序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

プレーバック劇団芝居屋第40回公演「立飲み横丁物語」NO10

2022-12-08 19:57:15 | 演出家
残念ながら日本ベスト8ならずという結果でしたが、ナインの健闘に拍手。
といった所でこちらも負けずに行きたいと思います。

5 同夜・公園

祭りも無事終わり、立飲み横丁で親分の振る舞い酒を飲みました新司と金吾、酔い覚ましに公園で休んでおります。兎に角初めてそれぞれの持ち場を任された二人。
デビュー戦を大過なく過ごしたことで上機嫌です。

金吾 「でも、いいな焼き物は。俺なんかズーッと地べたに這いつくばりすよ」
新司 「贅沢言うんじゃねえや。風船釣りはな祭りじゃ外せないものなんだよ」
金吾 「まあ、そうなんすけどね、準備が大変なんすよ、空気入れで一個づつ膨らまさなきゃならねえんだから・・」
新司 「そりゃ仕事だ、しょうがねえや。文句言う前に入って三か月で風船釣り任された事を感謝するんだな」
金吾 「そりゃしてますよ。ええ、分かってます」


そこに久しぶりの的屋商売に祝い酒に酔いしれた凛子と仁が現れます。

新司 「凛子姐さん、お疲れさんです」
凛子 「おや、何だい。あんたら帰ったんじゃないのかい」
新司 「酔い覚ましに一休みです」
凛子 「じゃ。あたしも一休み。仁さん、あんたも休んでいきなよ」
仁 「そうですね、自分も一休み。モッキリが効きました」


開放的になって酒なんか入りますと、ちょっと乙な気分になるのは世の常でね。
自分を抑え込んでいる反動といいますかね、本音といいますかそんなものがポロリ。

凛子 「あたし達が来る頃には出来上がってたもんね」
仁 「ちょっと調子に乗りすぎましたね。でも今日は楽しかったな」
凛子 「うん楽しかった、的屋冥利に尽きる日だったね」
仁 「うん、そうやって無邪気に楽しんでいる凛子さん、自分好きですね」
凛子 「えっ、な、何言ってんの」
仁 「いや、ホント。凛子さん、あなたは魅力的な人だ」
凛子 「ヤダ、そんなこと言って・・・」


こうなりゃ目撃者は当然の如く冷やかしますよ。という訳で稚児の戯れ。

二人 「ヒューヒュー!」


そこへ冷や水をかける言葉が降って来ます。
瑠香 「出来るかどうかは、今日の結果次第ですね」
誠 「やっぱりそうだよね」
凛子 「ねえねえ、何の話?」
瑠香 「今日の祭礼の後の感染者がどうなるかって話ですよ」
凛子 「ああ、それね」
誠 「金曜日から始まったんだから潜伏期間が三日だとして、金曜日の分の結果は明後日出るんだ」
凛子 「そうか、結果に寄っちゃ後の縁日やお祭りがどうなるか決まるんだね」
誠 「一応試しって事だからね」



まだまだ安心のできる状況じゃないんです。ですが彼方にかすかな光も感じている訳です。
その光が・・・

誠 「三年前からずっと中止になってるけど、ほらカムイ公園で毎年恒例になっていたジャズフェスティバルあって何万人もの観客で賑わっていたんだよ、知らないの」
凛子 「ああ、そういえばそんなのがあったね。でもあたしジャズ駄目だからね。それがなんでワチ等と関係があるのさ」
誠 「三澤さん五年前のコンサートの時に露店を使ったんだよ。その三澤さんが十月に予定のあるジャスフェスに噛んでる様なんだ」
凛子 「えっ、どうしてわかったの、その事」
誠 「凛子さん達が来る前に三澤さんと連れのイベントプロデューサーの中村さんの話を小耳にはさんじゃってさ」
凛子 「どんな?」
誠 「その野外コンサートがもし実現すればコンサート会場のカムイ公園を取り囲む様に露店並べるらしいんですよ」
凛子 「あら、露店を。それは惹かれるね」


でもそんな話もまだ現実味を持って話せる段階じゃないんですね、これが。

誠 「多分、三澤さんが今ここに来て瀬村の親分と会うっていうのも無関係じゃないんじゃないかな」
金吾 「じゃ、じゃ、もしかして・・」
凛子 「ああ、そりゃ無理だわ。次の縁日も開催できるかどうかなのに、十月なんて先の事考えられないよ」
新司 「そうすよ。一つ一つコツコツとやりましょうや」
凛子 「そうだね、さて夢物語はこの位にして帰るとするか」
誠 「でも、もしそうなったら商工会議所は全面的に協力するからね」
瑠香 「日日江南新聞も協力します」
凛子 「ハイハイ、そうなったらよろしくね。さあ、みんな帰るよ」



そこへ総一がランニング姿で現れます。
祭りが無事に済んだか心配になった総一は仁に様子を見に行かしたのですが、仁は飲みすぎてこの体たらくです。無言の圧力をかけていきます。


新司 「爺さんがよくやるね」
金吾 「最近、夜走る人って多いすね」
凛子 「なんでかね」
瑠香 「多分、夜だと人と会わなくていいからじゃないんですか。コロナの影響ですよ」
凛子 「ああ、そういうことか」
金吾 「ガス、ずいぶん濃くなって来たな」
新司 「ああ、星ももう見えねえ」
凛子 「さあ、行くよ」


さて無事に例祭を終え、明日の希望の手がかりを得た凛子達の前に現れた三澤なるものがどんな人物なのか、また仁と凛子の関係は・・・
次回第六場へと続く。

撮影 鈴木淳


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