アメリカ政権、軍によるイラクフセイン政権の転覆以来の政治的な危機に落ちっています。そのきっかけを作ったのはとりもなおさずアメリカブッシュ政権です。イラク戦争、フセイン政権の転覆がこのような形でイラク政治を混乱させています。イスラム教のシーア派とスンニ派の対立は宗教上の違いとしてあったとしても、宗派の違いが政治的対立になるように利用してきたのはアメリカ政権です。イラク社会の統治に宗派対立を利用した付けが今来ているのだと思います。イスラム社会、イラクに無用の対立をもたらす政治、軍事介入は止めるべきです。また、イラク政治、社会の選択はイラク国民が自立的に議論し、決めるべきです。そのことこそがイラクの未来を切り開くことに通じることになるのだと思います。
<主張>イラク情勢の緊迫 内戦の危機を防がねば
中東の産油国イラクが内戦の危機に陥っている。
隣国シリアでアサド政権と戦うイスラム教スンニ派の過激派がイラクに侵攻し、北部の複数の都市を短期間で制圧した。過激派は、イラク国内で多数派を占めるイスラム教シーア派主体のマリキ政権打倒を目指し、首都バグダッドに迫っている。イラク軍は空爆で応酬し、戦闘で多数の死傷者が出ている。
国を奪おうとする過激派の行動は言語道断だ。イラク政府は宗派間抗争への発展を防ぎ、事態収拾へ全力を挙げなければならない。
マリキ政権を支える米国は軍事介入を検討しているが、混乱を助長する結果を招きかねない。国際社会の連携により、過激派を孤立させる方策を目指すべきだ。
過激派は「イラク・シリアのイスラム国」と名乗る武装勢力で国際テロ組織アルカイダの流れをくむ。イラクで生まれたが、シリア内戦で武器や資金を得たようだ。勢力を急速に拡大させたのは、北部で多数を占めるスンニ派がマリキ政権に反発し、一部は過激派に協力しているからだ。
同政権は2011年末の米軍撤退後、スンニ派を政府や軍中枢から排除した。長らく独裁体制を敷いた旧フセイン政権はスンニ派主体で、北部には残党も多い。一方、クルド自治政府の治安部隊は混乱に乗じて北部最大の油田都市キルクークを掌握した。宗派や民族間の対立が激化して内戦や国家分裂に向かえば、過激派の術中に陥ることになる。
4月の総選挙を受けて、マリキ首相は連立政権協議を進めているが、スンニ派など他勢力とともに挙国一致体制を急ぐべきだ。
戦火がシリアからイラクに広がったのは、国際社会が16万人の犠牲者を出しているシリア内戦を事実上放置してきたからだ。米国、ロシアなど関係国の責任は重い。とりわけ、イラクに戦争を仕掛け、今日の混乱を生み出した米国は沈静化へ重大な責務を負う。オバマ大統領はイラク沖のペルシャ湾に米海軍の空母を派遣した。だが軍事介入が状況を一層悪化させ、反米感情が高まれば、過激派を勢いづかせることにもなる。
過激派を孤立化させ、資金や武器を絶たねばならない。
米国はマリキ政権に影響力のあるイランと協議を始めたが、サウジアラビアなどスンニ派のアラブ諸国にも協力を求めるべきだ。