こちらで留学させていただき、来月で二年半になります。
いままでの臨床医の立場、研究者の立場だけでなく、上司の立場、中間管理職(小ボス)の立場、部下の立場、秘書さんの立場、研究補助員の立場等、様々な立場の視点から組織を見る機会を与えていただくことができました。
何よりも新鮮だったのは、こちらの組織のスクラップアンドビルドというか新陳代謝のよさです。
結果を残せない人は、5年もしくは10年間単位で、職場を去らなければいけないという現実を何度か見る機会があり、こちらの競争社会の厳しさを肌で感じさせられました。
また、結果を残して昇進していく人も、5年から10年単位でよりいい環境を求めて、病院、大学や研究所を次々に移籍していくことも日本との大きな違いです。
こちらの人がオンとオフのメリハリをきっちりつけるのは、日常あまりに厳しい競争(正当な学問的な競争だけでなく、いやらしい政治的駆け引きも含めて)にさらされるため、適度にリフレッシュでもしないと、まともな精神状態を保っていられないからではないのかと感じるようにもなりました。
自分の所属しているグループも大御所の先生の引退に伴い、今後規模の縮小が余儀なくされるようです。傍目には、ここ数年誰よりも順調で鰻登りであったとしか見えない上司ですら、研究者としての評価が決して高くなかったことに驚かされました。研究所のラボを率いるためには、いわゆる最高ランク三大誌に定期的に出しつづけないといけないようです。最近、臨床雑誌としては最高ランクの雑誌に定期的に掲載しつづけていた上司ですが、あくまでそれは臨床医としての評価であり、臨床部門と研究部門を別々のものさしで評価されるとのことです。一見、当たり前の話なのですが、近年、医学では基礎研究と臨床研究の間にたってそれらの間を橋渡しする「トランスレーショナルリサーチ」という新しい研究のスタイルが生まれました。自分も一臨床医として、臨床医の立場から基礎研究の成果を臨床応答する橋渡しができないものかと思い、こちらに留学して勉強させていただいておりますが、我々のような立場の人間は、こちらでは臨床部門で評価されているようです。
日本では、このような仕事をする人がまだまだごく限られており、今後自分が日本でどのように評価をしていただけるのか少し気にはなるところですが、残された時間を日々一生懸命頑張っていこうと思います。
いつでも自分の好きなことをさせてくれた、妻、子供たちをはじめ、仲間の人たちに改めて感謝します。
とにかくいつもありがとう!