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絵のおはなし③ (「黒部峡谷日本画展 ―悠久の大地 黒部より―」からの便り)

2017年11月11日 | セレネ美術館

「絵のおはなし」、これで3回目となりました。

1回目から、「取材」をテーマにし、画家の「取材」とはどんなものかお伝えしようとして、はなしをしてきました。

1回目は、「感動」、2回目は「構想」と「クロッキー」についてはなしをしてきました。

描かれる前に起こるのは、「感動」であり、感動と描く行為の間には、「構想」があるというはなしをしてきました。

「感動」や「構想」を整理し、作品として形にするために、画家は「取材」を行います。

「取材」で最も多く行われるのは、クロッキー。他にも、加筆を行ったり、資料を集めるということをすると、お伝えしました。

今回は、このはなしの続きからです。

 

たくさんのクロッキーを行い、資料を集め、「さぁ描き始めるぞ!」という段階にまできました。

多くの方は、ここから、作品の本制作がはじまるのであろうと。そう考えておられるかと思います。

しかしながら、あまり知られていませんが、実はまだ「取材」は続くのです。

次に行うのは、「デッサン」や「エスキース」です。

 

「デッサン」はこれもみなさん、なじみがあるのではないでしょうか。

描く対象のことをモチーフといいますが、モチーフをしっかりと眺め、形や明暗、質感を鉛筆などの画材で描写することをいいます。

デッサンにより、画家は正確な形のとらえ方や、明暗の調子がどれぐらいであるかを知ることが出来ます。

「エスキース」は、あまり知られていない言葉でしょうか。

簡単に言えば、本制作の下絵のための下絵でしょうか。

絵画には、様々な造形要素がありますが、ものすごく大事なのが、「構図」。

構図とは、画面にモチーフをどう配置していくか、ということです。

「まず、構図!」という言葉があるぐらい、絵を描き始めるうえで、とても重要になる造形要素です。

どんなに巧みな描き上手でも、構図をはずせば、絵にならないといえるぐらいです。

みなさんも写真などで撮影後に、撮ろうとしたものが、ずいぶんと傾いたり、きれてしまったりしていて、がっかりした経験が一度はあるかと思います。

テーマをはっきりとわかる形で伝えるために、よりよく配置するのが「構図」です。

これを、簡単な線や明暗で描いて、構図を研究するのが「エスキース」です。

画家によっては、デッサンのように仕上げる方もおられます。構図を決めたうえで、本当に明暗や配色が当てはまるのか、確かめるためです。

クロッキーも含め、デッサンやエスキースはたくさん描かれ、画家によっては、何百枚も描かれることもあります。

 

手塚雄二 「幻の瀧(素描)」

 

このような「取材」という過程をたどって、やっと本制作が始まるのです。

「ふぅーーー」、ため息が出ますね。

 

 

「いやいや、本制作で描きながら、明暗なり形なり、構図?をすればいいのでは?取材?なんでそのようなめんどうなことをするの?」

と考えられたかたもいるのでは!するどい!!

本制作上で、デッサンやエスキースを行えば、効率的ではないかという考え方です。

実はこれは、そううまくいきません。

例えば、形や明暗と同時に色の表現を行えるでしょうか。

色は隣り合う色によって変化します。

だから、こうだと思った明暗や配色も、画面の中で、何度もやり直すことが行われます。

混色には、時間がかかります。その上、何度も失敗をする。絵具をどんどん使用しなければいけない状態に陥ります。

その上、エスキースを行っていないので、構図も考えることに。何度も修正を加えることになります。

本制作では、様々な制作過程をふみます。下絵から始まり、仕上げまでの過程をこのような状況下で行うのは、無理があります。

天才というイメージがある画家も、無二の才と、経験がなければ、「取材」を経ずに制作することは、とてもできるようなことではないのです。

 

 

今回は、ここまで。次回は、「取材」に使う画材について、おはなししたいと思います。

 

 

 手塚雄二 「幻の瀧」展示風景

 

作品を描くために、画家は、クロッキーやデッサン、エスキースを行います。

多くの美術館では、このような作品をまとめて展示してあるかと思います(クロッキー、デッサン、エスキースをまとめて「素描」ということもあります)。

どれが、どんな目的で描かれたものか、デッサンなのか、エスキースなのか。はたまた、これはクロッキー?

そのような見方で、想像してみてみるのもいいかもしれません。

疑問に思ったことがあれば、ぜひ、スタッフにお声がけを。素敵な発見があるかもしれません。

 

 

開館時間は、9時~17時30分(入館は、17時まで)。

休館日は、毎週火曜日。

入館料:700円

現在、セレネ美術館3Fでは、「峡谷VS扇状地 志水哲也×米田利昭」写真展を開催いたしております。

入場券には、どちらの展覧会もセットになっており、ご覧いただけます。

二人の写真家が眺めてきた、「峡谷」、「扇状地」とは!

同じ黒部をテーマにしており、「絵画」と「写真」を比較して、鑑賞するのも楽しいかと。ぜひ、ご覧ください!!

※写真展の展示期間は、11月23日(木・祝)までです。

 

 

   

昨日と本日早朝、3階からの紅葉の様子。雨天も紅葉がきれいです。

運が良ければ、今後、奥の山に雪が降り、紅葉と雪山のセットがみられることもあります。

 

黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館

富山県黒部市宇奈月温泉6-3

TEL0765-62-2000 セレネHP