ハコヅメ 交番女子の逆襲
泰三子
講談社アフタヌーンコミックス
警官を主人公とした漫画といえば何といっても「こち亀」であり、だいぶ後ろに「逮捕しちゃうぞ」、番外として「がきデカ」あたりが僕が思い出すところだ。しかしいずれもかなり常軌を逸した「警官もの」だった。また、刑事ものだと「親子刑事」に「ドーベルマン刑事」に「俺の空」にといろいろあるが、刑事ものと警察ものはやっぱり性格を異にすると言ってよいだろう。
この「ハコヅメ」は過去の警察ものとはかなり違う。言わば「警察の日常」。リアルな警察の日常というのは、取材程度では描きようがなく、本作の作者が「元・婦人警官」だったという特異なキャリアこそが可能な作品ということである。
興味深いのは、その作者の画風というのが 楳図かずおみたいなとでも言ったらいいのか、なんかギョロっとした目、不自然に傾く姿勢、どこ見ているのかわからない視線、妙な頭身スケール、不思議な曲がり方をする手足など、一見ホラー的というか、シュールレアリズムみたいな不安感を誘う画風であり、それなのにその内容がシリアスとギャグとヒューマニティが微妙にブレンドされていたものでヘンに中毒性がある。なんでこういう画風になったのかとても興味があるが、この絵が本作をさらに独特なものに仕立て上げているようにも思う。一見テレビドラマの原作などにしやすそうだけれど、この絵が持つ不思議さが放つオーラはけっこう馬鹿にできないぞ。