今回は、白河市の「白河エナジー株式会社(以下、白河エナジー)」、会津若松市・喜多方市の「会津電力株式会社(以下、会津電力)、について、各々のたちあがりの経緯と事業の特徴、今後の展開方向について、インタビュー結果をもとに概要を紹介する。
●中小企業同友会の危機感とビジネスチャンスの見出し
白河地域再生可能エネルギー推進協議会(エネ協)は2012年1月に発足した。代表である商工会議所の副会頭・鈴木俊雄氏は地元で不動産業を営んでいる。原発の風評被害で地元中小企業がダメージを受けるという危機感が募っていたなか、FITに地元のビジネスチャンスを見出した。
エネ協の構成員は広く募り、建設事業を始めとした地元企業が手をあげた。中小企業同友会のメンバーの多くが会員となり、最初は20の個人団で設立総会を開いた。しばらくは視察や勉強に時間をかけた。
そして、エネ協のメンバーの約3分の1の出資により、2012年12月に白河エナジーを設立し、実証事業の受け皿になった。市の支援はなく(連携はあるものの)、民間主導で事業を進めている。
2013年に実施した最初の事業は、市から中学校跡地を借りて50kW未満の区画を分譲型で中小企業に割り振るというものだった。その後、大手家電店、メンバーの会社社屋の屋根に50kW弱、マンションの屋根に約17kWの太陽光パネルを設置した。さらに、2015年に50kW弱、2016年に約250kWと、遊休地を利用して設置をした。白河エナジーの公表データによれば、一日平均売電料金は6施設合計で6万円程度となっている。
エネ協の動きとは別に、地元企業も個別自に太陽光事業に動いた。地元建設事業者は、再生可能エネルギーの推進を目的とした合同会社を関連企業と設立し、会社の遊休地を活用して約12MWのメガソーラーを設置した。鈴木氏も独自に会社をつくり、所有する関連会社の屋根に48~49kWのものを8か所設置した。
FITの買取価格が高く、太陽光パネルが即時償却できたことが、地元経済活性化のための太陽光発電事業を後押しとなった。
しかし、地元企業が動いたのは買取価格が32円くらいまでだった。鈴木氏は「安価な外国製のパネル使うことは趣旨に反する。設置コストは安くなるが、地元の資源と資金を循環させて持続可能な経済発展を図るとい狙いから外れてしまう。」という。現在、白河市の事業者は、ソーラーシェアリング、子供たちへの再エネ教育、小水力発電、小型木質ペレットガス化による熱電併給、省エネ住宅、地域新電力等の可能性を試すなど、多くの取り組みを重ねている。
●原発とは共存できない、では何ができるか
2011年7月、福島県立博物館館長の赤坂憲雄氏、地元の大和酒造の9代目当主、佐藤彌右衛門氏等が中心となって、200人ほどが集まり、原発事故後に何ができるか、それぞれの思いを語る場がもたれた。その後、何度も集まりが持たれた。
最初は、混乱している福島の中で会津は何ができるかを話し合う場だった。再エネ事業は選択肢の一つとして浮かび上がり、勉強会が続けられて最初に集まった人を中心に自然エネルギー機構が生まれた。さらに、事業をしなければという佐藤氏の檄が飛び、2013年8月に実働部隊として会津電力㈱を設立した。
会津電力の立ち上げを勉強している中で、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也氏が来てくれた。また、同所の研究員が頻繁に相談に対応してくれた。
会津電力の最初の事業が雄国太陽光発電所である(1MW、2014年10月稼働開始)。喜多方市の丘陵地にある雄国地域は佐藤氏が若いころ小屋を建てたりして青春時代を過ごした地で思い入れがあった。雄国太陽光発電所の事業費は3億7千万円、3分の1を補助金、3分の2を融資でまかなった。研修施設をつくることが補助金の条件であったため、研修施設として再生可能エネルギー体験学習施設(通称:雄国大學)を作った。喜多方市街地を見下ろす景観も良く、28年度までで1044名の視察者が訪れた。地元公民館の子どもたちの見学学習、小学校での出前事業も行っている。県外の方も関心が高く申込みは多い。関東近辺の大学が夏休みのゼミ合宿で来ている。
さらに、第一期事業(2014年度建設)では「雄国発電所」を含め、24カ所の発電所を建設し、第二期事業(2015年度建設)では24カ所の発電所設置と、第一期事業の発電所2カ所の増設を行った。第一期ではISEPの助言をうけ、市民ファンドでの資金調達を行った。約1億円が2カ月で集まった。各地で訴えてきたことで、原発事故をうけて危機感を持っていた全国の市民が反応してくれた。第三期では1カ所の高圧発電所と低圧2カ所の建設を行った。会津電力及び関連会社の発電所は会津地域に広く小規模分散型で設置され、合計委51カ所となっている。
会津電力では、2017年9月から生活クラブエナジーに電力供給を開始した。エネルギーの地産地消(地域新電力)については検討中である。
今後は、FIT価格が下がる中でも努力しながら太陽光発電は継続する一方、蓄電池を採用して、売電ではなく発電した電気による自給といった事業モデルも検討している。また、これまで設置した太陽光発電の収益を活かしつつ、小水力発電、風力発電、バイオマスによる熱供給等の事業にも着手している。
●さらに地域ぐるみで進めるために
前回は、南相馬市といわき市における市民主導性が強い再エネ発電事業を紹介し、今回は地元企業の主導性が強い、より大規模な取り組みを紹介した。いずれにせよ、原発事故の被災地として、脱原発や脱中央集権という観点から、全国の他地域以上に強い意志をもって再エネ事業が立ち上げられてきた。
今後は、太陽光発電以外の再エネ事業やエネルギーの地産地消等を新たな取り組み課題があるなか、先陣をきってきた再エネ事業の主体とより多くの市民や事業者との連携が強まり、再エネへの取組がさらに包括的で地域ぐるみのものとなっていくことが期待される。そのためには、地元の市町村及び福島県における地域エネルギー政策の継続とより積極的な推進も必要となろう。
本稿の記述は、環境自治体会議小澤はる菜氏と共同で実施したインタビュー調査の結果に基づいている。