消費税制度が導入されたのは1989年であり、それまでは、所得税、物品税などでした。アメリカ合衆国には国としての消費税制度はありません。また、EU諸国でも食料品など、多くの国民が利用する物品への課税を避ける制度を導入しています。日本のように一部物品以外のすべての商品、商取引に課税するような付加価値税は先進工業国ではありません。そのくらい、日本の消費税制度は重税感が強い徴税制度です。このような制度で10%もの課税を行えば、貧困層の消費は節約以外には打つ手がなくなります。生活はますます苦しくなるばかりです。
自民党は、富裕層、大手企業、輸出大手企業の代理人ですから、貧困層の生活が劣化、苦しくなろうとも知ったことではない。そう考えています。国民の生活費、消費に5%もの課税を増やして、景気が後退しないなどは誰が考えてもありえないことです。バカなことを言うなよと言いたい。
その一方で大手企業の法人税率を引き下げる。中小零細企業は赤字であり、法人税率を引き下げてもその恩恵は全くありません。結果として、大手企業への優遇策といわれても当然です。それ以外に、彼らは、消費税の還付を数千億円規模で受けています。彼らにとって、消費税はうまみのある税制であると考えています。このようなことを放置することは国の財政構造を破綻させる以外の何者でもありませんし、多くの国民の生活破壊を放任することになります。
安倍政権を退陣させるしかないのだと思います。
<信濃毎日社説>消費税10%の是非 家計から声を上げよう
4月から家計簿を付け始めた人が増えたという。スーパーのチラシのチェックに力が入るようになった、との声も聞く。消費税率が8%に上がり、負担はいくら増えたのか、しっかり把握して節約したい。そんな生活防衛にいそしむ家計の姿が見えてくる。家計の達人とは、やりくりのうまさだけでなく、その数字から社会の不合理や矛盾を見つけ、要求と行動につなげること―。佐久市出身の評論家、丸岡秀子さん(1904~90年)が「物価と家計簿」(岩波新書・63年発行)で指摘している。
丸岡さんは戦前、全国を歩いて貧しい農村の生活実態を調べ、「日本農村婦人問題」(37年)の労作を残した。戦後もずっと女性運動の中心にいた人だ。
生活とは、考えること、その中で問題を発見すること、その解決のために行動することの総和だと思う。家計とはそういう生活の数字的表現―という。
丸岡さんが家計簿を分析したのはインフレが続く高度成長期。物価も賃金も下がり続けるデフレの今とでは隔世の感がある。経済がグローバル化し、格差が広がる今の方が家計の将来不安は大きく、行動が求められるのではないか。
<腰折れ懸念はないか>
増税は家計にどう響いているのか。心配された消費の落ち込み、景気の腰折れはないのか。
4月の物価、消費などで気になる統計が出ている。全国消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合が前年同月に比べ3・2%も上がった。バブル崩壊後では最大だ。増税による押し上げ分を除いても1・5%程度になるとみられる。
消費者は買い控えで対抗した。4月の家計調査によると、世帯の消費支出は前年同月より実質4・6%減。減少幅は1989年の消費税導入や、97年の税率引き上げ直後を大きく上回った。だが、政府内には「落ち込みは一時的で、景気は底堅い」との見方が多い。
日銀の黒田東彦総裁は5月の会見で、雇用や所得の環境が改善し「消費の基調的な底堅さは維持される」との見通しを示した。落ち込みも「おおむね想定の範囲内」とし、金融緩和によって投資や消費を活発化させデフレ脱却を図るシナリオに自信を見せた。
景気を大きく左右するのは国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費だ。政府・日銀は家計の不安をより丁寧にくみ取る必要がある。
<賃金底上げの好機に>
鍵になるのが賃金だ。今春の賃上げは政府主導の「官製春闘」といわれ、大手の賃上げ率は15年ぶりに2%を超えた。一方、4月の毎月勤労統計調査によると現金給与総額は前年同月比0・9%増にとどまる。賃上げはまだ地方や中小企業の隅々にまで及んではいない。
その中で期待が持てるのは、求人数が増え、完全失業者数が減ってきたことだ。
とりわけ建設業や飲食業の人手不足が深刻になっている。計画を先送りする建設事業が増えた。外食チェーンでは店を開けられないところもある。建設業界の人件費は大幅に上昇し、店舗などのアルバイト時給も上がりつつある。
成長を制約する「非常に重要な課題」(黒田総裁)との懸念もあるが、この人手不足を経済再生のてこにしたい。低賃金を前提としてきた業界の構造改革を進め、全体の底上げを図るチャンスだ。強い体質への転換こそがデフレ脱却につながるだろう。
政府は外国人労働者の拡大を人手不足対策の一つに位置付け、技能研修生を増やす方針だ。低賃金の土壌を温存しかねない。
消費税増税の次の焦点は、予定通り来年10月に税率を10%へ引き上げるかどうか。是非の判断はことし12月とみられる。
丸岡さんは家計簿の数字を「実感数字」と表現し、個々の家庭にとどめてはいけない、とも指摘している。
物価上昇は賃上げでカバーできるのか、税率10%に耐えられるのか―。政府委員や有識者任せにせず、実感数字をもとに家計からもっと声を上げたい。次の判断で安倍晋三首相が重視すべきは消費者の実感である。