さて、今回は本文短めなので、割と好きなことが書けます♪
なので、何書こうかなって思ったんですけど……今回はわたしがいかにSFについて知らないか、詳しくないかについて、先に書いておこうかな~なんて(笑)。
いえ、自分的に「このあたりのことって他の作品ではどんなふうに表現されてるんだろうなあ」とか、色々疑問に感じたことについて書かれてそうな作品を読みたいと思ってたのですが、なんか結局ほとんど読めないまま書き終わってしまった……というのがありまして
で、そうした回がまわってきたら、また言い訳事項として書こうとは思うのですが、特にわたしが「わっかんないなあ~」と思ったのが実は、宇宙船のワープ走法のことと、コールドスリープ装置のことだったり。。。
それで、そのあたりの設定について書かれてそうな小説っていうのがあって、とりあえずそういうのから順に当たっていって、5~6冊でいいので読んで、比較してみたいと思ってたわけですでも、ある一冊の壮大なSFに引っかかってしまったことで、そのあたりの予定がすっかり狂ってしまったというか、なんというか……まあ、今からでも取り寄せて読めばいいんですけどね(笑)。でも、とりあえず一通り書き上がったので、このまま誤魔化し倒すというのでもまあいいか――なんて、軽く開き直ってしまったわけです。だって、結局のところSFについてなんて全然詳しくないわけだし、なんて思い(^^;)
でもまあ、ネットで少しググってみると、Aという作品ではこのように描かれている、Bという作品ではこのように……みたいのが出てきたりもして、自分的に思ったのが――わたし、まず第一に『宇宙戦艦ヤマト』をよく知らないんですよwwもちろん、超有名作品で、小さい時にちらっと見たことあったような記憶くらいはぼんやりあったりします。それで、その時にわたしが一番気になったのが、「なんかこの顔色悪い人と、雪ちゃんっていうべっぴんさんの関係が気になる」ということで、主人公の古代進くんのことなんかはっきり言ってどーでもいいんだけど、あとからその顔色悪い人がデスラー総統という名前らしいと知り、この宇宙人のおっさんのことだけは是非とも細かい設定知りたいと思ったわけです。でもその後、結局見てないというか前に『宇宙戦艦ヤマト2199』っていうアニメも、2回くらい見た記憶あるものの、途中からだったので、前後の意味がさっぱりわからず……
でも、イスカンダルまで14万8千光年あるっていうのをウィキのワープのところで読んで、「ああ、そっかー。このあたりから順に詳しくなりたいなあ~」なんて、あらためて思った次第であります(おっそ!笑)。
そんで、次に映画なのですが――そもそもわたし、『スターウォーズ』とかちゃんと見たことないんですよ(終わってるだろ!殴☆)……でも、金ローとかでやってたのをちらっと見たことあったり、シリーズの中の1作くらいはちゃんと見たよーな記憶がぼんやりあります。あと新シリーズだったか新章だったか、そういうのが映画でやって来るたび、テレビで今までのシリーズとどういう繋がりがあるかとか、そういう説明があったりするじゃないですか。これだけたくさんの方が「面白い、おもしろい!」言ってるわけだから、ちゃんと見たら面白いのだろう……みたいに思い、とりあえず一通り見てみたい気持ちはずっとあったりするわけです(でも、「私がパパなんだよん♪」とか、有名すぎてすでに知ってるとかいうのは、なんとなく悲しい)。
で、有名どころで言うと、『猿の惑星』とかも見たことないんですよね、わたしティム・バートン監督のリメイク版を、これまた金ローか何かでやってて、たまたま20~30分くらい見た記憶はぼんやりあるものの……最後が衝撃的という、その最後が知りたいな~と思いながら、こちらもその後見てないという。。。
そんな中、唯一「SFについておベンキョしましょ」と思って見た中で結構衝撃だったのが、『ロボ・コップ』でした(爆☆)。これこそまさに、「お、おまっ、おまえ今頃……」って話じゃないですか?まだ1しか見てないんですけど、すっっごく面白かったです。
あとわたし、『スター・トレック』もまったく通ってきてないんですよね。でもスタトレについてはSF云々関係なく、何故か昔から詳しくなりたいと思ってて……でも、いまだに1作品も見てはいないという
――というのがまあ、わたしのSFまったく詳しくないよ列伝(?)といったところやもしれませぬ。なので、「嗚呼、そっか。だから設定ザルなんだな……」くらいにご理解いただけると嬉しく存じます(←殴☆)。
それではまた~!!
惑星パルミラ。-【3】-
ゾシマ長老の葬儀は、首都メセシュナの王侯貴族たちまでもが参列する、実に荘重なものであった。アストラシェス僧院が、平和な世とメセシュナの女王の繁栄のために祈祷しているのは有名な話であるが、この年は麓の小さな村々でも、当のアストラシェス僧院でも――珍しく、近接した期間に二度も王侯貴族を迎えねばならぬということで、対応のほうに忙しく追われることとなった。もっとも、貧しい村のほうに金銭的負担のほうはほとんどかからない。いや、かからぬどころか、首都の豊かさのお零れに与れるくらいであったろう。だが、田舎者が都会の洗練された王侯貴族を迎えねばならぬということで、粗相があってはならないという独特の緊張感に麓の村々は覆われたわけである。
もっとも、惑星メトシェラの首都メセシュナの、洗練された洒落者でさえ、上位惑星系の者にはど田舎者であったろうが、それはさておき、メセシュナの女王、メディナ=メディアラ・アストラナーダは、長く惑星メトシェラとそこを治める女王一族の繁栄を祈ってくれただろうアストラシェス僧院の大僧院長に敬意をこめ、多くの貴族たちを引き連れ、ゾシマ長老の葬儀へ参列していた。
その結果についていえば、彼らは自分たちの宗教心を大いに満足させ、首都メセシュナのほうへ引き上げてきていたといえる。ゾシマ長老の棺を囲んでの、聖歌隊の歌う悲歌に、悲しい歌唱のうちに眠るある種の官能性に打ち震え、ゾシマ長老の魂を喜ばせるため、天井から大きな香炉が右から左へ揺れるのを見ては(おお、神よ!アスラ神よ。あなたに忠実なる者が今天へと召されました。どうか何とぞ、あなたに忠実であったこの者の魂を今受け給え)と、普段さほどでもない信仰心をかきたてられ――自分たちもまたなんと神に忠実な者であることだろう、どうか神よ、我らの魂をもどうか顧み給えと、宗教的気分に一時的にどっぷり浸ってから、彼らは再び首都の享楽的な日々へ舞い戻ってきたわけである。
そして、この二か月後の年の暮れにも、年に一度の恒例行事として、女王陛下一行はアストラシェス僧院へやって来る予定であった。すなわち、年の暮れから年頭にかけての時期は、惑星メトシェラにおいて<大斎戒期>と呼ばれ、年末までは身を慎んで過ごし、年が明けたその瞬間から、今度はその年最初の朝陽とともに――神への信仰の誓いを新たにし、いつもより豪華な食事を整え、家族や近隣の住民とともに新しい年の訪れを喜び祝うのであった。
だがこの年のみ、珍しくメディナ=メディアラ・アストラナーダは大斎戒期をアストラシェス僧院で過ごさなかった。女王とそのお付きの従者たちは、基本的に女人禁制であるアストラシェス僧院において、唯一の例外として出入りを許されている。そしてこれは、アスラ=レイソルの妹であるアストラナーダ=レイソルが首都メセシュナで女王制を敷いてから、今に至るまでその血縁の者が女王の座に着いてきたこととも関係のあることだった。簡単にいえば、アストラナーグ王朝の特に初期において、『神の威を借る』ではないが、兄の神としての権威を持って双子の妹がその手足として政治の任に当たったことから――このふたりの間ではそのような密接なやり取りがあり、アスラ=レイソルがアストラ要塞を僧院として以後も、唯一妹だけは女人禁制のこの場所へ訪れることが許されていたと言われる。こうした関係もあって、歴代の女王たちはその後も伝統として、あるいは真の信仰深さによって、年に一度、大斎戒期はアストラシェス僧院で身を慎んで過ごす……ということが慣例になっていたわけである。
だがこの年、第52代目に当たる女王アストラナーダはやって来なかった。時折、本当の病気によって気分が優れない、あるいは仮病により、女王の身分に準じた王族がアストラシェス僧院で女王の代理の任に当たるということは歴史的に何度となくあったことではある。ゆえに、この年について言えば、ゾシマ長老の葬儀が二か月前にあったことで……麓の村の人々に二度も負担をかけたくないということがあったのかもしれないし、あるいは病気の穢れによって訪問できないというのが、単に表面的でない本当の事実なのかもしれなかった。なんにせよ、メディナ=メディアラはその年、大斎戒期にアストラシェス僧院へやって来なかった。だがそのことがよもや――自分の人生を180度まったく変える原因になろうとは、ゾシマ長老とは違い、ゼンディラにはまったく予測のつかないことだったに違いない。
* * * * * * *
メディナ=メディアラ・アストラナーダの代理としてアストラシェス僧院へやって来たのは、女王の妹アディア=アスティアと結婚した、女王にとっても従兄弟に当たる廷臣、ダリオスティン=アースティルナーダ・メセスシュトゥックであった。彼はまだ二十六歳と若かったが、小さな頃から厳しい父親の方針によって帝王学を学び、惑星メトシェラで主に使われる三言語、シェフェラー語、メティオン語、ルスティラ語にもよく通じ、それに準ずると言われる二言語、サンディール語やマスシュカ語をも巧みに話すことが出来た。その他、文学・数学・歴史・哲学・物理学と……王族として学ばねばならぬことについておよそ学び尽くし、教師らも彼が成人する遥か以前に――「もはや我々に何か教えられることは残っていません」と言って、それぞれその役を辞したと言われるほどの人物であった。
だがこのダリオスティン、生まれついて鋭い頭脳を持っていたことは周囲の証言から疑いないが、その人格には少々……あるいは少々どころでなく問題があったらしい。この年(メトシェラ統一歴において言えば、1129年)、彼はゾシマ長老の葬儀において、生まれて初めて信仰心、ないしは宗教心なるものに目覚めていたわけである。最初は「カビの生えた僧院のジジイが死んだからって、なんであんなど田舎くんだりまでオレがわざわざ出かけなきゃならないんだ」と、ぶつくさ文句を言っていたダリオスであったが――この僧院において自分好みの美青年の姿を見た瞬間から、この退屈極まる灰色の葬儀が、俄かに官能性に彩られた喜びに変わりはじめたわけである。
ゾシマ長老の棺を囲み、コリエス長老の指揮の元、ゼンディラが死者の魂を送るための悲歌を歌っていたのは、選ばれた五十人の僧の中でも目立たぬ立ち位置のことであったが、ダリオスはそもそも、自分が王族でなかったら絵描きか彫刻家になっていたであろうとよく口にするくらい――<美>というものについて、それがどこに隠されていようとも、鋭く発見してしまう鑑識眼を持っていたのである。
アストラシェス僧院の僧たちというのは、高齢になると自然頭髪が薄くなったことにより、すっかり剃髪してしまうということを除き―ーアスラ=レイソルの肖像に習うように、髪のほうは長く伸ばしているのが普通である。また、第三僧院ティスティアナ以上の僧たちはその全員が去勢手術を受けており、ゼンディラなどはヒゲも生えていないのみならず、顔つきのほうもどこか女性的だったのである。事実、ダリオスは他の若い僧たちにはなんの興味も覚えなかったにも関わらず、むさ苦しい僧たちの間にひとりだけ、女性が混ざっているとすら錯覚し……暫くゼンディラの姿から目を離すことが出来ないほどだった。
アディア=アスティアとは、女王のメディナ=メディアラ同様、小さな頃から互いによく見知っている仲であり、ゆえに彼らの間には燃え上がるような恋愛もなく結婚したと言ってよかった。だが、ゼンディラの姿を見た瞬間――その、美しく結った銀の髪、エメラルドのような深い緑色の瞳に、ダリオスはすっかり魅せられてしまった。こうして彼はゾシマ長老の葬儀以降、恋わずらいに悩むようになり、首都にあるアスラ寺院へしょっちゅう出入りして祈る姿をとうとう貴族の親友、キリオスティン=モンシェーラス・リオストローマに見られてしまい、事の次第を問いただされたわけであった。
「ええ~っ!?アストラシェス僧院の坊さんがおまえの恋わずらいの相手だってえ?はははっ。そりゃおまえ、諦めるしかないぜ。どっかの田舎の分院であればいざ知らず、本院の僧たちはその全員が――あ、でもそっか。割礼つーか、去勢するのは第三僧院より上の坊さんだけだっけか。けどまあ、ほとんどの僧が去勢してるわけだから、どんなぺっぴんの男でも、恋人になんか出来るわけねえじゃん」
「それを言うな。だからこそこんなにも悩んでるんじゃないか」
「へえ……」
キリオスとダリオスは、現女王のメディナ=メディアラやダリオスの妻となった女王の妹、アディア=アスティア、またその他多くの貴族の子弟が通う学院でともに学んだという仲であった。その頃からすでにメディナが将来女王の地位に就くということ、またアディアが世継ぎを生むのだろう……といった意識は、貴族の子供たちの頭にも当然ぼんやりあったに違いない。だが、小等院時代はそれほど強烈に互いの身分の差を感じるでもなく育ち、その後、中等院からはメディナとアディアは女学院のほうへ進み、ダリオスとキリオスは男子学院のほうへ進学し――さらに、ダリオスとキリオスは大学でもいつでも一緒につるむという仲だったから、ダリオスは王族、キリオスは上級貴族の息子……という身分差について、彼らは今もほとんど感じていないのだった。
「けど、アディアは今妊娠中だろ?そんな時に僧院の美形の僧と浮気などとは、おれは感心せんね」
「そう痛いところばかり突くなよ。ほら、アディアは姉と違って、元は超がつくほどお堅かった。ところがな、本星の使者が世継ぎのためにと言って、子作りのためにある薬をくれたんだ。肌の感度が高くなるという塗り薬と、あいつらはお上品な口調でそんな言い方はしなかったが、ようするに催淫剤の一種とオレは思ってるんだがな。必ず女性が絶頂に達することが出来るという薬をセックスの前に飲むわけだ。以来、プライドの高さからか極めて遠まわしな言い方ではあるが、向こうのほうがすっかり夜の営みについて積極的になった。いまや、妊娠中で出来なくてつらいのはオレのほうというより、アディアのほうかもなって思うくらいさ。だからまあ……オレがもし僧院の僧と浮気したにしても、きっとあいつは許してくれる。ところがだな、他の女と浮気して、自分にしたのと同じことを他の女にもしたと知ったら――アディアの奴はオレの首を絞めて殺してやろうかというくらい、憎しみに燃え立つかもしれん」
「ほほう。本星からの使者とな。あいつらもまったく、得体の知れん奴らではあるが、まさかそんなものまでくださるとは。じゃあおまえ、アレだろ?まだ公式発表にはなってないが、メディナは今年、アストラシェス僧院では過ごさない。で、妊娠中のアディアのことも置いて、おまえが代理としてそちらでお過ごしなさるということは……」
「それはな、何もオレが色々根回したってわけじゃない。単なる偶然さ。メディナが年末もまたアストラシェス僧院で過ごすなんて退屈だ――なんて、ポツリと洩らしてたもんで、『そんならオレ、代わりに行ってやってもいいけど?』って、さりげなく申し出ることにしたんだ。もちろん賢いメディナはわかってるさ。オレには女王陛下以上に信仰心なんぞこれっぱかりもないってことはな。けど、なんでか珍しく、そこらへんについては根掘り葉掘りしつこく聞いたりはしなかった。なんにしても、オレに面倒な役目を押しつけることが出来てラッキーくらいな感じだったんだろう。オレは、礼を失しない程度の従者たちを連れて来月、アストラシェス僧院へ行こうと思う」
十一月のこの日、首都メセシュナの気温はすでに零度であった。彼らはそれぞれ厚いコートを着込んではいたが、それでも火の気のまったくないアスラ寺院の片隅にいたのでは――そろそろ体が冷えてこようというものだった。寺院の中央にはアスラ=レイソルが天女たちを率いるようにして天へ昇っていく壁画があり、左右にはそれぞれアスラ=レイソルの軍隊で大きな役割を果たした将軍たちの彫刻が全部で十二体並んでいる。その間にアスラ神に供え物を供える祭壇と、民衆が祈るための床の間が設けられている。アスラ=レイソルに誓願を立てたり、あるいは単に願いごとを叶えていただきたいといった場合には……必ずしも供え物自体は必要でないが、とにかく一度靴を脱ぎ、一段上になっている床の間に膝を折って座り、両手を上げて五回頭を下げ、最後に茣蓙に頭をすりつけるようにして、自分の祈りを唱える。この時、なかなか頭を上げない者ほど長く真摯に祈っているという、そうしたことになるだろう。
ダリオスがアスラ寺院へやって来たのは、壁画に描かれた美しい天女のひとりにゼンディラが似ているためであったが、一応形式的にであったにせよ、ふたりはコートのポケットに入っていた表にアスラ=レイソル、裏に天女の像が刻まれた金貨や銀貨を供え、頭を五回下げてから靴を履き、寺院の外へ出たわけであった。
「まさかとは思うけどおまえ……もうすっかり向こうの寺院の生臭坊主と話がついてるってわけじゃないんだろ?」
大理石で出来た壮麗な寺院をでると、ふたりは貴族がよく行く茶屋のほうへ向かった。メセシュナから遥か南に下ったシェライリー高原で産する有名な茶葉、シェイラ茶と、青や紫の砂糖衣のかかった美味なゼリー菓子を食べながら、この話の続きをしようというわけである。
「そうか。よく考えると、その手があったか……」
この時、街の大通りを歩いていきながら、キリオスは自分が余計な知恵を授けてしまったと思ったのだろうか、露骨に顔をしかめていた。
「その手があったかって、どういう意味だよ?ダリオス、おまえわかってる?おまえがこれからアストラシェス僧院へ行こうってのは、一年の中でも一番身を慎んで過ごさにゃならん大斎戒期だぞ。しかも女王陛下の代理でアスラ神に祈りに来ました……なんてえのに、『ここにすんごい美形の僧がひとりいますよね?ちょっと夜、彼と一緒に過ごしたいなあ。あっはっはー』ってか?おれだっておまえに負けず劣らず宗教心なんてないが、そんなおれでも流石に年末年始くらいは多少なり信仰深いような振りをして過ごすくらいだからな」
「わかってる、わかってるとも!ただオレは、彼のことをもっと身近で見てみたいというそれだけなんだ。それに、彼のことならきっとメディナやアディアも気に入ると思う。あとは、メディナが目をかけてる画家やら詩人やら音楽家だのいう、雲か霞を食ってるような取り巻き連中がいるだろう?きっと、彼ならそういう連中の目にもとまってちやほやされるに違いないし、事によったらメディナ自身が自分の愛人のひとりにしたいとさえ望むくらいかもしれない」
「愛人ったって……まあ、ここからアストラシェス僧院まで約三百六十キロほどの道のりか?そのくらい離れていて、王宮で隠れて暮らしてりゃ、僧って身分はもしかしたら誤魔化せるかもしれない。だがなあ、女王陛下がいくら気に入ったとしても、アレがなけりゃ閨房へ呼んでも仕方ないだろうが!」
「いや、そうじゃない。キリオス、おまえはまったくわかってない……彼はな、ただそこにいるだけでいいのさ。そして、ただその場に存在しているというそれだけで、彫刻家どもは彼の姿を神話の英雄のごとく彫刻したいと望み、詩人どもはその美しさを歌いあげ、音楽家どもは彼に献呈するための曲を作曲する……彼はまさしく、そのようなミューズの如き存在なんだ」
キリオスは、すっかり恋する者の眼差しをしているダリオスのことを見て、(やれやれ)と溜息を着いた。茶屋のほうは完全な個室仕様となっているため、それでよく貴族たちが利用するわけだが――それでも会話の声自体を完全に遮ることが出来るわけではない。
そこでふたりは、折れ戸の付いた狭い個室に入ったあとも、小声で会話を続けた。それぞれ、シェイラ茶の他に焼き菓子や砂糖菓子などを頼む。この砂糖菓子をシェイラ茶の中に沈め、甘味を味わいつつ、最後に茶の水分で味の変質したゼリーを飲みこむ……というのが、惑星メトシェラのどこでも見られるお茶の飲み方だったろう。
「じゃあ、あれか?おまえ……まさかとは思うが、首都にその美形の坊さんを連れてくる算段をつけるつもりなのか?」
「いや、わからない。そう出来るのが一番いいとは思うが、何より本人の意向もあるだろ?けどまあ、そこのところをこう、うまく……彼よりも位階が上の僧にでも、こう言ってもらえたらと思うんだ。『首都へ行き、僧として見聞を広げてきなさい』とかなんとか。そしたら、きっとあとのことはどうとでもなる」
「どうとでもねえ……」
ふたりはそのあとも、茶を飲み、お菓子を食べながら――お互いの近況報告をしあった。キリオスはそれこそ、その名のとおり<独身貴族>と呼ばれる者だったので、「街の娼館で遊んでばかりいないで、そろそろ身を落ちつけちゃどうだ」と、いつも通りダリオスにからかわれ、キリオスはキリオスで「既婚者のくせして、チンなし僧侶にうつつを抜かす奴が何を言うか」とやり返したわけだった。
だが結局のところ、キリオスのリヨストローマ家は、毎年結構な額をアスラ寺院に寄進していることから……彼はそのあたりからアストラシェス僧院へ「当たりをつけられそうな人物」を親友のために探しだしたのである。僧院の中でも、女性のような美しい容貌で人目につく僧侶といえば、数としてそう多くはないだろう。ましてや、王族の中でも、父親の後を継ぎ、次代の宰相になろうかという人物が「信仰のことで悩んでいる。そのことを特にその者に相談してみたいそうだ」ということになれば――驚くほどあっさりと、ダリオスの願いは親友キリオス経由により聞き届けられることになったのだ。
そして、ダリオスはといえば、このことでどれほど親友に感謝したことだろうか。彼はキリオスに深謝すると同時、「彼と話せた暁には、必ず説得して首都へ連れ帰ってみせる。そしたらおまえにもオレが何故こんなに固執しているかの理由がきっとわかるだろう」と、興奮して語っていたのだが……実は年明け早々に、キリオスは自分が父親の権威を借りて色々根回ししたことを、心から後悔することになるのであった。
>>続く。