく中層付近にまで出てきているだろうと考え、最初はオモリをさほど重くせずに流した。
しかし全く反応はない。
時折波目に合わせて誘いを掛けたが一向に気配はない。
今日も食い気のあるやつはいないのか?
対岸のあの方は比較的よく竿が曲がっている。
今日はアタリが出る日ではないのか?
魚は向こう岸にかたまっているのか?
確かに対岸とこちらとでは底の地形や深さは異なる。
もしかしたら食い気のあるやつは本当に対岸の方に集まっているのかもしれない。
ならば、こちらに残った食い気の無い奴を掛けるしかない。
僕は底を探るためにオモリを付け変えた。
まだベタ底にはとどかせないが、底波に合わせてかなりゆっくり流れるように竿をコントロールした。
底波に入ると、場所によっては表層の流れと正反対の方向に流れる。
まるで魚が餌を咥えて泳いでいるのかと錯覚しそうなほど早く流れる時もある。
そんな流れに仕掛けを入れていた時、ググンと餌を奪って走るようなアタリがあった。
首の振り方が端正ではなかった。
水圧の掛かったホースの口が暴れているかのような首振りだった。
その後の疾走、深場への潜行からニジマスだと分かった。
案の定ジャンプした。
根に入られないよう気を付けながら竿を絞り、時折腰も落として対処して網に入れたのは35~36cmほどの鰭のピンと張った綺麗なニジマスだった。
取り敢えず魚は釣ったので少し安心した。
今の探り方が良かったかなと思いながら同様に底を流していると、再びゴンゴンという明確なアタリが襲った。
すかさずアワセをくれると、先ほどとは異なる整った首振り。
その後の疾走は数メートルで、再び立ち止まって首振り。
これはヤマメだと判断し丁寧に遣り取りをしていると、次第に目印が上に上がってきた。
魚体が水面を割って水飛沫が舞う。
間違いなく尺上のヤマメだ。
僕は慎重にいなし玉網に導き入れた。
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32cmの秋らしい暗い色合いの雄のヤマメだった。
「そりゃあこれくらい釣らせてもらわんとなあ、なんてったってタカハラなんだからなあ」と、安堵の気持ちのあまりかなりの大声で独り言を放っていた。
その後のポイントで尺に満たないヤマメをもう一本獲った。
夕刻に入ったポイントでは35cmのニジマスが一本だった。
尺上のヤマメは一本のみで1日目の釣りを終了した。
一日目の釣りを終えた後、僕は日帰り温泉に浸かり、再び釣り場に戻ってきた。
明朝すぐに川に降りられるようある程度の身支度を整えて車中泊をした。
目覚めたのは午前4時。
雨音が聴こえる。
車外の様子を窺うと結構な振り方だった。
眠いことも手伝って気持ちが萎えてきた。
僕は一旦は釣りを諦めて二度寝した。
次に目覚めたのは午前7時前。
雨は止んでいた。
今の内に竿を出そう。
僕は直ちに川に降りて行った。
逸る気持ちを抑えながらの数投目の投餌でガツガツと噛み付くようなアタリを感じた。
ビシッと鋭くかつ短めのアワセで応答すると「ドンッ」という重い衝撃が手元に伝わった。
よし、完全に乗ったと思い、魚に主導権を握らせないよう竿を絞った。
最初の2~3秒はその場で首を振ってもがいていた。
その後はグルングルンと身を翻しながら必死で糸を振りほどこうとする。
手応えは充分。
かなりの重量感があり、これは40cm近いのではないかと慎重に遣り取りをしていたが、水面に顔を出した魚体は35cmもないくらいの通常の尺上ヤマメだった。
しかも、顔を水面に上げた時に見えたのだが、鈎の掛かり方が非常に心許なかった。
アワセの感触から上顎にガチっと食いこんだように感じたが、上唇の端に僅かに掛かっているだけだった。
「バレるなよ、バレるなよ」と祈りながら相当丁寧に岸に寄せて網に入れた。
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33cmの鼻曲がりの雄だった。
この後36cmのニジマスを一本釣ったところで降雨が激しくなり納竿を余儀なくされた。
最後の逆転劇を狙ってビッグワン狙いの太めの仕掛けで挑んでいたのだが、どうやら今シーズンはもう出番が終わったようだ。
本当に釣れなかった2015年の高原川。
最後にカッコいい33cmの背中の盛り上がった雄のヤマメに出会えたものの、納竿時は殆ど強制終了という感じ。
モヤモヤと胸のつかえが取れないまま翌シーズンまでの禁漁期間に入る。
開幕前は今シーズンも40cmを獲ってやるぞと息巻いていたが、蓋を開けてみれば40cmどころか尺を獲るのにも苦労している有様。
昨シーズンは「良い釣りをしたな」と何度思わせてくれたことだろう。
それに比べると今シーズンは達成感、充足感が本当に少ない。
でも仕方あるまい。
自然相手のことなのだから長く通っていればこういうシーズンもある。
来季また40cmを狙おう。
今年は渋かったけど、それでもやっぱりありがとう、高原川。
来シーズンもよろしく頼むよ。
二日間のタックル
竿:ダイワ 琥珀本流エアマスターメタルチューン 105M
水中糸:フロロ0.8号~1.0号
ハリス:フロロ0.6号~0.8号
鈎:オーナー スーパーヤマメ8.5号、 サクラマススペシャル8号
餌:ミミズ
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川の水位は上がり、ようやく落ち着くかと思う頃に再び激しい降雨があり増水。
その繰り返しだった。
渇水が続いた後の出水は魚の活性も高まるしありがたいのだが、釣りが困難になるほどの増水はありがたくない。
実はもう2015年のシーズンは高原川への釣行はやめようと思っていた。
それくらい状況は良くなかった。
禁漁前の最終週末であろうとそんなことは一切気にせず、気持ちはずっと南飛騨の益田川に向いていた。
しかし、前述の増水は高原川よりも益田川の方が程度が酷かった。
全く竿を出せないわけではないだろうが、ポイントはごく限られるし、その限られたポイントでも釣りにくいだろう。
それに、雨の合間の晴れの日に竿が出せたとしても、すぐそのあとまた雨がちな天候が続く。
これまでの経験から推測すると、出水の前の益田は食いが頗る悪い。
ならば、どうせ悪いのなら最終週末なのだから高原川へ行ってみようか。
さすがにこのままシーズンを終わらせるのは悔し過ぎる。
2015年9月5日と6日、高原川が禁漁に入る前の最終週末の僕の一泊二日の釣行が始まった。
昨シーズンの高原川を振り返るとよく釣れたなとつくづく思う。
確かに盛夏の頃はアタリは遠くなったが、それでも終日竿を振っていれば尺以上のヤマメにはほぼ確実に出会えた。
食いが悪い時期なのだから仕方ない。
一日に一本の尺以上の魚を獲れればそれでいいと思っていたので充分満足していた。
今シーズンも勿論そのつもりでいたがなかなか尺ヤマメは出てこない。
釣れるヤマメは全体的に小振りで痩せた個体も多い。
そして魚の数も少ない。
やはり長引いた雪代のせいだったのかな・・・
思いを巡らせながら飛騨路を北進する。
片道200kmの道程は時折睡魔が襲ってくるが、5分程度の仮眠で何とか凌いだ。
高原川の目当てのポイントに到着したのは夜が明ける2時間以上前だった。
魚が少ないならば、少しでも魚影の濃くなるポイントに入ろう。
そう考えて某堰堤下のポイントに目星を付けた。
朝一番でこのポイントに入るのは初めてだった。
暗いうちから川に降り立ち、見えにくい目印を目を凝らしながら追っていると後方を一人のルアーマンが通り過ぎた。
「無挨拶か・・・」。
気になったが、声をかけないということはかなり下流に行くものだろうと思っていたが、僕の下流側に延竿2本分くらいの距離のところからルアーを放り始めた。
最終週末の朝一番、自分が一番川だと思ってやって来たら既に先行者がいたという図式だろう。
入りたい気持ちは分かるがその距離は近過ぎる。
申し訳ないがもっと下流側に移動してもらった。
かなり具に探ったのだが釣れたのはウグイのみだった。
ヤマメらしいアタリは2~3回、餌にアタックしてるような強い衝撃を伴うものがあったが、恐らく小型のヤマメだろう。
アワセもせずそのまま放置した。
見切りをつけて僕は支流の双六川に向かった。
これだけ高水が続いていれば、日頃は水深の浅い双六の方に繁殖のために本流から差してくる大型の個体が居るのではないかと考えたからだ。
しかし、先行者が居た。
正確に言うと釣り場至近の駐車場所にクルマが停めてあった。
しかし、釣り師の姿は見えない。
僕がクルマから降りて辺りを見回していると、駐車車両の中から釣り師が一人出てきた。
朝一番で入ったが水が高過ぎて釣り上がれず寝ていたそうだ。
話を伺うとこれからまた入川するつもりでいらっしゃったため僕はそのポイントを譲った。
やっぱりあのポイントだなあ。
僕が朝一番に通常入るポイント、昨シーズンは多くの尺上のヤマメが竿を絞ってくれたポイント。
何本の尺以上のヤマメを獲っただろう。
覚えていないし見当もつかない。
そのポイントで今シーズンはまだ1本しか獲っていない。
期待は出来ないが、昨シーズンの最終釣行でもアタリが非常に遠かったもののなんとか38cmと35cmのヤマメを出した。
そのことを思い出し、賭けに出るつもりで僕は愛着のある通い慣れたポイントへ向かった。
やはり既に対岸にはいつものあの方が竿を振っていらっしゃった。
「今年は釣れんぞ!」
今シーズン初めて言葉を交わした時に聞いた開口一番の科白がこれだった。
地元の釣り師Iさんも同様のことを言った。
「高原は今シーズンまだ二度目なんですよ。一度目は雨の後で雪代が入って全く反応がなかったです。今日も渋いですね。」
「う~ん、今年は来る価値ないかなあ。俺はまだこのポイントで尺を釣ってないよ。信じられる?今年はホントにダメだわあ。」
高原を知り尽くしたIさんが言うのだから間違いない。
でも、梅雨が明けたら水温も上がるし、下流域でもたもたしていたヤマメが一気にここまで来るんじゃないか?などと期待を込めて祈るような気持ちでいた。
残念なことに今日までその祈りは届いていない。
僕が今シーズン高原川で獲った尺以上の個体はたった4本。
信じられない悪い数字だった。
長く通えばそんなシーズンもあるとは思いながらも納得できずにいた。
「腐っても高原」。
せめてそう思わせて欲しい。
岸辺に立って竿を振りながらそんなことを考えていた。
いつものように手前から順に遠くの筋を探っていった。
食い気のあるやつが居れば底ではなく中層付近にまで出てきているだろうと考え、最初はオモリをさほど重くせずに流した。
しかし全く反応はない。
時折波目に合わせて誘いを掛けたが一向に気配はない。
今日も食い気のあるやつはいないのか?
対岸のあの方は比較的よく竿が曲がっている。
今日はアタリが出る日ではないのか?
魚は向こう岸にかたまっているのか?
確かに対岸とこちらとでは底の地形や深さは異なる。
もしかしたら食い気のあるやつは本当に対岸の方に集まっているのかもしれない。
ならば、こちらに残った食い気の無い奴を掛けるしかない。
僕は底を探るためにオモリを付け変えた。
まだベタ底にはとどかせないが、底波に合わせてかなりゆっくり流れるように竿をコントロールした。
底波に入ると、場所によっては表層の流れと正反対の方向に流れる。
まるで魚が餌を咥えて泳いでいるのかと錯覚しそうなほど早く流れる時もある。
そんな流れに仕掛けを入れていた時、ググンと餌を奪って走るようなアタリがあった。
首の振り方が端正ではなかった。
水圧の掛かったホースの口が暴れているかのような首振りだった。
その後の疾走、深場への潜行からニジマスだと分かった。
案の定ジャンプした。
根に入られないよう気を付けながら竿を絞り、時折腰も落として対処して網に入れたのは35~36cmほどの鰭のピンと張った綺麗なニジマスだった。
取り敢えず魚は釣ったので少し安心した。
今の探り方が良かったかなと思いながら同様に底を流していると、再びゴンゴンという明確なアタリが襲った。
すかさずアワセをくれると、先ほどとは異なる整った首振り。
その後の疾走は数メートルで、再び立ち止まって首振り。
これはヤマメだと判断し丁寧に遣り取りをしていると、次第に目印が上に上がってきた。
魚体が水面を割って水飛沫が舞う。
間違いなく尺上のヤマメだ。
僕は慎重にいなし玉網に導き入れた。
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32cmの秋らしい暗い色合いの雄のヤマメだった。
「そりゃあこれくらい釣らせてもらわんとなあ、なんてったってタカハラなんだからなあ」と、安堵の気持ちのあまりかなりの大声で独り言を放っていた。
その後のポイントで尺に満たないヤマメをもう一本獲った。
夕刻に入ったポイントでは35cmのニジマスが一本だった。
尺上のヤマメは一本のみで1日目の釣りを終了した。
一日目の釣りを終えた後、僕は日帰り温泉に浸かり、再び釣り場に戻ってきた。
明朝すぐに川に降りられるようある程度の身支度を整えて車中泊をした。
目覚めたのは午前4時。
雨音が聴こえる。
車外の様子を窺うと結構な振り方だった。
眠いことも手伝って気持ちが萎えてきた。
僕は一旦は釣りを諦めて二度寝した。
次に目覚めたのは午前7時前。
雨は止んでいた。
今の内に竿を出そう。
僕は直ちに川に降りて行った。
逸る気持ちを抑えながらの数投目の投餌でガツガツと噛み付くようなアタリを感じた。
ビシッと鋭くかつ短めのアワセで応答すると「ドンッ」という重い衝撃が手元に伝わった。
よし、完全に乗ったと思い、魚に主導権を握らせないよう竿を絞った。
最初の2~3秒はその場で首を振ってもがいていた。
その後はグルングルンと身を翻しながら必死で糸を振りほどこうとする。
手応えは充分。
かなりの重量感があり、これは40cm近いのではないかと慎重に遣り取りをしていたが、水面に顔を出した魚体は35cmもないくらいの通常の尺上ヤマメだった。
しかも、顔を水面に上げた時に見えたのだが、鈎の掛かり方が非常に心許なかった。
アワセの感触から上顎にガチっと食いこんだように感じたが、上唇の端に僅かに掛かっているだけだった。
「バレるなよ、バレるなよ」と祈りながら相当丁寧に岸に寄せて網に入れた。
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33cmの鼻曲がりの雄だった。
この後36cmのニジマスを一本釣ったところで降雨が激しくなり納竿を余儀なくされた。
最後の逆転劇を狙ってビッグワン狙いの太めの仕掛けで挑んでいたのだが、どうやら今シーズンはもう出番が終わったようだ。
本当に釣れなかった2015年の高原川。
最後にカッコいい33cmの背中の盛り上がった雄のヤマメに出会えたものの、納竿時は殆ど強制終了という感じ。
モヤモヤと胸のつかえが取れないまま翌シーズンまでの禁漁期間に入る。
開幕前は今シーズンも40cmを獲ってやるぞと息巻いていたが、蓋を開けてみれば40cmどころか尺を獲るのにも苦労している有様。
昨シーズンは「良い釣りをしたな」と何度思わせてくれたことだろう。
それに比べると今シーズンは達成感、充足感が本当に少ない。
でも仕方あるまい。
自然相手のことなのだから長く通っていればこういうシーズンもある。
来季また40cmを狙おう。
今年は渋かったけど、それでもやっぱりありがとう、高原川。
来シーズンもよろしく頼むよ。
二日間のタックル
竿:ダイワ 琥珀本流エアマスターメタルチューン 105M
水中糸:フロロ0.8号~1.0号
ハリス:フロロ0.6号~0.8号
鈎:オーナー スーパーヤマメ8.5号、 サクラマススペシャル8号
餌:ミミズ
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