春まで仕事を少し手伝ってくれた「新米」のミャンマー系アメリカ人の女医さんが、お隣のコーネル大学で研修医として働き始めたとのことで、挨拶に来てくれた。からかいがてら、"Hello, Dr.OOO!"と大先生の物まねで呼びかけると、満面の笑みでこたえる彼女の姿に久々に新鮮な気分になった。アメリカでは今も医師はステータスのある職業と認知されている。
日本では努力すればするほど、医師は待遇的に恵まれない職業ではなくなってしまうところがある。その状況を、そのまま受け入れている我々にもプロ意識が足りないのではないだろうか。医師免許を経済的に安定した資格として、その取得をゴールにしてしまっているように感じさせる人も多い。たしかに、努力しようがしまいが、臨床医として勤めれば、キャリアに関係なく待遇面ではどこでも大差がないのも事実である。免許など単に出発点でしかない。
医師に限らず、どのような道を選ぶにせよ、なってからの生き方が問われているのではないだろうか。
約二年ぶりに日本に出張で帰国する。講演を依頼されたが、直前になり若い医者に夢を与える話をして欲しいとのリクエストに戸惑うばかりである。私はまだまだ学ぶ立場の人間で、立派なことなんて言える立場ではない。ホラ吹きにだけはなりたくないので、等身大のお話をするだけである。
世の中よくなったといっても、やるべき事、矛盾点、未解決のことだらけである。目標や夢などは、日常に数え切れないほどあふれている...。信じたくはないが、本当に近頃の日本には夢のない若者があふれていることが本当だとすれば、教育制度や上の世代の生き様に問題があるのではないだろうか。