さて、今回取り上げる萩尾望都作品は『海のアリア』です♪
『メッシュ』の文庫版の第1巻の解説に、
>>私は、『メッシュ』を、萩尾の作品中で最高のものとは思わない。
【中略】
その後、彼女の作品は、透明感ある音楽性でさらに満たされ、ほぼ10年後の『海のアリア』の高みに結びつく。光彩と闇とが移りゆく世界の一隅で、萩尾望都は、その淵の岸辺に立っている。
とあって、実はわたし『海のアリア』に期待していたのですが……ええとですね、わたしの中の作品的順位としては『海のアリア』より『メッシュ』のほうが上に来るかなと思ったりします(^^;)
いえ、人の感じ方はそれぞれと思うので、そのあたりはどうでもよくて、文句つけたいとかいう話でもまったくなく(当たり前☆)。また、「期待していたのにそれほどでもなかった」ということでもなく、面白かったのです、もちろん。ただ、レビューなどを軽くさらっていて、「もう少し面白いんじゃないかな」と期待してた、というのはもしかしたらあるかもしれません。。。
では、まずはあらすじ。を文庫版からコピペ
>>8月の朝、嵐の海に消えた少年が半月後に見つかった。還ってきた少年アベルは記憶も地球人の常識も喪失していて、まるでエイリアン。そんなアベルに音楽教師アリアドが不思議な言葉を告げる。「君は私の楽器ベリンモンだ」。楽器扱いされたアベルは大反発。ところが宇宙生命体ベリンモンの作用でアベルの超能力が覚醒する……!!
(『海のアリア』第1巻より)
>>アベルと共鳴したアリアドは、ベリンモンの感応演奏者であることを証明した。だがプレイヤーのアリアドと楽器アベルの相性は、なんとなくミスマッチ。しかし本当の障壁はアリアドの心の中に潜んでいた。原始惑星ナイト・メア、その赤い海のほとりを歩くアリアドともうひとりの男……封印された扉の向こうから悲劇の記憶が立ち上がる。未来を夢みる惑星で、いったいなにが起きたのか?
(『海のアリア』第2巻より)
主人公の音羽アベルは、双子の弟のコリン(二卵性なので似てません☆)と友人の近衛乱、十里(じゅり)と8月の夏の日、ヨットを出します。ところが、沖で嵐に遭い、ヨットは転覆
コリンと乱くんと十里くんは助かりますが、アベルはそのまま流されて沖縄へ……逗子から流されて沖縄で助けられるなんてありえなさそうな話ですが、アベルは実際のところ、そこからイルカに乗って沖縄へ漂着し、海辺で歌を歌っていた若い女性歌手に助けられるのでした
ところが、アベルはどこか全生活史健忘のような様子を見せており、こののち、コリンや乱や十里と再会するものの――彼らのことがわからないのみならず、前までは弾けなかったはずのピアノを弾いていたりと、元のアベルとは別人のように見えます。
それでもコリンは、「間違いなくアベル兄さんだ……!」と確信しており、こうしてアベルは鎌倉の家のほうへ帰ってくるのでした。
実は、事はこういうことだったのです。ヨットが事故に遭った日、アベルもコリンも乱も十里も、いわゆるセントエルモの火のような、不思議な火の玉を見ていました。これが実はべリンモンと呼ばれる別の惑星に生じる<楽器>で、海で一度死んだアベルはこの火の玉に包まれ――落雷によって割れ、中身が漂いでていたべリンモンのいってみれば容れ物としての役割を果たすことになったのでした。
このあたり、設定がちょっと突飛に感じられるかもしれないのですが、萩尾先生の漫画は「このくらい当たり前☆」くらいな感じで、面白いくらいスラスラ読めてしまうんですよね(笑)
こののち、アリアド・ディデキャンドという音楽教師がアベルたちの学校へ赴任してきますが、彼は>>「きみは音羽アベルじゃないよ。音羽アベルのふりをしてるだけだ。おまえはわたしのべリンモンだよ」と、謎めいたことを言います。
このアリアド、ベリンモンが生じる惑星ベリンから、自分と共鳴したべリンモンを持ち帰るのですが、こっそり地球に着陸したところ――そこで落雷によってせっかく自分と共鳴したべリンモンを失ってしまいます。アリアドはプレーヤーであり、このべリンモンと共鳴できるプレーヤーというのは、宇宙でもまだ9人しかいないと言います。そして、アリアドは自分が10人目となるのだ……と確信していたわけですが、落雷によってベリンモンを失ってしまうという。
もちろん、こんな説明をされて「だからおまえはわたしの楽器なのだよ」と言われても、「楽器」といえば普通は<物>ですから、当然アベルもすぐには納得できません。
こののち、ベリン星からこっそりべリンモンを持ち帰ろうとしたアリアドは、銀河共同体12区担当の保安部調査員に、べリンモン=音羽アベルであるということを証明しなくてはならなくなりますが、最終的に確かに共鳴が確認されたとはいえ……ふたりの演奏はなかなかうまくいきません。
また、それが何故かというと、アリアドの記憶の中に閉ざされたドアがあるそのせいだということにアベルは気づきますが、アリアドはその閉ざされた記憶に関することについて覚えがないと言います
そこへ、アリアドとアベルの演奏を聴きにきたという別のエイリアンが現れ……その女性リリドは、アリアドを憎み、嫌っている様子で――その事情は次のようなものでした。彼女の兄ダリダンは、アリアドと一緒にナイト・メアという名の原始惑星へ行き、死んで帰らぬ人となり、アリアドひとりが帰ってきたからなのです。
しかも、アリアドはナイト・メアへ行く直前に熱性インフルエンザとなり、ナイト・メアへは行っていないということになっているのみならず、彼はその後病院のほうへ二年入院し、この頃の記憶がないようなのでした
この時、本当は一体何があったのか……というのが、たぶん物語の一番の核心部分でないかと思います。ダリダンの妹リリドは、アリアドが兄ダリダンを殺したのだと強く疑っていますが、実は真相はこういうことでした。原始惑星ナイト・メアへ、この惑星が誕生して四十数億年にもなるのに、何故古生代より進化することがないのか、ふたりは調査団の要請を受け、その解明の協力にやって来ます。
その結果、赤いジョングと呼ばれるヒトデのような集団にダリダンは海辺で食い尽くされてしまうのでした。アリアドのほうは体のほうを半分くらい食べられたところで救助されたのですが、この時の恐怖体験からトラウマを負ったアリアドは、治療によってこの時の記憶をすべて封印するしかなく……それには二年もの時を要したという、そうしたことだったのです
そしてこの時、アリアドはダリダンとある約束をしていました。というより、アリアドのほうではそのような約束などしたくなかったのですが、一方的にダリダンのほうから約束させられた、と言いますか(^^;)。
それは、どちらかが先に死んだとしたら、「レクイエムを歌ってくれないか」というもので――記憶を取り戻したアリアドは、アベルと共鳴し、楽器であるアベルは美しいレクイエムを歌います。
リリドはこの時のアリアドとアベルの<演奏>によって、兄ダリダンを喪った心が癒され……アリアドもまた、まだ完全にということではなくても――この時の<演奏>によって、トラウマがかなりのところまで癒されたのではないかと思われるわけです。
大体のところ内容書くだけでも、相当長くなってしまいました(これでも結構端折ってあるのに^^;)。なので、例によってわたしの妄想を絡めた感想については、また次回に回したいと思いますm(_ _)m
それではまた~!!