「絵のおはなし」、これで3回目となりました。
1回目から、「取材」をテーマにし、画家の「取材」とはどんなものかお伝えしようとして、はなしをしてきました。
1回目は、「感動」、2回目は「構想」と「クロッキー」についてはなしをしてきました。
描かれる前に起こるのは、「感動」であり、感動と描く行為の間には、「構想」があるというはなしをしてきました。
「感動」や「構想」を整理し、作品として形にするために、画家は「取材」を行います。
「取材」で最も多く行われるのは、クロッキー。他にも、加筆を行ったり、資料を集めるということをすると、お伝えしました。
今回は、このはなしの続きからです。
たくさんのクロッキーを行い、資料を集め、「さぁ描き始めるぞ!」という段階にまできました。
多くの方は、ここから、作品の本制作がはじまるのであろうと。そう考えておられるかと思います。
しかしながら、あまり知られていませんが、実はまだ「取材」は続くのです。
次に行うのは、「デッサン」や「エスキース」です。
「デッサン」はこれもみなさん、なじみがあるのではないでしょうか。
描く対象のことをモチーフといいますが、モチーフをしっかりと眺め、形や明暗、質感を鉛筆などの画材で描写することをいいます。
デッサンにより、画家は正確な形のとらえ方や、明暗の調子がどれぐらいであるかを知ることが出来ます。
「エスキース」は、あまり知られていない言葉でしょうか。
簡単に言えば、本制作の下絵のための下絵でしょうか。
絵画には、様々な造形要素がありますが、ものすごく大事なのが、「構図」。
構図とは、画面にモチーフをどう配置していくか、ということです。
「まず、構図!」という言葉があるぐらい、絵を描き始めるうえで、とても重要になる造形要素です。
どんなに巧みな描き上手でも、構図をはずせば、絵にならないといえるぐらいです。
みなさんも写真などで撮影後に、撮ろうとしたものが、ずいぶんと傾いたり、きれてしまったりしていて、がっかりした経験が一度はあるかと思います。
テーマをはっきりとわかる形で伝えるために、よりよく配置するのが「構図」です。
これを、簡単な線や明暗で描いて、構図を研究するのが「エスキース」です。
画家によっては、デッサンのように仕上げる方もおられます。構図を決めたうえで、本当に明暗や配色が当てはまるのか、確かめるためです。
クロッキーも含め、デッサンやエスキースはたくさん描かれ、画家によっては、何百枚も描かれることもあります。
手塚雄二 「幻の瀧(素描)」
このような「取材」という過程をたどって、やっと本制作が始まるのです。
「ふぅーーー」、ため息が出ますね。
「いやいや、本制作で描きながら、明暗なり形なり、構図?をすればいいのでは?取材?なんでそのようなめんどうなことをするの?」
と考えられたかたもいるのでは!するどい!!
本制作上で、デッサンやエスキースを行えば、効率的ではないかという考え方です。
実はこれは、そううまくいきません。
例えば、形や明暗と同時に色の表現を行えるでしょうか。
色は隣り合う色によって変化します。
だから、こうだと思った明暗や配色も、画面の中で、何度もやり直すことが行われます。
混色には、時間がかかります。その上、何度も失敗をする。絵具をどんどん使用しなければいけない状態に陥ります。
その上、エスキースを行っていないので、構図も考えることに。何度も修正を加えることになります。
本制作では、様々な制作過程をふみます。下絵から始まり、仕上げまでの過程をこのような状況下で行うのは、無理があります。
天才というイメージがある画家も、無二の才と、経験がなければ、「取材」を経ずに制作することは、とてもできるようなことではないのです。
今回は、ここまで。次回は、「取材」に使う画材について、おはなししたいと思います。
手塚雄二 「幻の瀧」展示風景
作品を描くために、画家は、クロッキーやデッサン、エスキースを行います。
多くの美術館では、このような作品をまとめて展示してあるかと思います(クロッキー、デッサン、エスキースをまとめて「素描」ということもあります)。
どれが、どんな目的で描かれたものか、デッサンなのか、エスキースなのか。はたまた、これはクロッキー?
そのような見方で、想像してみてみるのもいいかもしれません。
疑問に思ったことがあれば、ぜひ、スタッフにお声がけを。素敵な発見があるかもしれません。
開館時間は、9時~17時30分(入館は、17時まで)。
休館日は、毎週火曜日。
入館料:700円
現在、セレネ美術館3Fでは、「峡谷VS扇状地 志水哲也×米田利昭」写真展を開催いたしております。
入場券には、どちらの展覧会もセットになっており、ご覧いただけます。
二人の写真家が眺めてきた、「峡谷」、「扇状地」とは!
同じ黒部をテーマにしており、「絵画」と「写真」を比較して、鑑賞するのも楽しいかと。ぜひ、ご覧ください!!
※写真展の展示期間は、11月23日(木・祝)までです。
昨日と本日早朝、3階からの紅葉の様子。雨天も紅葉がきれいです。
運が良ければ、今後、奥の山に雪が降り、紅葉と雪山のセットがみられることもあります。
黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館
富山県黒部市宇奈月温泉6-3
TEL0765-62-2000 セレネHP