先進工業国の中でもアメリカ、イギリス、日本は特に富裕層優遇、多国籍企業、大手企業優遇税制は目に余るものがあります。特に、日本は国債の発行残高は多く、先進国の中では最悪の財政状況にあります。今年中に公債発行残高(国債、地方債の合計)は1000兆円を超えているといわれています。その財政悪化を口実にして「税と社会保障の一体改革」なるデマ宣伝によって、消費税率を13年度まで5%であったものを15年度10%と倍の税率に引き上げようとしています。消費税率1%=2~3兆円ですから、10%になれば、税収は20から30兆円が消費税で占められることになります。これは税収の50%前後に相当します。多くの国民には負担、増税をしながら大手企業、多国籍企業には減税の大盤振る舞いを行う、これが自民党の考えていることです。自民党が大手企業、多国籍企業、富裕層の利益代理人であることを証明しています。
彼らは、15年度消費税率を引き上げるために、公共事業の拡大を通じて、景気の下支え、似非好景気を演出しています。消費税率を倍にして国民(消費者)から10から15兆円の収奪を行うのですから、国内消費が低迷することは自明のことです。その一方で法人税率を35%から25%、20%に引き下げると言明しています。国の財政破綻を放置して大手企業には減税をし、支援を行う。安倍、自・公政権が逆転した発想方法をしているかを示しています。消費税税率引き上げ分をすべて、企業のために補填する構図です。こんなことが許されて良いはずはありません。
<日刊ゲンダイ>
「成長戦略の目玉は、法人税減税とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直しです。法人税減税を欠くと、海外投資家は日本市場を見限り、株式市場が暴落する恐れがあります。だから代替財源の確保は二の次、三の次。どうしても明記したいのです」(市場関係者)
法人税の実効税率(法人税、法人住民税、法人事業税などの合計)は現在約35%。これを段階的に引き下げ最終的に20%台とするよう経済財政諮問会議は提言している。目安は25%だ。実効税率1%は約5000億円に相当するといわれるので、税収はガタ減り。実に5兆円が消える計算だ。
<毎日新聞社説>法人税率引き下げ 財政再建と両立するか
政府が今月中に策定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に、法人税の実効税率を来年度から引き下げる方針を明記することが固まった。安倍晋三首相が1月の経済財政諮問会議で検討を指示し、政府や与党の税制調査会で議論してきた。
膨らむ社会保障費に対応するため国民は消費増税の負担を強いられている。なぜ企業だけ減税されるのか、国民生活にどんなメリットがあるのか、現時点でも説明が不十分だ。そのうえ減税分を穴埋めする代替財源も明確でない。財政再建と両立するのか疑問が拭えない。
法人税の実効税率は約35%で、主要国では米国に次いで高い。欧州やアジアの多くは20〜30%強に税率を下げた。国際競争のなかで国内企業の拠点が海外に流出する「空洞化」に歯止めをかけ、外国から投資を呼び込むため、経済界や諮問会議の有識者らが引き下げを強く求めた。
ただ、政府税調や与党税調では「減税が必要だと出発点でうたうのは抵抗がある」「復興特別法人税を今年度から前倒しで廃止した効果の検証が済んでいない」との慎重論があった。減税で負担が減った分が投資や賃金に回らず、企業の内部留保だけ増えるとの見方もある。そうした疑問が置き去りにされたままだ。
穴埋めとなる財源も検討項目が示されただけだ。研究開発や設備に投資した企業の税負担を軽くする「租税特別措置」は、業種で偏りがあり旧来型の産業への補助金とも言われる。法人減税を実現するなら、この既得権益に踏み込むべきだ。
企業の7割が赤字のため法人税を納めておらず、黒字の企業に偏っている問題もある。課税対象を広げるため、赤字でも事業規模に応じて課税する「外形標準課税」の拡大が検討対象となった。広く薄く税金を担う構造にすることは大事で、議論を深める必要がある。
政府内には景気回復に伴って税収が増える分を財源としてみなすべきだとの考えがある。租税特別措置の見直しや外形標準課税の拡大を徹底すれば、負担増になる企業が猛反発するからだ。しかし、税収増がいつまで続くかはわからない。確実で恒久的な財源が必要なのは当然だ。
政府は2020年度に財政の基礎的収支を黒字にする財政健全化目標を掲げている。消費税率を来年秋に予定どおり10%に引き上げ、毎年2%の経済成長が続くという楽観的な前提でも、20年度に10兆円を超す財政赤字が残ると内閣府は試算している。法人減税でさらに足を引っ張ることがあってはならない。財源など具体策は今年末の税制改正までに決定されるが、国民の納得のいく案を示さなければならない。