落ち込んでしまったとき、何か悲しいことがあったとき、心が弱ってしまったとき…そういうことは誰にでもあることです。そんなとき、あなたを元気づける言葉は、どんな言葉ですか?きっと、人それぞれに、自分を立ち直らせる「格言」を持っているのではないでしょうか?
「だいじょうぶ だいじょうぶ」…この絵本のタイトル、何かいいと思いませんか?あなたがとっても困っているとき、「だいじょうぶ だいじょうぶ」と、誰かに言われたら、どんな気持ちになりますか?人に言われなくても、自分自身の心の中で「だいじょうぶ だいじょうぶ」…と唱えると、どんな気分になりますか?きっと、誰もが、何となく、ほっとした安心感を覚えるのではないでしょうか。
いとうひろしさんのこの絵本は、A5判程度の絵本にしては小さな絵本ですが、そんな安心感がいっぱい詰まった、とっても素晴らしい絵本です。 絵のタッチは、フリーハンドの線画に恐らく色鉛筆で着色してあるのだと思いますが、とってもほのぼのとした印象です。
主人公の男の子が、まだ小さかった頃(いまより ずっと あかちゃんに ちかく…という表現をしています。とっても素敵な表現の仕方ですね)、そして男の子のおじいちゃんが、今よりずっと元気だった頃…お話はそんな設定で始まります。 男の子はおじいちゃんっ子なのでしょう。おじいちゃんと散歩をしながら、いろいろなものを見たり、教えてもらったりします。世の中には、危険なことも、難しいことも、不安になることもたくさんあることを、男の子は知ります。
そんないろいろなことを知ると、男の子は自分がこれから先、大きくなることに不安を感じます。誰だって、そうですよね。これから先、自分の未来が必ずしも「バラ色」ではなく、悲しいことも、イヤなことも、恐ろしいことも、いろいろなことがあるだろうな…と考えたら、つい不安になりますよね。 そんなとき、おじいちゃんは男の子の手を握り、おまじないのようにつぶやきます。 「だいじょうぶ だいじょうぶ。」 …男の子の周囲には、いじめっ子だっています。仲間はずれにされることもあります。車で事故に遭う危険性だって、空から飛行機が落ちてくる危険性だってあります。転んで、ケガをすることだってあります。難しい勉強だってしなくちゃならなくなります。
でも…「だいじょうぶ だいじょうぶ。」…おじいちゃんのおまじないの言葉です。どんなことでも、いつも悪いことばかりじゃありません。いいことばっかりじゃないけれど、決して悪いことばかりではありません。
「だいじょうぶ だいじょうぶ。」 男の子は、おじいちゃんと何度も何度もその言葉を繰り返します。今まで、不安に思っていたことも、怖いと思っていたことも、イヤだなと思っていたことも、ずっとそのままではないことを、男の子は学んでいきます。
そして、男の子が大きくなって、そしてその分、年をとったおじいちゃん。 だから、今度は大きくなった男の子が、年をとって体が弱ってしまったおじいちゃんに声をかけます。「だいじょうぶ だいじょうぶ。」だいじょうぶだよ、おじいちゃん。
今までのこのコーナーで、絵本の世界の素晴らしさを記しました。絵本には、いろいろな世界があって、その内容によって、いろいろなことを感じます。ぐっと心に残る感動的なお話もあります。おもわずニッコリしてしまう楽しいお話もあります。勇気づけられるお話もあります。
でも、この「だいじょうぶ だいじょうぶ」ほど、読後に爽やかさを感じたことはあまり記憶にありません。「爽やか」という言葉が適切なのかどうか、ちょっとわかりませんが、何か心のモヤモヤが消えるというのでしょうか、フ~と息を吐くにしても、安堵感というのでしょうか、心が軽くなるというのでしょうか、とにかくそんな感じなのです。前述の通り、絵のタッチもまさにぴったりで、重くもなく軽くもなく、ほのぼのと心が柔らかくなる…そんな感じの絵なのです。
心が疲労してしまったとき、先々に得体の知れない不安を感じて重い気分になってしまっているとき…そんなときに絶対におすすめしたい、素晴らしい絵本です。「だいじょうぶ だいじょうぶ」…お話の中で、何度となく繰り返し出てくるこのおまじないの言葉…きっと誰にでも、必ず効く素晴らしい言葉の薬ではないでしょうか。
今はいじめによる自殺が大きな事件として報道されます。いじめの世界は、必ずしも子どもだけの世界ではなく、大人にだっていわゆる「パワーハラスメント」もあります。何をやってもうまくいかないで、悲観的にもなります。先々の生活も不安だらけです。 でも…「だいじょうぶ だいじょうぶ」と心の中でつぶやいてみてください。ほら、心が信じられないほど軽くなるでしょ?そして、あなたの心が軽やかになったら、今度は困っている人に、悩んでいる人に、不安を抱えているひとに言ってあげてください。 「だいじょうぶ だいじょうぶ」…って。
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