ええと、たぶん次回で終わるはずなんですけど……とにかくここの前文に書くことがなくってですね……まあ、何かテキトーに書いて、お茶濁そうかな的なww(殴☆)
わたし、ツイッターやインスタをチェックしてる有名人の方ってほとんどいないんですけど……そんなわたしに、最近よく見るツイッター主さまが出来ました♪
そ、それは……(ごきゅり☆)。。。
カワウソちぃたん☆のツィッターでつっ!!♪
いえ、もう誰もが知ってる超有名カワウソ☆と思うんですけど、わたしちぃたん☆がユーチューバーだって知らなかったので、動画とか見たの、割と最近だったのです。。。( ´艸`)
なんででしょうねえ。くまもんとかふなっしーも普通(?)に好きなんですけど、ちぃたん☆には他のゆるキャラ☆に感じない闇を感じるのが、自分的にツボるポイントだったのかもしれませんww
失敗しても、「おおむね成功♪」と言い切るちぃたん☆。倒れない棒がお気に入りで、その殴り方にどこか闇を感じるちぃたん☆、着ぐるみ界のアスリートとして、次から次へと色んなことに挑戦していくちぃたん☆、時々大事なあんよが見えまくってるちぃたん☆♪……そのうち、夕張のメロンぐまとの対決を見てみたいな、とか、密かに期待しておりまする(笑)
ちなみに、
(出典:https://girlschannel.net/topics/54834/様よりm(_ _)m)
ふなっしーと、
(出典:http://ikeike55.hs.shopserve.jp/hpgen/HPB/entries/32.html様よりm(_ _)m)
くまもんはすでに、メロンぐまとの対決で惨敗している模様
「果たしてちぃたん☆はこのメロンぐまと戦って勝つことが出来るのか!?(o´・Д・`)ノ」という企画(「ちぃたん☆vsメロンぐま、三番勝負対決!!」とか、「ちぃたん☆vsメロンぐま、どっちが真の番長か決めるぞ対決!!」とか、そういうのを是非どこかの局でやってみて欲しいでつっ(笑)。
たとえば、「月曜から夜ふかし」とかで、取り上げてくれないものでしょうか。。。
あ、自分でそういう投稿をしろってことですかね(^^;)
それではまた~!!
灰色おじさん-【18】-
こうしてこの翌日、グレイスは午後の一時にべスと待ち合わせしました。今日は、おじさんと三人で話しあって、どんなパンをいくつ作るか、そのための材料費はどのくらいかかるか……ということを話しあい、それを激安業務用スーパーまで買いに行くという予定でした。
実をいうとおじさんはいつもここでパンのための小麦粉などを買っています。べスは業務用スーパーへ来るのは初めてとのことで、物珍しかったのでしょう。彼女は彼女で大きなカートを引いてきて、自分の家族のために冷凍肉やビッグパックのお菓子、その他おじさんやグレイスがお薦めした商品などを随分買いこんだようです。
「ママとコストコへはよく行くけど……商品の品揃えがまた違って面白かったわ!!」
おじさんの家へ戻ってくると、冷凍肉などを一度冷やさせてもらいながら、べスは妙に興奮してそう言っていました。
「それにあれだけたくさん入って値段も普通のスーパーより安いしね!結構あのスーパー穴場なんじゃない?」
べスがまるで一丁前の主婦のような口振りでそんなふうに言ったため、おじさんはおかしくて堪りませんでしたが、グレイスなどは「そうなのよ。あそこ、結構いいのよ」などと一生懸命相槌を打っています。
なんにしても、早速これで明日から、パンを作って売る作業へと入ります。おじさんはパンを作るのは全部ひとりでやるから、グレイスとべスは好きな時間にパンを売ってくれと言っていました。むしろ手伝ってもらうとわしのほうでストレスが溜まるかもしれんから、と。
――と、いうわけで、この翌日、夏休みがはじまって五日目、おじさんは早起きするとジャムパンにクリームパン、チョコレートパンやメロンパンを二十個ずつ、それにサンドイッチやハンバーガーその他の調理パンを十個ずつ……などなど、計百五十個ほどもパンを作ったのでした。
姪とその友だちのためとはいえ、おじさんは二人がやって来る頃にはすっかり疲れきり、「おじさんは少し昼寝するから、あとのことはよろしくな」と言って、自分の寝室へ下がっていきました。
透明な袋に入れてシールで留めるところまでおじさんがやってくれていたため、グレイスとべスは早速、家型物置のほうにパンを運ぶと、前もって用意しておいた看板を出すことにしました。<ジョンおじさんの気まぐれパン屋さん>と、そこにはカラフルな文字で書いてあります。
グレイスとベアトリスが売り子として物置小屋の内側に立っていると、早速お客さんがやって来ました。携帯でメアリーとアーロンに連絡しておいたので、ふたりがやって来たのです。
「売り子さん、どんなパンがあるか教えていただけるかしら?」
サングラスをかけて日傘を差したメアリーは、すっかりセレブ気取りでメニューブックを見ています。<ジョンおじさんの気まぐれパン屋さん>は、店頭には見本となるパンを一個ずつ置いておいて、なんとも不便なことですが、注文が入るごとにそれを家まで取りに戻るのでした。
特に調理パンなどはこの暑さですぐ傷んでしまいますので、メニューブックのほうにすべてのパンの写真を貼りつけておいて、お客さんは写真や店頭の見本のパンを見て決めるということになります。
「なんだか不便なシステムだなあ」
アーロンはメアリーの隣からメニューブックを覗きこむなりそう言い、さらには店の批判まではじめました。
「それに、こんなんじゃ客なんか百億年待っても来やしないよ。ジョンおじさんのパンはそりゃ美味しいけどさ、もっと何か宣伝しないと」
「あ、それじゃわたしたちで宣伝のためのチラシでも作って近所に配ったらいいんじゃない?それとわたし、ポップ書いたりするのも得意だから、この店頭の見本のパンに、そういうの作っちゃうわ。グレイス、部屋に画用紙とかマジックとかあるでしょう?」
「う、うん。でもいいの?せっかくデートの最中なのに」
「全然よーう。ねえ、アーロン。いいでしょ?」
「まあ、メアリーがそう言うならね。俺はそれでもいいけど」
そういったわけで、グレイスは自分の部屋にメアリーとアーロンを通すことにしました。おじさんはまだ寝ていましたので、「イチャイチャしてもいいけど、なるべく静かにね」と言って、グレイスは物置小屋のほうへ戻ってきました。
メアリーは絵が上手なだけでなく、とても器用な子でしたので、可愛いイラスト付きのポップを一時間とかからず作り、「濃厚なジャムがとっても美味しいイチゴジャムパン♪」ですとか、「手作りハンバーグの優しい美味しさ♪」といったポップをいくつも作りますと、それを見本のパンの上に貼りつけました。
「これさ、窓の上のほうにひさしとかつけたほうがよくない?ほら、ホームセンターなんかへ行ったら、三十ドルくらいで売ってる安いやつあるだろ?あれ、色もダークグリーンだしさ、べスとグレイスも直射日光から守られていいんじゃね?って話」
「そっかあ。でもこれ、あたしたちが好きで勝手にやってることだから……これ以上おじさんにお金だしてっていうのもアレだし。あたし、ママからお小遣いとして五十ドルもらってるんだけど、そこから三十ドルだそうかな」
グレイスは、一応五十ドルもらっておきながらも、それは「いざ」という時までなるべく節約して使うつもりでいたのでした。べスは「えーっ。あんた、ママからそんなにお小遣いもらってんの!?」とびっくりしています。
「うん。でもなんか、これから先何かあってお金が必要になったら、ママに頼んだりするのも嫌だから、あんまり無駄遣いとかはしたくないんだけど……」
「<ジョンおじさんの気まぐれパン屋さん>をやりたいって言いだしたのはわたしなんだからさ、そこはあたしもお金半分だすよ。そしたら、わたしとグレイスで十五ドルずつ。それならいいんじゃない?」
「じゃあ、俺も十ドルだすよ。なんか面白そうだもんな。もし儲かったら「俺もひさしつけるのに十ドルだしたんだからさー」とか主張できそうだし」
「あんた、それセコすぎよ、アーロン!」
メアリーもお金をだそうとしましたが、それはグレイスもべスもアーロンも止めました。メアリーはすでにポップも作ってくれましたし、メニューブックのほうにもこれからイラストを描いてもっと素敵にしてくれると約束してくれていたからです。
こうして、グレイスとべスには売り子としての仕事が、メアリーはメニューブックのイラスト描きがあったため、アーロンがひとりで日除けを買いに行き、彼は帰ってくると暑さのためにへばり、少しの間クーラーの効いたおじさんの家のほうで休むということになりました。
グレイスはこの時、アーロンにアイスキャンディをあげ、メアリーとべスの分も持ってくると、三人で扇風機に吹かれながらオレンジやメロンやイチゴ味のアイスをなめつつおしゃべりしました。
「チラシのほうはこんな感じでどう?もしこれでいいなら、コンビニでコピーして、このあたりの御近所さんにでも配ってくるわ」
「うわー、すっごく素敵なデザインのチラシねえ」と、ベアトリス。「メアリーってセンスあるわよね。きっと将来はイラストやデザイン関係の仕事に就くことが出来るんじゃない?」
「だといいけど……ママなんかはね、イラストを描いて食べていける人なんてほんの一握りだけなんだから、ちゃんと勉強して他の職業に就くこともよく考えなさいって言ってばかりよ」
この時、コンコン、と小窓のほうが鳴らされて、三人が同時に顔を上げると、そこにはマクグレイディさんの好奇心に満ちた顔がありました。
「お嬢さんたち、一体何をはじめたの?なんだか楽しそうじゃない」
「看板にも書いてあるとおり、<ジョンおじさんの気まぐれパン屋さん>よ」と、グレイス。「おじさんが気の向いた時だけパンを焼いて売るの。今のところ、おばさんがお客さんの第三号ってところ」
「あら、じゃあ第一号と第二号はこのあたりの御近所さんか誰か?」
すると、ベアトリスは、まず最初にメアリーのことを指差し、それから家の玄関から出てきた弟のアーロンのことを指差して言いました。
「ひとり目が親友のメアリーで、ふたり目が我が愚弟のアーロンってとこ。つまり、今のところ売上はゼロよ」
「じゃあ、わたしがいくつか買っていってあげてもいいけど……そんなんじゃあんたたちも嬉しくないでしょ?ちょっと待ってなさい。今わたしが近所をまわって声をかけたら、何人かの人は間違いなくすっ飛んでくるはずだから」
「わあ!マクグレイディさんありがとう!!」
このあと、メアリーが急いでコンビニまでいってチラシをコピーして戻ってきました。マクグレイディさんはそれを受け取ると、すぐに近所の顔なじみの人たちに配りにいってくれると言います。
こうして、アーロンが日除けを取り付け終わらないうちから、近所の人たちが順にパンを買いに来て、何人かの人はパラソルの下でパンを食べながらおしゃべりをはじめましたので、グレイスはサービスでアイスコーヒーやアイスティーも出してあげるということにしました。
「テーブルが一個じゃ寂しいわよね。どれ、うちにあるのをふたつ、お嬢さんたちに貸してあげるから、そこの坊や、取りに来なさい」
「あ、じゃあわたしも手伝います!」
ベアトリスがそう言って緑色の家から出て来ようとしましたが、マクグレイディ夫人は「べスには売り子の仕事があるじゃないの」と言って制止します。
「こういうことは男にやらせればいいのよ。うちの愚息どもも家の中でぐてっとしてるから、手伝わせるわ。まったく、毎日ゲームしながら「暑い」とか「腹へった」とか「ごはんまだ?」とか、そんなことしか言わないんだから、あのしょうもない連中は」
といったわけで、ベアトリスが持ってきてくれたパラソルとテーブルと椅子のセットの他に、もうふたつパラソル付きのテーブルと、その周りに椅子が増えました。その後、ジョンおじさんのパンのほうはあれよあれよという間にあっという間に売り切れ――近所の人々からは「前に食べたオレンジピールパンはないのかね?」、「くるみとレーズンの入ったやつ、あれはうまかったなあ」といったリクエストが次から次へと出たものでした。
おじさんはほんの二時間か三時間、お昼寝をするつもりだったのですが、この時疲れてうっかり五時間ばかりも眠ってしまいました。その時、おじさんが窓から外を眺めて見ると、小さな花盛りの庭には人が十人ばかりもおり、おじさんはびっくりしたものでした。一瞬、まだ夢を見ているのかなと思ったほどです。
グレイスは、おじさんが驚き顔で窓からこちらの様子を窺っているのに気づくと、すぐにそちらへ駆けだしていきました。
「おじさん、おじさん!すごいのよーう。パンなんてもう、あっという間に売れちゃったわ。今ここにいる人たちはね、明日以降、おじさんがパンを作ったら予約しておきたいっていう人たちなの!!」
「ほ、ほほう。それはそれは……」
おじさんの予想としては、パンは夕方近くになっても売れ残っており、べスやグレイスに持たせて帰らせてやるということになるだろうと思っていました。ところが、本当に全部売り切れたと聞いて、まったく驚いてしまいました。
「あとこれね、見てみてっ。みんな、オレンジピールパンとかレーズンくるみパンとか、レモンジャムパンとか……もっと色々種類を増やして欲しいんだって。もちろんね、おじさんは趣味で気まぐれにパンを焼くだけだから、次に焼いた時に、自分のためにそれを取っておいて欲しいっていうの。元を取れるかどうかはともかくとして、これでどのパンを何個くらい焼けばいいか、計画が立てやすくなるでしょ?」
「いやはや……わしは金のことなどどうでもいいが、まさか本当に全部売れるとはな。しかも、みんななんだか幸せそうに微笑んでおる。わしはこっちのことのほうがよほど嬉しいよ」
おじさんは満足そうに頷くと、そのまま家のほうに引き返しました。グレイスには『おじさんはまだ寝とるということにしておいてくれ』と耳打ちしたあとで。それ以上聞かなくてもグレイスにはおじさんの気持ちがわかっていました。おじさんは人前で目立つことをするのが嫌いな人なので、庭へ出て、パラソルに座っている近所の人たちに「美味しかったわよお」とか、「今度はいつパンを焼くの?」とか、色々聞かれたり褒めそやされたりするのが照れくさかったのでしょう。
とはいえ、おじさんは善意の人で、誰かに期待されるとその気持ちに応えずにはいられない人でしたから、一日休むとまた早起きしてみんなの注文に応えるべく、パン作りをはじめました。今回は、店で買える分と前もって注文を受けた分を合わせて、前の二倍以上作らなくてはならなかったのですが――おじさんは最初よりこの二度目の時のほうが作るのが少し楽でした。小麦粉の計量など、パンをたくさん作る場合のコツを先に掴んでいたため、二度目の時のほうが簡単に済んでいたのです。
また、おじさんはべスの勧めにも関わらず、パンの値段を上げませんでした。売上のお金は材料費を差し引いて若干の儲けが出た……といった程度でしたが、そのお金をおじさんはグレイスたちに四人で分けなさいと言って渡していました。グレイスとべスは売り子として忙しく、メアリーはポップを作ったりメニューブックにイラストを描いたりしてくれましたし、アーロンは雑用係として家型物置とおじさんの家の間を何十往復もしていましたから(ようするに、気の強い姉にいいようにこき使われたということです)。
その後、二度目にパンを売った時も三度目にパンを売った時も、おじさんのパンは完売御礼ということになりました。しかも、最初の時よりもあらかじめの予約がさらに増えていました。べスは「量産体制さえ整えば、もっと儲けがでるのに」と悩ましい顔をしていましたが、おじさんは手伝いを入れるつもりは一切ないと言います。つまり、おじさんは誰かにものを教えたりするのが苦手でしたし、そんなことでイライラしたり腹を立てるようになったのでは、本末転倒だというのがその大きな理由でした。
「じゃあさ、俺が注文された分を御近所さんに自転車で配達するっていうのはどうかな?べスやグレイスはさ、それぞれのお宅から注文された分をちゃんと袋詰めにする係になれば、おじさんの負担も大分減るんじゃないかな」
「いやいや、そりゃいかんよ」と、おじさんは慌てて止めました。「君たちはまだ小学生なんだからの。そんなことをしてる暇があったら、勉強をするというのが本分だて。それに、君たちのお母さんやお父さんからそんなことで苦情が来ても困るし、第一、あそこの角の家に住むジジイは小学生を働かせとるなんていう噂が広まったら、わしは犯罪を犯したということになってしまう」
ユトランド共和国の法律では、小学生や中学生の労働は原則として禁止されています。もっとも、軽易な業務であれば労働とは見なされないわけですが、それはパンの袋詰めあたりまでだろうというのがおじさんの判断でした。この暑い中、アーロンにパンを自転車で配達してもらうというのは、さすがに行きすぎというものでした。
「あら、うちのパパとママなら大丈夫よ」と、ケロリとしてベアトリスは言います。「ジョンおじさんのパン屋さんを手伝ってるって言ったら、ふたりとも『社会勉強になっていい』って言ってたもの。うちのパパとママはわたしとアーロンが何をするでもなくプールサイドでぐてーっとしてるとか、そういうのを一番嫌うのよ。だから大丈夫よ」
「うちのママも、チラシのわたしのイラスト見て喜んでたわ。それに、家に帰ってからもわたしがパン屋さんの袋をデザインしたり、オリジナルのテープとか夢中になって作ったりしてるでしょ?そういうのがね、なんか嬉しいみたい」
――こういったわけで、おじさんは自分のパンのファンの人たちのためだけでなく、子供たちの期待に応えるためにも、大体週に二回か三回、パンを焼くということになりました。もっとも、おじさんは長くこうしたことを続ける気はなく、基本的に子どもたちが夏休みの間だけ、パン作りを続けようと思っていたようです。
もちろん、ブラッドフォード姉弟もメアリーのエイブラハム家でも、家族で旅行へ出かける予定がありましたし、それはグレイスも同じでした。とはいえ、グレイスの場合、ワズワース家の一員として海外に旅行へ行ったりするよりも、このままおじさんのパン作りでも手伝っていられたほうがよほど幸せではあったのですが……。
「ねえ、おじさん。おじさんがパンを作る日は、あたしも早起きして少しくらいはお手伝いしたいと思うんだけど、どーお?」
「いや、おまえにそんなことはさせられんよ。何より、そんなことを言ったらグレイスのママからまたなんのかんのとくどくどしい電話がかかってくるじゃろうからな。パン作りのほうはおじさんひとりでどうにかするよ」
けれども、グレイスはセシリアにバレない範囲内で、メアリーやベスたちよりも早めにおじさんの家へ来て、使ったバットなどの洗い物をしたり、出来るだけおじさんのことを手伝うことにしていました。
おじさんはそうしたグレイスの優しい心遣いが嬉しかったですし、またそれだけで十分でした。それでもグレイスとしては、この間ずっと(自分が前みたいにおじさんの家に一緒に住んでさえいたら、色んなことが解決するのに)と思い、このことでは心が重く沈んでいたかもしれません。
六月の下旬に夏休みがはじまって、八月の初旬になるまで、子どもたちはこの<ジョンおじさんの気まぐれパン屋さん>に夢中になっていました。そして、何も八月の初め頃に急に子どもたちのパンに対する熱が冷めたということではなく――まず、ベスとアーロンのブラッドフォード姉弟が家族でハワイ旅行へ行ってしまいましたから、ジョンおじさんのパン屋さんは一時休業ということになったのです。
もちろんその間もグレイスはおじさんの家に出かけて行きましたし、毎日メアリーと一緒に遊んだり、あるいはブランドンやリアムと釣りへ出かけたり……グレイスは勉強ももちろんしましたが、それ以上におじさんと友だちとの絆を大切にして遊びました。
この間、セシリアは娘のグレイスが屋敷のほうに全然居つかず寂しかったようですが、グレイスはセシリアともたまに買い物へ行ったりすることがありましたし、八月も中旬になると、無理をしてどうにか休みを取ったオリバーが首都ユトレイシアへ連れていってくれるということになりました。セシリアは「国内じゃなくて、海外のほうがいいんじゃない?そのほうがお友だちにも自慢できるし」と言ったのですが、実はグレイスにはグレイスの理由があったのです。
ベアトリスとアーロンは首都ユトレイシアで生まれ育っていますから、会話の中で何気なくユトレイシアの話が出てきます。また、メアリーもユトレイシアへは両親と旅行で行ったことがあるということでしたから……グレイスは「ベスやアーロンがどんなところで育ったのか、一度見てみたいのよ!」とおねだりしていたのです。そして、メアリーも大体この頃、両親とサウスルイスのほうへ一週間ほど旅行へ出かけていったのでした。
そんなわけで、四人が再び揃ったのは、夏休みまで残り一週間くらいが残った時のことでした。もうこの頃になると、ジョンおじさんのパンの中毒になった患者のような人たちが、まるでゾンビのようにおじさんの家を直接訪ねるようになっていたかもしれません。
グレイスがおじさんの家へ遊びにいくと、すでに近所の人が誰かいて、アイスコーヒーかアイスティーを飲みながら、おじさんのパンを食べて何か世間話をしています。こうした人が入れ代わり立ち代わり現われるもので――グレイスは(ジョンおじさんはあたしのおじさんなのに!)と思って寂しくなりました。もっともおじさんのほうでは、ひとりで読書できる時間が減りましたもので、こうした来客というのは有難い反面、若干迷惑だったかもしれません。
とはいえ、不思議なことですが、おじさんはこのことを契機に不思議と以前は全然そうではなかったのに、<社交的な気のいい人物>として、近所やまわりの人々から評価されるようになっていました。もっとも、グレイスは前と同じように<おじさんとふたりきり>がいいのに、ようやくふたりきりで色々お話が出来ると思ったら、自分のほうで帰らなくてなりませんから、つまらないことこの上もありません。
こうして、グレイスたちの小学五年生に上がる前の夏休みは過ぎてゆきました。そして五年生になると、グレイスとベアトリスとメアリーは離れ離れになってしまいました。まず、べスが五年A組になり、グレイスとアーロンが五年B組、メアリーが五年C組でした。
この時、組み分け的に少し気になったのは、アリスとベアトリスが同じ組になったこと、グレイスはエリザベスと同じクラスであり、またメアリーは特に親しい友だちが最初のうち誰も見当たらなかったということかもしれません。
けれどもこののち、新学期がはじまって二か月が過ぎる頃には、ある程度男子も女子もそれぞれいくつかのグループに分かれるということになっていました。べスとアリスはクラスで女子の人気を二分しており、グレイスはエリザベスと仲良くなることはありませんでしたが、それでも四年生の時にそうだったように、それぞれのグループに分かれて一度棲み分けがなされると、お互いにまったく干渉しないという関係になりました。グレイスは一年生の頃や二年生の頃に仲の良かったケイトやリンダとグループとして自然とまとまり、時々アーロンのいる男子グループとも話すといった感じでした。一方メアリーは、友だちらしい友だちは最初誰もいませんでしたが、べスやグレイスやアーロンとのつきあいがおそらく彼女自身を自信のある女の子に変えていたのでしょう。何より、しょっちゅうクラスの出入り口や廊下でアーロンと話してばかりいましたから、「もう彼氏がいるだなんてすごーい!しかもイケメン」といった具合で、興味を持った子がよく話しかけてくれるようになったのです。他に、メアリーにはイラストという特技もありましたから、休み時間に何かスケッチブックに描いていると、「見せて見せて!」と生徒たちがたくさん集まってきたのでした。
こうしてメアリーはクラスで一番の人気者になり、ベスもグレイスもA組やB組でそれぞれ、仲のいい友達グループと居心地のいい関係を築いていたかもしれません。ただ、グレイスはママのセシリアに毎日ベンツで学校まで送り迎えしてもらっていながら……なかなかおじさんに会えないことで欲求不満が募っていたかもしれません。
夏休み中に、家族でユトレイシアへ旅行したことで、家族仲のほうはある意味深まっていましたが、グレイスの中でおじさんが一番大切な人であることに変わりはありませんでしたから、おじさんと一緒に暮らしたいと願うグレイスの気持ちにはまったく変化はありませんでした。
小学三年生の時、アリスやエリザベスと同じクラスだった頃よりはもちろん緊張感もなく、グレイスは毎日明るく学校へ通うことも出来ていましたが――グレイスは何か物足りませんでした。グレイスにはそんなつもりはまったくなかったものの、こういう時にもしクラスでいじめにあっている子がいたら、自分も無視したりむしろ積極的にいじめに加担するかもしれない……とすら思ったものでした。
こうしてグレイスの学校生活は、表面上特にこれといって何事もなく過ぎていきましたが、クリスマスも近づいたある日のこと――突然家出することを思い立ち、ワズワース邸の自分の部屋にパパとママに宛てた手紙を書いて、二度とそこへは戻らないつもりでおじさんの家へ向かったのです。
>>パパとママへ。
きのう、たまたま偶然、パパとママが弁護士さんとわたしの「親権」がどうこうという話を聞いてしまいました。
これまで、半年以上もの間、パパとママと暮らしてきて、色々よくもしてもらったし、こんなによくしてもらっているのに何か文句を言ったりするのは親不孝というか、贅沢なことだとずっとそう思ってきました。
でももう、グレイスは本当に限界なんです。あたしはおじさんと前みたいに一緒に暮らしたい。パパとママとこのまま暮らし続けることは、あたしにとってはストレスにしかならないということ、どうかわかってください。
学校では友だちもいるし、そういう意味でのストレスはないかもしれないけど、学校へ通うということ自体がそもそもストレスだし、今のあたしにとって一番ストレスなく楽しく過ごせるのはジョンおじさんの家だけなんです。
だから、あたしのことはもう諦めてください。どうか、どうかお願いします。
勝手なことばかり言ってほんとうにごめんなさい。パパやママにユトレイシアへ連れていってもらったことは、一生忘れません。
グレイスより。
ワズワース夫妻から与えてもらったものは、ほとんど全部置いていくことにしました。そして学校の教科書やもともと持っていた身の回りのものだけをペパーミント色のリュックに詰めて、グレイスはそっとセシリアの目を盗んで屋敷の外へ出ました。
門を出る時に庭の樹木の冬囲いに来ていた庭師の人とすれ違いましたが、グレイスは特になんということもない顔をして、そのままゲートをくぐり、坂の上にある豪華なお屋敷から煉瓦の敷き詰められた道を下り、ジョンおじさんの家のほうへ向かいました。
この時、グレイスの心はその苗字のとおり、灰色一色でした。おじさんの家へ向かっても、きっとまた誰か家には人がいるでしょう。そして、誰もいなくなってからおじさんに話をするにしても、きっとまた「家に帰らにゃいけんよ、グレイス」とか、何かそんなふうに言われるだけに決まっていましたから。でも、もしそうなったとしたら、グレイスはもう最低でもワズワース家にだけは帰るつもりはありませんでした。また、そうした覚悟で家出をしたのです。
この日、まるでグレイスの心模様を表わしているかのように、空は今にも雨が降ってきそうな感じのする灰色でした。この時、グレイスはおじさんと暮らしはじめた二度目の冬、雪が降った時のことを思いだしながら、一歩一歩おじさんの家のほうへ向かっていました。
あの日、グレイスは実はこんな願いごとをしていたのです。(これからもずっとおじさんと一緒にいられますように!)と……。
それなのに、どうして今こんなややこしいことになっているのか、グレイスにはさっぱりわかりませんでした。神さまにも、天国のパパやママにも、毎日眠る前に(どうかもう一度おじさんと暮らせますように)とお願いし続けているのに――神さまはグレイスのお祈りを聞いているのかいないのか、そんなこともグレイスはおじさんに聞いてみようと思っていたくらいだったのです。
やがて、三十分もかかってようやくおじさんの家に到着してみると、この日、珍しくおじさんの家に来客はありませんでした。おじさんの家にやって来るのは、おじさんと同年輩の人や、息子や娘くらいの年代の人だけでなく、若い人まで時々混ざっているくらいでしたから、きっとこの日も誰か人がいるに違いないとグレイスは思っていたのですが。
「おじさん!あたし、もうワズワース家へは戻らないつもりで家出してきたの」
そう聞いて、おじさんは少しびっくりしたようでしたが、特に何も言わず、その日に焼いたパンを並べると、「好きなの食べなさい」と言ったあと、あたたかい紅茶を入れてくれました。
「今日は雪が降るとかいうとったから、外は寒かったじゃろう?」
「うん。でも、結構厚着してきたし、歩いてるうちにむしろ暑くなってきたくらいだったわ。ほら、これ、おじさんがあたしに初めて買ってくれた手袋よ。とってもあったかいの」
「そうか、そうか。グレイスは随分物持ちがええのう。きっとママだってグレイスにいい手袋を買ってくれておったろうにな」
おじさんはこの時、昔ずっとそうだったみたいに、グレイスの向かい側の席で本を読むとはなしに読んでいました。もちろん、これからグレイスから大切な話があるとわかっていましたから、おじさんはただ読書のポーズを取っていただけではあったのですが。
「なんだっけ?カシミアのなんか高い手袋。でもおじさん、あたしの性格わかってるでしょう?もちろん、ママの気持ちはわかるのよ。だけど、そんな高級な手袋押しつけられたって、あたしは困っちゃうだけなの。あたし、おじさんが前と同じようにここへ置いてくださったら、前にここにいた時以上にきっといい子にするわ。だから、家のお手伝いでもなんでもするから、この家に置いてください。よろしくお願いします」
グレイスがパンに手をつける前にそう言って頭を下げてきましたので、おじさんも弱りきりました。というのも、つい先日、セシリアがうちへやって来て、「今までの非礼をどうかお許しください」と謝罪した上――泣きながらこんなことを言っていたからなのです。
『そのうち、あの子はまたおじさんに「ここで暮らしたい」と言いに来ると思います。それもかなり本気の口調で……わたしにはそのことがわかるんですよ、グレイさん。あの子が今までわたしに心を開いてくれたのは、ユトレイシアのほうへ旅行に行った時くらいですわ。でも、今まで七年もあの子と離れていたことを思えば――あの子が中学生とか高校生とか、そのくらいになってからでもあたしに心を開いてくれたらって思うんです。どうか、お願いです、グレイさん。グレイスがここへ何度もやって来てそんなことを口にしたとしても、必ずうちにグレイスのことを帰してくれるって約束していただけませんか?じゃないとわたし、毎日不安でたまらないんです。あの子がまたわたしの前からいなくなってしまうんじゃないかと思ったら……気が気じゃないんです』
(困ったのう……)
おじさんは、心情的にセシリアとグレイスの板ばさみになりながら、本の文章と文章の空白に目を落として考えこみました。ですが、グレイスは今、べスやメアリーとは別のクラスになってしまったものの、友だちもいて、学校のほうもまあまあ楽しいということでしたから――突き放しても大丈夫ではないかと、そう判断してしまったのです。
「グレイス、わしはな……こんなことは言いたくないが、パン屋なんかやってしまったせいで、今ちょっと迷惑しとるんじゃ。みんなが「うまいうまい」いうて、ほんとうに美味しそうに食べてくれるとか、そういうことは確かにわしも嬉しかった。じゃがな、わしの作ったパン目当てに毎日誰か彼か客がやって来るもんで、正直毎日疲れておる。その上、ここにおまえが帰ってきたとしたら、わしはとても身が持たんだろう。じゃから、グレイス、おまえには申し訳ないとは思うが、このままワズワース家のほうにおれんもんかな?」
「……おじさん、あたしたちが夏休みにパン屋さんをやったことで、今すごく迷惑してるの?」
グレイスはショックを受けた顔をして、か細い声でそう聞きました。
「いや、そうは言うとらん。客のほうではな、この家から可愛い姪がいなくなったもんで、わしが寂しかろう思うて、なんかかんか持ってきては、それと交換するような感じでパンを食っていくようなもんじゃな。だからべつに迷惑しとるとか、そういうのとも少し違うんじゃが……もともとわしはそう社交的なほうでもなかったもんでな、たまに煩わしいと思ったりする程度じゃ。グレイスが気に病むほどのもんではない」
この時点でグレイスは、今回はかなり強引にお願いするつもりでいたのですが、そうした気持ちがすっかり萎えてしまいました。かといって、ワズワース家のほうにももう二度と帰りたくはないのです。
「ねえ、おじさん。あたしがもし死んだら悲しい?」
なんの脈絡もなくそんなことを言われたもので、おじさんとしてはすっかりびっくりしてしまいました。
「なんでだね?どうしてそんなことをわしに聞く?グレイスはもしわしが死んだら悲しいじゃろうが、それでもきっとなんとか乗り越えられるじゃろう。だが、わしはグレイスが死んだりしたら、とても立ち直れんじゃろうな。生きたまま白髪頭で黄泉に下るということになるじゃろうよ」
おじさんが少し慌てたような、怒った口調でそう言いましたので、グレイスも暫くの間黙りこみました。けれどもおじさんのほうで、「ほれ、パンでも食べなさい」と言うので、お盆の上にのったパンの中から、オレンジクリームパンを取ることにしました。
「あのね、おじさん……もうわたし、家のほうには帰らないつもりで今日は家を出てきたの。パパとママにもそういう置き手紙をしてきたし、おじさんがここへ置いてくれないなら、今日は野宿でもしようかなって本当にそう思ってるの。でも、外は寒いし、きっと死んでしまうかもしれないわ。でも、おじさんがここへ置いてくださりさえすれば……」
(あたし、死なないですむのよ)と言いかけて、グレイスは黙りこみました。どうしてかはわかりませんでしたが、おじさんが怒っているらしいことがはっきりわかったからです。
「グレイス!わしはな、ほんとうに死ぬ気もないのに、死ぬだのなんだの、そんなことを言う子は大嫌いじゃ。わかったら、そのパンだけ食べて、今日は家のほうに帰りなさい。それか、暫く外にいて、帰れるあたたかい家があるだけでもどんなにありがたいか、そのことがわかったら、今のパパやママのありがたみがわかるじゃろう。悪いがな、グレイス。わしは毎日やって来る余計な客のために、あれから毎朝早起きしてパンを作るせいで疲れておるんじゃ。そういうことだから、もうおまえの面倒まではとても見れん。そう思って、もういいかげん諦めなさい」
おじさんは、実際にはそれほど怒っていたというほどではありませんでした。けれども、これからもまたワズワース家でちょっとした嫌なことがあるたびに、「ここへ帰ってきたい」と言われたのでは堪らないと思い、少しきつめにそう言ったに過ぎませんでした。
このあと、おじさんはグレイスといるのがあんまりつらくて、「わしは今日、ほんとうは頭も痛いんじゃ」と言って、書斎のほうに引きこもるということにしました。けれどもこれでようやくグレイスにも「もうここへは帰って来れない」ということがわかっただろうという、おじさんとしてはそのような理解であったのです。
けれども、グレイスのほうではおじさんに叱られたことがとてもショックでした。これまで一緒にいる間、おじさんのほうで怒ったことというのはほとんどありませんでしたから……(おじさんはもうほんとうにここへ自分を置く気はないのだ)ということがはっきりわかり、がっかりと心が落ち込みました。おじさんはグレイスが死んだら「白髪頭で黄泉に下ることになる」と言いましたが、グレイスはこの時、「若いみそらで黄泉にくだる」といったような、そんな気持ちだったのです。
グレイスは、結局のところパンを半分も食べられず、残りの半分はそのまま、カバンの中に入れるということにして、おじさんの家を出ることにしました。リュックの中には教科書などが全部入っていて重かったので、今日の時点でいらないと思われるものは全部自分の家に置いていくということにして――最後に、「おじさん、ごめんなさい」と、冷蔵庫の前のミニ黒板にチョークで書いて、グレイスは寒空の下をとぼとぼ歩いていったのでした。
>>続く。
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