サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境新聞連載:「再生可能エネルギーと地域再生」より、5回目:飯田市の再生可能エネルギーと地域づくり(3)

2016年10月18日 | 再生可能エネルギーによる地域づくり

 前回までに、「飯田市再生可能エネルギー導入による持続可能な地域づくりに関する条例」(以下、再エネ条例)によって、事業主体となる地域自治組織が、再エネ条例の制定以前から市民共同発電事業の中核を担ってきた「おひさま進歩エネルギー株式会社」(以下、おひさま会社)と接続し、が新たな動きをみせていることを紹介した。今回は、飯田市の再生可能エネルギーに係る事業主体が多様に活発化している様子を取り上げる。

 

●町の電気店が再エネ条例認定事業に参入

 飯田市にある龍江四区地域づくり委員会は,2015年3月27日に再エネ条例の事業認定を得て、コミュニティ消防センター(公民館として利用)の屋根に約16kWの太陽光パネルを設置した。飯田市内他地区の再エネ条例による事業では、おひさま進歩を協働先とし、市民出資による資金調達や設備の設置と運営を行ってもらっている。しかし、この地区では協働先として地区に立地する電気店である「エルコンパスイプサ」が選ばれた。

 この電気店は、大手家電メーカーの販売代理店である。地区に大型電気店がなく、この一帯をカバーする、いわゆる“町の電気屋さん”である。電気店では、店舗の敷地にも太陽光パネルを設置しており、住宅用太陽光発電の設置事業者でもある。電気店を経営する日置隆裕氏は、龍江地区4区区長に電話をして、「公民館は人口減少から、区の収入が苦しい。このままでは区費が値上げとなる。地元の建物で売電収入を得たらどうか」と提案し、公民館は市の建物なので、市役所と相談し、その結果、条例の支援を受けることになったという

 太陽光発電設備の資金調達は、飯田市の資金を借りた。おひさま進歩の場合は市民出資により資金調達を行うが、飯田市は市民共同発電ではない事業に対しても、資金支援の仕組みを作っている。

 再エネ条例の認定事業は、環境教育等の地域還元を行うことが求められる。電気店では、啓発用のパネルをつくり、公民館においている。また、地区の祭りの際には、綿あめの機械の電源を、住宅用太陽発電に切り替え、太陽エネルギーの理解を促すようにしている。

 

●天竜川の舟下りが始めた「竹ボイラー」で足湯

 天竜川の舟下り会社で船頭を務める曽根原宗夫氏は、川下りの舟から見える天竜川沿いに、放置竹林が続き、ごみの不法投棄が増えていることを懸念していた。2012年8月に、観光課が予算をつけ、環境課が実施する形で、ごみの一斉撤去を実施した。

 曽根原氏は、自分たちができることがないかと考え、放置竹林を自分たちで伐採し、そのた竹で筏(イカダ)を組み、遊びで川下りをしていた。灯篭流しの祭りの際には、竹の筏で乗り込み、祭りを盛り上げていた。一方、竹が割れて浮力がなくなり、古い竹がたまってきたところ、竹を燃料にした住宅用のボイラーがあることを知った。この竹ボイラーは、長野県内のメーカーが開発したもので、

 2014年に、環境省の二酸化炭素排出削減対策事業に応募し、採択され、竹ボイラーで沸かしたお湯で足湯をサービスする試みを始めた。沸かしたお湯を古い船を使った浴槽にいれ、川下りで冷えた足を温めるのである。某大学でのゼミでは、竹を一緒に切り、枯れた竹をボイラーに投入しておき、筏下りをして戻り、足湯に入るという体験ツアーを行った。曽根原氏は、「竹をつかう仕組みを楽しいプロジェクトにすることで、いろんな人が関われる」といい、さらにアイディアを練っている。

 

●「化石燃料ゼロハウス」と「森集人(しんしゅうじん)プロジェクト」

 2004年、元市役所の企画課長(平澤和人氏)は仲間とともに「NPO法人いいだ自然エネルギーネット山法師」を立ち上げた。NPO会員の手作りで、建設に取組み、約4年の歳月を費やした2008年に、化石燃料ゼロハウス「風の学舎」がオープンした。この施設は飯田市街地の対岸、天竜川と市街地を見下ろす場所に立地する。風車や太陽光発電を設置し、薪ストーブやウッドボイラーを設置し、スローライフや再生可能エネルギーの利用を体験し、自己発見やライフスタイル転換を考える学習拠点というのが、このハウスの狙いである。多くの大学や活動団体等の研修を受け入れている。

 NPOは、2014年より、間伐財をボランティアにより搬出する「森集人プロジェクト」という事業をスタートさせている。今後は、再生可能エネルギー条例の関連の事業への参加も検討している。間伐がままならない林家の持つ森林を、一般から募集した間伐サポーターの手で間伐し、丸太にして出荷したり、薪ストーブ用に加工して出荷する。この事業には、薪を必要とする人たちだけでなく、広く山に関心がある人が参加している。間伐のためには、伐採のためのチェーンソーや搬出のためのウインチ等が必要となるが、これらの導入に県の補助を受けている。また、それらを使いこなす技術研修に力を入れている。NPOでは、今秋、「風の学舎」の近くに製材施設をオープンし、板材や木の工芸品づくりを始める。また、「森の市」と名付けたイベントにより、間伐材の活用に関する普及啓発に力を注ぐ予定である。

  

 今回は、飯田市における再生可能エネルギーへの取組みの多様性をとりあげた。地域行政の支援を受けつつ、地域に密着した企業やNPOが新事業に取り組み、地域に拡がりと厚みができている。その姿こそ、再生可能エネルギーによる地域再生の目標の1つだといえる。

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