2年間の科研費をもらって、持続可能な地域づくりのチェックリストを作成している。
出発点としたは、CSA(Community Sustainable Assessment)である。このCSAは、世界のエコビレッジのネットワークが作成したもので、住民等が地域の持続可能性を点検するチェックリストである。このCSAの日本版を作成したいとかねがね思っていたことが、今回の研究のきっかけであった。
また、持続可能性に係る議論がとりとめなく拡張している中で、一般にもわかりやすく、具体的に持続可能性を提示することが必要である。加えて、地球や国全体の持続可能性に係る議論は多いが、それを構成する単位である地域の持続可能性議論が不十分ではないか。こうした問題意識で、今回に着手することとした。
現在、作成している持続可能な地域づくりのチェックリストは、次のような特徴を持つ。
1) 開発するチェックリストは、地域住民等が地域の状態を点検するものである。地域住民のチェック結果を集計すれば定量的であるが主観的な性質を持つデータとなる。統計数値等による客観量ではない。
2) 持続可能な地域づくりの領域を環境、経済、社会のトリプルボトムラインに固定せず、環境×経済、環境×社会、社会×経済の境界領域を加えて6領域としている。これにより、チェックリストの内容の網羅性や多様性が高くなっている。
3) 持続可能な地域づくりの規範を、他者への配慮、リスクへの備え、主体の活力の3つに設定し、6領域毎にこの3つの規範を重ねて、評価項目とそれを具体化したチェックリストを作成している。
・他者への配慮は、現在世代に対する他世代、自地域が依存する他地域、人間に対する自然や他生物等への配慮を指す。環境容量、南北間の公平、生命倫理等の規範を包括する。
・リスクへの備えは、やはり3.11以降の地域づくりにおいて追加すべき規範である。それ以前の持続可能性の議論では十分に扱われていなかった。
・他者への配慮やリスクへの備えがあったとしても、地域住民や事業所、行政等が元気に活動していなければ、持続可能な地域づくりとして不十分である。
4) 持続可能な地域づくりのチェックリストは住民による地域評価に使ってもらう。つまり、住民による主観的な地域認知を測るものである。チェックリストの開発過程では、持続可能な地域づくりの認知と主体の幸福度等との関係を分析し、幸福度がどのような地域側面に規定されるかを分析する。
・厚生経済学では、幸福度の時間軸での増加が維持されている状態を持続可能性の基準とする。これを目的変数として、それを規定する要素を明らかにして、持続可能性を高めるための施策等の在り方を議論する。これと同様に、本研究では、主観量で捉える幸福度と地域認知も関係を分析する。
なお、本研究では、最終的に住民による地域づくりのツールとして、チェックリストを作成することが目的である。分析の過程では多少複雑な作業も行うが、できあがったツールは住民が使いやすいものとなるように、十分に留意していきたい。