かねてご紹介したいと思っていた御狼堂(おえんどう)に行ってきました。
場所は宇奈月消防署の前です。
この階段の先に目指すお社はあります。
あらためて見るとびっくりするくらい高かったです。
そういえば消防隊員さんがこの階段を上り下りして訓練しているのを見たことがあります。
おや、階段下に由来書きがありました。
ふむふむ。昔、宇奈月が桃原(ももはら)といわれていたころ、ここに猟師の治郎左エ門さんが
田畑を開きました。ところが猪熊の群れがここを襲い、田畑を荒らしていました。
すると大きな山狼が現われ田畑を守り、朝夕に見回りをしてくれました。
そのため治郎左エ門さんの家は発展して、多くの分家ができるほどになりました。
これはこの狼さまのおかげであると御狼之神として奉り、お堂を建立してこの地の鎮守としました。
神威があり、この地の木を切る者には災いがありますよ・・・とのことです。
なるほどなるほど。
あかずきんちゃんなど西洋のお話では狼は悪者にされていますので、ついそう思い込んでしましますが、
これは牧畜を営む西洋人にとって狼は家畜を襲う悪者だったためですね。
しかし日本では、鹿や猪、猿などの害獣を狩り、農地や作物を守ってくれる狼は信仰の対象にもなりました。
狼(おおかみ)は大神(おおかみ/偉大な神様)の意味ともいいますね。
と、ハアハア息をはきながら階段を上りおえますと、お社がありました。
小さなお堂でございます。
ところで階段や社殿の前の雪には、昨日でしょうか初詣に訪れられた人たちの足跡が残っていました。
今でもひっそりと尊崇を集めているようです。
おや、お社の隣にも由来書きがあります。早速読んでみましょう。
え~、大永7年丁亥(ひのとい)の年、(1527年。室町時代後期)に木地師の初代小椋宗右エ門さんが
夢のお告げに導かれ、僧ヶ岳から御尊体を奉りました。
これが御狼堂の祖とのことです。(残絵ながら御尊体が何かは書かれていません)
そして慶長のころ(徳川家康、秀忠の時代)、桃原に開いた田畑を猪熊猿の群れが襲い苦労していました。
すると白く大きな山狼がこの地を守ってくれました。これは不思議のことと、治郎左エ門さんは
慶長8年癸卯(みずのとう)の年(1603年)に御狼之神として奉り、お堂に祭って鎮守としました。
そのおかげで家は隆盛し分家もたくさん出来ました。(ここは先の由来書きとちょっと順番が違いますね)
ところが故あって(なんの理由かは書かれていません)、昭和9年(1934年)、宇奈月神社に合社することとなりました。
そのため古跡となったのですが、神威は変わらず、この地の木を切ったりすると災いがあります。
また商売繁盛の神様でありますことを、記します。
と、あります。(宇奈月神社についてはこちらをご覧ください)
古跡ではありますが、先に書いたとおり今も訪れる人がいます。
お社の入口には立派な額が。
額の下に小さな賽銭箱もありましたので、お賽銭を入れ、お参りしてきました。
その横にこんな額もかかっていました。
大口真神(おおくちのまかみ)、神としての狼の尊称ですね。
大きな口で噛んで害獣を退治するという意味でしょう。
下は松葉の文様だと思います。
常緑の松は吉祥を表し、また松葉は離れないことから縁起がいいとされています。
それにしてもこの絵はかわいいですね。
ここでいう狼はもちろんニホンオオカミのことですが、ご存知のように絶滅してしまいました。
そのためやはり鹿や猪、熊が増えすぎたようです。
狼の目撃証言もあるので、どこかに生きていてることを願っています。
狼は日本犬となって広く生き残っているのでは? とも考えましたが、
(昔は世界各地でそれぞれ狼を飼いならし、それが犬となっていったと思われていました)
最近の研究では、東アジアの辺りで狼を飼いならしたのが世界の犬の起源とされています。
そのためニホンオオカミが日本犬になったわけではないのでした。残念。
ただ犬と狼は混血ができますから、ニホンオオカミの血を引く和犬がいる可能性はありますね。
さて狼ついでに。
「送り狼」という言葉があります。
いい人の振りをして親切に送っていって、いざとなったらアレびっくりなことを指します。
もともとは妖怪に送り狼というのがいて、そこから由来しています。
送り狼は人の後ろをついて歩いて、人が転んだら襲うそうです。
転ばなかったら守ってくれるみたいです。ただ地方によっては転ばせようとしてくるとも。
でも御礼をいったりすると襲わないとか。いいやつだったり悪いやつだったりいろんな話しが入り乱れています。
そしてニホンオオカミは本当に人の後ろをついて歩いたそうです。
どうやら監視する習性のためと考えられています。
それを人間が良い事にとったり、悪い事にとったりすることによって、
民話にさまざまなバリエーションが生まれたのではないかとのことでした。
長い文になってしまいましたが、機会がありましたら御狼堂に足を運んでみてください。
そして狼について思いをいたしていただければ幸いです。
宇奈月国際会館セレネ
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