少子高齢化の急激な進展
日本の人口は江戸時代に約3千万人で推移してきたが、明治維新や戦後復興を経て、150年たらずで約4倍まで人口が増加してきた。しかし、2005年に人口が減少に転じ、2010年の人口は1億2,806万人、高齢化率約23%となっている。
国立社会保障・人口問題研究所による予測(中位予測)では、日本人口は2030年に1億1,662万人となり、2048年には1億人を割り込み、2060年には8,674万人になると推計されている。今後、50年間で約4千万人(当初人口の3割強)の減少が見込まれている。
また、今後50間で、年少人口(14才以下)は現在の約1,700万人から900人、生産年齢人口(15~64才)は約8,200万人から約4,200万人へと減少する一方で、老年人口(65歳以上人口)は3千万人から約500万人増加するという予測が成されている。
少子高齢化の都市への影響
少子高齢化による生産年齢人口の減少により、生産力の低下と国内の消費需要の停滞は避けられないものとなる。また、社会保障による歳出の増加もあり、国・地方あわせた長期債務残高は現在で約900兆円にも上っており、行政の予算を圧迫している。
また、少子高齢化は、これまでは地方の農山村や小都市で先行していたが、今後は大都市でも進展する。都市における人口減少は、日常生活の利便性が劣る地区等で、集中的に発生することが指摘されている。
そして、都市の人口減少により、空き家や空き地が多く発生してきた。これらの管理を上手く行わないと、日本の都市では比較的少ないと言われていたインナーシティ問題(都市内過疎地のスラム化、治安悪化等)が深刻化する可能性がある。
また、人口減少により、学校や病院等の公共施設、上水道や都市ガス、廃棄物処理等のインフラの効率が低下し、また維持管理費用の手当ても厳しくなることが予想される。
日本全体の人口増加による急激に膨張した都市は、その肥大化した市街地や人工施設を持て余す時代になる。
縮小時代の都市づくり
少子高齢化による人口減少による影響が懸念される中、市街地や公共施設等の縮小・再編成を行わければならない。成り行きまかせの縮小の先には、見るに堪えない寂れた都市の姿が待っている。
しかし、一方で、縮小を前提とし、計画的に都市の再編成を行うことで、空き地や空き施設を利用して、市内緑地や起業家や市民活動、芸術活動等を行う創造的な空間を生み出すことができる。
また、エネルギーの枯渇や地球温暖化の進展といった諸問題を考慮し、市街地内の建物間でエネルギーを融通する基盤を整備したり、建物の断熱性を高め、エネルギー消費量が少なく、再生可能エネルギーの導入を積極的に進めることも可能となる。
都市のゲリラ豪雨や猛暑・熱波等の気候災害、火事や震災、津波等に対して、都市空間として整備し、人の安全や安心を高めるような整備も可能となる。
縮小時代における都市の再編成は、持続可能な都市の姿を描き直し、それを実現するビック・チャンス、私たちの文明に残された最後の挽回の機となるだろう。