サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

地域における温室効果ガスの排出量推計の問題点

2009年11月15日 | 気候変動緩和・低炭素社会

 2008年6月の地球温暖化対策推進法の改正により、都道府県及び特例市以上の地方公共団体に対し、新実行計画計画の策定が義務づけられた。

 新実行計画では、地球温暖化防止に係る施策の体系や優先順位付け、実行体制等を定めるとともに、地域における温室効果ガスの削減量の現況と将来目標を定量的に検討する必要がある。

 さて、この定量的検討はかなり問題が多い。市町村や都道府県単位の温室効果ガスの排出量の推計に必要な統計が不十分なためだ。部門別排出量の内訳の傾向や他地域との違い等の大体を把握することはできたとしても、地域における排出量の推移を経年的に把握し、施策の効果等の進行管理を行うことは、根幹において困難である。

 新実行計画の策定マニュアルが作成されていて、推計方法は標準化されてきているが、あらゆる地域で推計が可能になっても、推計結果の信ぴょう性があるかどうかは別問題である。

 特に問題になる点を下記に示す。

・製造業における排出量は石油等消費統計が廃止され、エネルギー統計に移行している。このエネルギー統計のデータが安定していないといわれ、データの信ぴょう性が課題となっている。また、1990年比で現状の排出量を評価することは困難である。

・製造業における排出量では、地域内の工場等のエネルギー消費量等が把握されていない場合、業種別の排出原単位に、活動量(生産額)を乗じて算出することになるが、地域の実態に応じた排出原単位の設定が困難である。

・同様に家庭部門における排出量は、世帯構成別等の排出原単位(1世帯当たりの二酸化炭素排出量)に世帯数を乗じて算出することになるが、排出原単位の地域データは所在しない。家計調査や地域独自の環境家計簿による調査結果等があればよいが、全ての地域をカバーするものではない。

・業務部門の排出量は、業務ビルの用途別の床面積に排出原単位を乗じて算出することになるが、用途別床面積の把握、排出原単位の地域データの把握に問題を残す。

等々、全ては書かないが、排出量の推計を行ったことがある行政職員やコンサルタントであれば、誰もが思うところであろう。

 要するに、地域の排出量の推計といっても、排出原単位の地域データが把握されていないのだから、排出原単位を改善する地域施策の効果を、地域独自の排出量の推計では把握することはできない。

 解決策として、地域の自主性に任せる排出量の把握ではなく、国による地域排出量統計の整備を提案したい。廃棄物分野では、市町村別に一般廃棄物の排出量や施設データが毎年報告されている。地球温暖化分野でも、廃棄物分野と同様の統計整備ができるはずである。

 一方、地域においては、地域の排出者の排出実態を把握する仕組み(事業者やビル等からの排出実態の報告制度等)を設け、状況把握と個別指導に用いる。また、地域施策の進行管理のため、実施効果をできるだけ実証的に把握することが望まれる。この際、報告方法や施策の効果測定の方法論は全国で統一的なものとし、地域間で共有できるように整備していく必要がある。
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