今朝からの寒波で、宇奈月は又雪に埋もれてしまいました。
良い季節には、テラスにテーブルとイス、そしてパラソルを出して
お客様に寛いでいただいているのですが、そのテラスには1メートルくらい雪が積もっています。
唸るような風の音も聞こえてきますが、セレネはあったかです。
ん?風の音?「風の歌を聴け」?無理やりこじつけてしまいましたが(苦笑)
今回は村上春樹氏の長編最新作「騎士団長殺し」のことをどうしても書きたかったのです。
自分の好きな小説って、独断と偏見で自分の環境との共通点を探し出してしまうことはないですか?
この性癖は私だけかもしれません
それでこの「騎士団長殺し」の中に、妄想によっていくつかの共通点を見つけました。
この題名「騎士団長殺し」は虚をつかれますよね、それナニ?って感じです。
モーツァルトの歌劇の中に「ドン・ジョパンニ」がありますが
「騎士団長殺し」は「ドン・ジョパンニ」の歌劇の一場面なのです。
モーツァルトといえば、宇奈月はモーツァルトの生誕地に地形が似ているということで、
毎年9月に街を上げてモーツァルト音楽祭が開かれています。
今年も9月の3日間モーツァルト漬けの宇奈月でした。
「ドン・ジョパンニ」もセレネ大ホールで上演されたこともあります。
高名な日本画家によって描かれた「騎士団長殺し」と名付けられた絵が
当画家のアトリエの屋根裏から出てきます。
世に出ていたらきっとその日本画家の代表作になっただろう大傑作が
秘かに屋根裏に隠されていたのです。
その絵には日本の飛鳥時代の衣装をまとったドン・ジョパンニが騎士団長を刺殺し
騎士団長の娘のドンナ・アンナが呆然と見ているという図が描かれています。
そうなると「騎士団長殺し」という突飛な題も身近に感じられます。
以前、セレネで「月の美展」という展覧会を開催させていただきましたが、その中に
富山市出身の日本画家、篁牛人が描いた日本画がありました。
屋根裏から出てきた絵はきっとこんな作風ではなかったろうかと妄想しています。
(牛人の描く女性もふっくらとしたうりざね顔で衣装も飛鳥時代風です)
最後の妄想(笑)
アトリエ裏の雑木林に小さな祠と石積みの塚があり、その中から仏具と思われる
鈴が出てきます。
高僧になるための修行として、鈴一つを持って死を覚悟して石塚に入る僧侶。
鈴の音が聞こえなくなった時が僧侶が息絶えた時だといいます。
私の妄想は、剱岳の頂上で見つかった奈良時代末期から平安時代初期に作られたらしい錫杖と
祠の鈴が重なり合います。
剱頂上で見つかった錫杖も、とってもミステリアスな話なのです。
明治39年に決死の覚悟で未踏峰と思われていた剱岳に登る陸地測量隊がついに登頂し
そこで見つけたものは、修験者のものと思われる平安時代に作られたらしい錫杖でした。
「以前、剣に登頂した者がいる」
その昔、地獄の山として恐れられてきた剱に登った人がいたとは。
まぁ鈴と錫杖の違いはありますが(苦笑)、修行として人間の極限に挑む気持ちは同じだったのでしょう。
とんでもなく高くそびえ立つ立山連峰、その間に切り立った剱岳、
昔は立山は極楽浄土、剱岳は地獄と見立てられていました。
なのに今は気楽に1日足らずで行って帰ってこれて「さっきまであの山にいたんだよな~」と
立山連峰を仰ぎ見ることができます。そしてとっても不思議な気持ちになります。
とりとめなく書いてしまいましたが、吹雪の日の与太話でした。
これで今年の妄想納めとします。
来年もどうぞよろしくお願いします
来年1月1日から開館しております。