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緑に囲まれた静かな大邱(テグ)南東側のサムジョン山の麓。ここには日本人観光客の足が絶えない名所がある。帰化日本人武将の沙也可を祀っている鹿洞書院だ。壬辰倭乱(文禄・慶長の役)当時に兵士3000人を率いた沙也可は、朝鮮にくるやいなや投降する。そして朝鮮側に立って戦う。弾丸の中でも老いた母親を背負って走る農夫を見て「このような君子の国を踏みにじることはできない」と考え、心を変えたということだ。朝鮮人に変身した沙也可は多くの功績を立てる。鳥銃と火薬製造法を朝鮮に伝授し、倭軍を退けるのに決定的な役割をする。このおかげで宣祖から金忠善(キム・チュンソン)という名前を受ける。壬辰倭乱後の活躍も大変なものだった。李グァル(イ・グァル)の乱を平定し、丙子胡乱では清軍500人を切った。
このことが日本のNHKで放送され、沙也可は一躍有名人に浮上した。間違った侵略戦争には反対した義人のイメージに、朝鮮のために戦った点も浮き彫りになり、韓日和合の象徴として扱われている。
その鹿洞書院に今月2日、自民党の大物、二階俊博衆院議員と彼が連れてきた政治家・芸術家ら日本人およそ30人が訪ねて参拝した。二階議員は韓日友好に率先してきた人物だ。靖国参拝の問題をなくそうと別の追悼施設を作ろうと提案するほどだ。二階議員はここで「韓国は必ず和合しなければならない隣国」とし、関係改善の重要性を力説した。言葉だけではなかった。訪韓中は韓国側の人たちとも会い、解決策を議論したという。
最近冷え込んだ韓日関係を解決するための日本側の動きが活発になっている。今月中に自民党議員5人が訪韓する。安倍晋三首相も先月末、額賀福志郎日韓議員連盟日本側会長に会い、「首脳会談のためにあらゆる手段を使ってほしい」と頼んだという。
韓日専門家の間では「このままではどちらにもプラスにならない」という共感が広がっている。特に時間は決して韓国側でない。まず元慰安婦の女性が次々と亡くなっていく。8日にもペ・チュンヒさんが他界した。慰安婦問題が妥結しても、補償を受けるべき犠牲者がいなくなるかもしれない。
韓日関係の悪化による不利益も雪だるま式に膨らんでいる。李明博(イ・ミョンバク)前大統領の独島(ドクト、竹島)訪問直後の2012年秋、韓国のある焼酎会社は東京の有名デパートから「商品を回収してほしい」という通知を受けた。「商品の回転率が悪い」というのが表向きの理由だったが、直感的に韓日関係のためであることが感じられたというのが、関係者の証言だ。その後、「韓国焼酎を飲むのをやめよう」という雰囲気が広がり、販売は落ちた。代表的な韓流製品のマッコリ・キムチ・海苔などの日本国内消費も大きく減った。
最後に今のままでは日本の一方的な対北朝鮮政策を防ぐことができない。日本人拉致被害者問題をめぐる朝日関係の改善は結果的に韓国にはプラスになるかもしれない。しかし韓米との調整なく日本が独自に対北朝鮮問題を処理するのは決して望ましくない。こういう状況で日本が和解の手を差し出せば、どうするべきか。
韓国側にしてみると、先に火をつけたのは日本だ。靖国神社参拝に河野談話の検証など怒りを招く悪材料が多かった。このため適切な措置と謝罪がない限り、何ごともなかったかのように手を握ることはできない。特に朴槿恵(パク・クネ)大統領を含め、世論に敏感な政治家の立場では、選択幅は制限されるしかない。このため専門家は「韓国がうなずけるように日本側が名分を作るべきだ」と口をそろえる。
以前には韓日双方の影の大物がふさがったルートを開いた。しかし残念ながら彼らは他界したり以前のような力を失っている。結局、残された現実的な打開策は、両国の外交官が水面下で動くことだ。外交チャンネルを通じて安倍政権を説得し、韓国が受け入れられるカードが何かをお互い議論して決める必要がある。
こうした中、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官と別所浩郎駐韓日本大使の間の核心チャンネルが作動しないという。朴槿恵政権発足から1年3カ月ほど過ぎたが、行事場所で少し会うこと以外に、2人の間の個別面談は一度もなかった。日本大使館側は「尹長官が会ってくれない」と訴える。外交部側は「昨年4月に面談が予定されていたが、2日前に麻生太郎副総理が突然靖国を参拝したため取りやめになった」とし「その後、日本側から会おうという話がなく、実現しなかっただけ」と釈明する。
理由はともかく、尹長官-別所大使の疎通がないというのは不幸なことだ。元外交部長官ら元老が「ひとまず会ってみるのがよい」と勧めても実現していない。
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長がいつも強調することがある。「紛争は対立でなく外交的な対話を通じて解かなければいけない」と。
昨年、尹長官は前原誠司元外相に会ってこう頼んだ。「政治力を発揮して韓日関係が安定するよう努力してほしい」と。すべてのチャンネルがふさがっている局面だ。政治力であれ外交力であれ、外交のトップから融通性を発揮する時期ではないだろうか。 ナム・ジョンホ国際選任記者