一般的にエコカーには、①ガソリンやディーゼルといった従来の石油系燃料で燃費のよい車と②電気や燃料電池、水素のように従来の石油系燃料以外を使う代替エネルギー自動車がある。
代替エネルギー自動車のうちでは、燃料電池車や水素電池車の実用化にはもう少し時間がかかり、現在では電気自動車が普及の中心になっている。ただし、電気自動車も一回の充填での走行可能距離に限界があり、都市内や観光地内等の限られた用途が中心にならざるを得ない。 電気自動車については、走行性能やあるいは価格的な問題、充電施設の整備の課題等があるため、将来的にも、中距離・遠距離の本格走行用には使われにくいだろう。
天然ガス自動車、現在タクシーで使われているLPガス車は、石油系燃料の代替という意味では代替エネルギー車であるが、枯渇性の化石資源を使うことには変わりはなく、代替エネルギー自動車とはいえない。なお、バイオマスから生成した燃料(エタノール)を使うことも代替エネルギーである。ただし、現在はエタノールはガソリンに混ぜて使われている。将来的にもエタノール製造に用いる植物資源が食糧や飼料等とバッティングすることが課題となる。
代替エネルギー自動車の多様な選択肢
代替エネルギー自動車の選択肢は多様化してきている。旅客輸送(乗用車)と貨物輸送(トラック)の場合、また短距離か長距離か、都市部か地方部といった条件によって、適所適材で代替エネルギー自動車の棲み分けが検討されている。また、近年では、「軽自動車」よりも小型の車両であり、かつ電力を動力とする「超小型モビリティ」も開発が進んでいる。電動スクーター、ミニカーの他、現在では公道を走行できないセグウエイ等の立ち乗りタイプもある。
こうした多様な選択肢が出てくることで懸念される点もある。それは、走行性能が異なる自動車等が同じ場所を走行すると、渋滞や事故の原因になりやすいということだ。このため、走行レーンを区別することが必要になるが、歩道や自転車道、バス専用レーン等に加えて、さらに別の走行レーンを設置することは空間制約上、難しいのではないだろうか。
都市による代替エネルギー自動車の選択と集中
代替エネルギー自動車の多様化が、混在による弊害を来さないようにするには、都市内を走行できる自動車の種類を限定し、特定の交通手段に集中させることが考えられる。例えば、中心市街地では通過交通を徹底して排除し、電気自動車(バス、マイカー)と自転車しか走行できないようにしたらどうだろうか。電気自動車は走行距離が短いため、充電施設の整備が課題になるが、都市内に走行を限定し、充電施設を中心市街地に集中させれば問題とはならない。
さらに、電気自動車も排除し、とにかく鉄道駅やバスターミナルを拠点としたコンパクトな都市づくりを徹底することで、徒歩と高齢者等身体弱者向けの補助的交通手段だけに集中させる選択をすることもあるかもしれない。
東京では昔、数多くの路面電車の路線があったが、今では荒川都電を残すだけとなっている。荒川都電の駅を降りると、すぐに駅前にアーケードの商店街がある。アーケードの中は歩行者のみが優先。公共交通と徒歩の組み合せで、街をつくるとこうなるだろうという古くて、新しい事例である。