「人のやらないことをやるのが繁盛店。この言葉が私の一番好きな言葉です」と話す安田幸一さんが、その言葉を実現すべく、今年開店した店舗が『手打ちそば一幸庵』だ。
安田さんは、複数の事業を軌道に乗せ、経営する一方、箱﨑孝治兵庫県組合理事長の下で手打ちの技術を学び、名人位の取得を目指した。その後、関東地方のそば店で約3年修業し、箱﨑氏から兵庫県神戸市北区『手打ち蕎麦屋 一孝庵』を引き継いだ。そして、満を持して今年春に『手打ちそば 一幸庵』をオープンした。
取材時の10月は、1ケ月以上先まで予約で満席になっており、早くもそば好きのお客様の心をわしづかみにしていることがうかがえる。
店を訪れると、奧丹波の自然に囲まれ、四季折々の草花が目を引く場所に建つ築 400年の古民家の佇まいに圧倒される。座敷に通されると、周囲の山が借景となり、絵画のようだ。
これから冬の季節には雪景色を装う。予約は1日2組、時間をずらして1組づつが貸切で贅沢な時間を楽しむことができる。品書きはなくメニューはコース料理のみ。
コースは最初に前菜として低温調理の鴨料理などが提供され、「香りそば」(更科粉で打つ季節毎の変わりそば)、「手挽きそば」、「十割そば」「、田舎そば」(玄挽き・十割)、「二八そば」、「季節の冷やがけそば」が適宜供される。
つゆは地元の3年熟成の醤油を使用し、少し酸味があるのが特徴だ。塩・ゆかり・塩昆布も用意される。
6種類のそばの途中で登場するのが、囲炉裏で焼く「鰻の炭火焼き」だ。途中まで女将が説明しながら焼き、その後はお客様ご自身で焼く。愛知・三河産の上質な鰻を炭火で生の状態から焼くので、表面はしっかりと焼けるが、中はとても柔らかく焼き上がる。
安田さんが「6種類のそばを1度に味わえるというのが自慢です。神戸の店は一般的な手打ちそばの店ですが、この店ではお客様1組だけの特別な空間でそばと料理を味わっていただく。他にはほとんどない形のそば店だと自負しています」と話す通り、究極の差別化といえる。
※写真は、右上から「十割そば」、「冷やがけそば」、前菜、「香りそば(大葉切り)」、
「二八そば」「手挽きそば」「田舎そば」。
天ぷらを追加することができる。