腫瘍内科医一家のニューヨーク滞在記

ニューヨーク研究留学中での出来事を感想を交えてメモ代わりにつづります。

研究者が信用できるのは自分だけ?? 

2009年11月20日 16時38分36秒 | 日記
 つい先日、別のグループの研究者にその人の論文にある実験方法を質問したときのこと。
 「他人の論文の実験が再現できないことはしょっちょうあるので、自分の手で行った実験しか信用してはいけないですよ。自分は信用できるのは自分だけと思っています。」と少し突き放すように言われた。結局、詳細は教えてもらえず。
 競争の激しい研究者の世界では他人に手をさしのべる余裕なんてないのかもしれない。
 たしかに、とても悲しく残念なことであるが、たしかに世の中には実験結果が再現できない論文が多々あるのは確かである。
 
 だが、論文として世間に公表した以上、その内容について質問を受けた場合は真摯に答えなければならないはずだ。もし、公表前は仕方ないが、公表後も「俺が苦労して確立した実験方法のコツを簡単に教えるわけにはいかない。」というのであれば、あまりに了見が狭いのではないか。

 そのような人間の周りにまっとうな感覚の仲間は集まるのだろうか。
 そのような人間が教育者としてふさわしいのであろうか。

 著者は実験結果が真実であると確信し、科学的事象として一般化できると確信したがゆえに論文として公表したのであるから、その結果が第三者に引用され、使用されることを誇りに思ってほしい。
 
 研究者には人と群れをなさず、職人気質の人がそれなりの割合でいるようである。

 しかし、自分は他者にたいする思いやりと優しさは、患者さんだけでなく、他の医師や研究者を含むすべての人々に対して持っていたい。たとえ、そのような心が研究者に不向きと言われても、自分は自分の信念を曲げるつもりはない。
 自分は利害関係にかかわらず、いい人間でありたい。
 

英語で初のプレゼンテーション

2009年11月19日 11時00分07秒 | 日記
 今日、職場の研究室で初めて新しい研究プロジェクトのプレゼンを行った。
 留学前に英会話学校にすら行かなかったので当然ではあるが、自分の言いたいことの半分も言えなかった。歯がゆいことこの上なし。上司、同僚には、お世辞で「good job」と声をかけられるも、プレゼン中に退屈そうにしている医学生を目撃した自分としては、慰めにはならなかった。
 英語でのコミュニケーション能力はこれからの大きな課題である。

 今思うと、何の準備もせず(する時間もなく?)いきなり、アメリカに飛び込んだ自分の厚かましさと鈍感さにあきれるばかりである。
 ニューヨークは移民が多いためか、少なくとも「表面上」は英語ができない人に対して寛容であることが多いと感じる。きちんとした店ほど「表面上」は寛容であるが、個人的経験で申し訳ないが一か所どうしようもないところがある。
 マクドナルドに時々最悪な店員がいて、こちらの英語が聞き取れなことを小馬鹿にされたことがあった。帰りがけに小馬鹿にした言い方で、「サンキュー、チャイニーズ!」と声をかけられたときには、頭にきてカウンター越しに身を乗り出し、「おれは日本人だ。最近、こちらに来たばかりで、日本では通常日本人は日本語しか使わないからおれは英語が下手なんだ!」と文句をいってしまった。それ以来、二度とマクドナルドには行く気がしない。カウンターの店員はほぼ全員黒人(移民でなくこちらで生まれたネイティブのように見える。)で、その中のごく一部(と思いたい)にひどい店員が混じっていると他の同僚も言っていた。ちなみに、サブウェイ、スターバックス、ダンキンドーナツ、レニーズ等の他のファーストフードのショップではそのような目に一度もあったことはない。留学前にマクドナルドの創業者レイ・クロックの自伝を読んで自分もガッツを出して頑張ろうと決意を新たにしたが、こちらのマクドナルドの店員を見て本当にがっかりした。

 もし、海外留学をするかどうか迷っている人がいれば、「こんな僕でもニューヨークで生活しているからとにかくおいで」と言いたい。やっぱり、鈍感?
 
 写真は、自宅のアパートの屋上からみたマンハッタンアッパーイーストサイドで、写真中央やや左に見える屋上が茶色く光っている建物が勤務先のがんセンターである。

ロックフェラーセンターでBon Joviに遭遇!

2009年11月12日 12時47分31秒 | 日記
 今朝仕事前の8時ごろ、万一、息子に食物アレルギーが出現した時に備えて、学校内で先生にエピネフリンの注射を打ってもらうために主治医に診断書とエピネフリンの使用方法を書いてもらうためミッドタウンの診療所に向かった。
 道中、突然、歓声がわき起こり、バンド演奏が始まった。最初は学園祭か何かのアマチュアバンドの演奏と思い込んでいたが、どこかで聞いた曲、そして、あの「声」!数秒後、ここがロックフェラーセンターの近くであることを思い出した。なんと、Bon Joviがテレビ収録用に、「It's my life」を演奏していたのである。
 80年代中旬、自分が中学生時代に最初に日本でブレイクしたBon Joviが、今も頑張っているのを見て少しは元気がでた。
 インターネットで検索すると昨日朝のパフォーマンスを見ることができた。(下記リンク)
 http://today.msnbc.msn.com/id/26184891/vp/33854671#33854671
 ここはニューヨークのど真ん中、マンハッタンミッドタウンと妙に納得。このようなサプライズは、9月末まで住んでいた日本の地方都市ではあり得ないこと。
 職場で興奮して同僚、医学生に話すもこちらではとくに驚くことではない様子。
1年間の予定でラボに来ているひょうきんなNYUの医学生には、「その時間はまだベッドで眠っていたよ。」と切り返された。彼曰く、「11月末のサンクスギビングからクリスマスにかけてロックフェラーセンターはいろいろイベントがあり楽しい」とのこと。
 尚、携帯で写真を撮るも、多くの人だかりのため、ジョンとリッチーは撮れず。
 
 写真は数日前、別件で通りかかったロックフェラーセンターで、冬季はアイススケートがオープンしている。

ニューヨークでの食物アレルギー対策

2009年11月07日 15時46分09秒 | 日記
 我が家には2人の子供がいる。
 下の息子は生後6ヶ月後に、小麦、卵、乳製品、ピーナッツ、牛肉にアレルギーがあると判定された。当初、上のお姉ちゃんに比べて乳児湿疹がとてもひどいと思い込んでいた。実際、近所の皮膚科の先生に診てもらってもそのように言われていた。たまたま、風邪で開業されている小児科の先生を受診したときに、その先生が息子の肌を見て食物アレルギーを疑い、専門病院に紹介してくれたおかげで、ようやく食物アレルギーと診断された。
 一応、内科専門医も取得しているのであるが、やはり小児科は別物(?)である。以来、妻からは「やぶ医者」と呼ばれ、子供の病気に関しては、今もって信頼してもらえない。といっても、ほぼ100%自分の言うとおりの経過になるのであるが、一度失った信頼は簡単には戻らないもの。
 大学院を卒業した後、2~3年前にもニューヨーク留学の機会があったが、タイミング悪く息子の幼稚園の先生が誤ってカルピスを息子に与えてしまったことからアナフィラキシーを起こしてしまう出来事があった。すっかり動揺した妻は乳製品はおろか、小麦すら食べられない子供をアメリカに連れて行くことはできない、と留学を許可してもらえず、妻の気持ちも十分理解できたので、一度留学を断念し教授にもその旨を伝えた。もともと、妻自身も田舎の出身で出身地から半径20km以上離れたところに住んだことがなく、周りの親戚も外国なんて怖いところに生かすわけにはいかないといった状況であった。
 その後、息子のアレルギーが徐々に改善し、現在は乳製品とピーナッツ以外は食べられるようになってくれた。今年の夏にようやく牛肉摂取の許可が出て、初めてしゃぶしゃぶをおいしそうに食べてくれたときにはうれしくて泣きそうになった。
 そう、我が家は最近まで外食がほとんどできなかったのである。

 そんな家族が、ニューヨークでどのような食生活を送っているのか。
 少し工夫すれば、何とかなるものです。詳細は次回へ。



 

祝 ワールドシリーズMVP 松井選手

2009年11月05日 16時53分51秒 | 日記
 前回のブログでの願いが叶うかのようなワールドシリーズ第6戦での松井選手の大活躍!
 ヤンキースに来て、7年目にして初のワールドチャンピオンをMVPという最高の形で締めくくった。もちろん、ワールドシリーズMVPは日本人選手初の快挙である。
 この数年けがに悩まされ、思うような走塁、守備ができず、今年は指名打者(DH)でしか起用されなかったため、契約最終年の今年が、ヤンキースでの最後の年になるとマスコミからは予想されていた。ヒーローインタビューでの彼のコメントからも明らかなように、ヤンキースでのプレーを望んでいる松井選手が、好条件で契約延長されることを切に願う。

 昨日、子供の小学校入学に必要とのことで、子供の健康診断とワクチン接種のため、こちらの診療所(クリニック)を訪れた。今後こちらで生活する妻や家族のことを考慮し、ある日本人の先生のところを受診した。
 その先生は、60歳前後で日米ダブルライセンスで、卒業後すぐにこちらで医師免許を取得、10数年前からこちらで診療をされるようになったとおっしゃっていた。ただ、こちらでの職探しは相当苦労されたとおっしゃっており、その姿からも苦労がにじみ出ているかのようであった。

 あまり言いたくないが、こちらの医師は日本の医師に違わず、玉石混交であると感じる。病院の宣伝を見ただけで、胡散臭さを感じざるを得ないところが多い。日本でも医師のレベルはピンキリではあるが、こちらは自由診療の部分が多い分、もっと個々のレベルに差がありそうである。
 
 以前、米国に留学されて今は帰国された他大学の先生が「米国人と日本人では平均的には日本人の方が優れていると感じる。しかし、米国にはごく一部に非常に優秀な人間がいて何かを発見・発明すると、ごく短期間に誰もが、そのことをできるようなシステムを作るのがうまい。」とおっしゃっていたことが思い出される。